初めて子犬を迎えてみて、いかがですか?可愛い子犬と楽しい毎日を過ごせる一方、意外と大変なことが多いと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。いつまでもトイレを失敗したり、夜泣きがひどかったり、大切な家具をかじられたり・・・。

「ちゃんとしつけをしなくちゃ!」という気持ちから、一生懸命にしつけをしている方もしれません。でもそのしつけ方法、本当に正しいのでしょうか?もしかしたら裏目に出ているかもしれません。

そもそもしつけは必要?

もしかしたら、「うちの子は小さく他人に迷惑をかけることはない」とか、「本能のままに自由にさせてあげたいから」などという理由から、しつけは必要ないと考える飼い主さんもいるかもしれません。しかし、犬が人間社会の中で暮らしていくためには、最低限のルール・マナーを守ることが必要です。ところかまわず排泄をしたり、誰に対しても攻撃を仕掛けたりするようでは、周囲の人に迷惑をかけてしまいます。犬自身の身を守るためにも、犬が飼い主さんとより良い関係性を構築する上でも、最低限のしつけは必要です。

犬にとって必要なしつけとは

やってはいけないしつけ方

少し前まで、犬を叩いたり、リードを強く引っ張ったりするような、“力ずくで服従させる”しつけ方法がよく見られました。しかし最近では、犬の行動特性を考慮した、犬にとってストレスの少ない、「褒めてしつける」トレーニングがだいぶ社会的に浸透してきたように思います。

とはいえ、「飼い主は犬の上に立たなくてはならない」という考え方はまだまだ根強く残っており、その間違った考え方から不適切なしつけをしている人は多いのです。犬のマズル(口吻)を掴んで叱ったり、嫌がる子犬を無理やり仰向けにして押さえつけながら服従姿勢を取らせる、といったしつけの方法はその代表例。

飼い主と犬の関係は「序列」関係ではない

これらのしつけ方法は、犬の先祖であるとされていた(※諸説あり)オオカミの行動特性をもとに考えられたものです。群れで行動するオオカミは序列を重視しており、その絶対的な序列を守るためにオオカミが取っている行動をベースにしたのが、子犬を服従させるしつけ方です。

しかし、人間とオオカミは違います。オオカミと同じタイミングで、同じ力加減で、こうした行動を人間がすることは不可能ですし、なにより飼い主さんと犬の関係は、群れの中のオオカミの関係とは全くの別物。

無理にこのようなしつけ方法を繰り返すことで、犬が飼い主さんのことを異常に怖がるようになり、飼い主さんが少し手を動かしただけで怯えるようになってしまうことも少なくないのです。

インターネットの情報はきちんと見極めて

最近はインターネットからしつけに関する情報を簡単に入手することができるようになりました。しっかりしたトレーニングの情報もあれば、特にトレーニング知識のない飼い主さんが、我流のしつけ方を紹介しているものもあります。

中には犬に怪我をさせてしまうようなトレーニング法や、問題行動を誘発するようなトレーニング法もあり、飼い主さんはきちんとした情報を見極める必要があります。ただし、誤った情報かどうかを見極めることは難しいので、ドッグトレーナーなどの専門家にサポートしてもらった方が安心です。

コロコロしつけ方を変えると混乱させる要因に

犬のしつけには様々な方法があります。ただし、犬は言葉で伝えることができないので、トレーニング方法をコロコロ変えるのはやめましょう。

次から次へといろいろな方法を試してみることで、犬が完全に混乱してしまうようなケースもよく見られます。例えば、甘噛みされても今までは普通に遊んでいた飼い主さんが、どこかで「甘噛みを許してはダメ」という情報を得てから、急に怒ってマズルを掴んだり、握りこぶしを口に突っ込んだりするようになると、問題行動を誘発しやすくなります。

また、家族で対応がバラバラなのことも犬の混乱を招くので、必ず統一するように、あらかじめきちんと相談しておきましょう。

甘やかすだけの環境もNG

過度に厳しく接する飼い主さんがいる一方で、ただ甘やかすだけの飼い主さんが増えているのも事実です。

動物は学習する生き物。常に要求に応えてもらえる、と覚えてしまうと、自分が気に入らない時に威嚇したり、吠え続けたり、あるいは不適切な場所で排泄するようになることもあります。

”ほめてしつける”方法は基本ですが、飼い主さんは「いけないこと」をしっかり教えることも大切です。決して体罰を与えたり、怖がらせたりする必要はありませんが、ダメなことはダメだと伝えなくてはいけません。

もう少し詳しく知りたい方は、『怖いボスと頼れるリーダーの違い』を参考にしてみてください。

子犬期はとにかく重要な時期

犬に「社会化期」というものがあることはご存知ですか?他の犬や人間、周囲の環境などに対して、うまく対応していく力を習得しやすい時期のことを「社会化期」と言います。もちろん個体差はありますが、だいたい3~12週齢くらいが犬の社会化期と考えられています。

犬同士のコニュニケーションを学ぶ期間

社会化期の前半(8~9週齢くらいまで)を母犬や兄弟と一緒に過ごすことで、犬特有のコミュニケーション方法を学ぶことができるとされています。そのため、8週齢になる前に親兄弟から離してしまうことで、犬同士のコミュニケーションを学ぶ機会が奪われてしまい、成長してからも犬特有のボディランゲージが読み取れず、犬同士のコミュニケーションが上手に取れなくなってしまうのです。

新しい環境を受け入れる時期

そして社会化期の後半(8~9週齢以降)は、人間社会で暮らしていくための準備をする期間になります。この時期の子犬は好奇心が旺盛で、新しい環境や初めて触れる物などに対して、比較的柔軟に受け入れることができます。そのため色々な人間や物、そして環境(人混み、動物病院、トリミングサロンなど)などに積極的に触れるようにしておきましょう。

ワクチン接種が終わっていない時期なので、お散歩には出られませんが、飼い主さんが抱っこした状態で近所を歩き、自動車やバイク、自転車などに馴れさせたり、知らない人に声をかけてもらったり、おやつを与えてもらうだけでも十分効果はあります。

ただし、生まれつき怖がりな気質を持つ子の場合は、刺激が強すぎると、強烈な恐怖体験となって、それがトラウマになる危険がありますので、反応を見ながら小さな刺激から始めてみるといいでしょう。

 パピーパーティーは積極的に参加して

子犬の時期に他の犬と過ごしながら、犬特有のコミュニケーション方法を学ぶことはとても重要です。特に、8週齢になる前に親兄弟から離されてしまったことが疑われる場合は、子犬同士で集まってコミュニケーション方法を学ぶパピーパーティーに積極的に参加して、他の犬に触れる機会を作ってあげましょう。

これによって、犬同士で起こる攻撃行動などの問題行動を予防することができるかもしれません。それだけではなく、飼い主さんにとっても、一般的なしつけ方法や健康管理方法などの情報に加えて、問題行動に関する予備知識を得られることが多いため、愛犬の問題行動の早期発見が可能になるといったメリットもあります。

パピーパーティーについて詳しく知りたい方は、『他の子犬たちに出会えるパピーパーティーとは』の記事も参考にしてみてください。

毎日のトレーニングが問題行動の予防に!

飼い始めだけの熱心なトレーニングは要注意

ほとんどの飼い主さんは、飼い始めた当初はしつけや芸を覚えさせることに熱心であっても、犬の成長とともに熱が冷めて、ただ漠然と世話をしたり、かわいがったりするようになりがちです。飼い主さんの関心が薄らぐにつれ、犬はかまってもらえない寂しさや、飼い主さんに対する過度の依存心などが原因となって、さまざまな問題行動を発現することがあります。こうした問題を予防するためには、飼い主さんと愛犬との間にしっかりした絆を構築しておく必要があります。

大人になっても毎日褒めてあげて

大人になってもトレーニングは継続してあげてください。日々の生活にトレーニングを組み込んでおくと無理なく毎日続けられます。例えば、お散歩に出かけるとき、信号を待つ間に「おすわり」をさせたり、ごはんを準備している間に「まて」をさせたりして、上手にできたら都度褒めてあげてください。

その他、愛犬の望ましい行動を見つけたら、たくさん誉めてあげましょう。静かに大人しくしている時は、ついつい無関心になりがちですが、そういう時こそ、「いい子だね」と優しく声をかけてあげてください。犬は、何歳になっても飼い主さんから褒められることが大好きです!

 

 

初めて子犬を迎えた方にとって、犬との接し方がわからないのは当然のこと。誤った知識は犬の問題行動を引き起こす場合もあるので、まずはパピーパーティーに参加して、正しい情報を入手するようにしましょう!

菊池 亜都子
東京大学附属動物医療センター 行動診療科

菊池 亜都子

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