体も免疫も十分にできあがっていない子犬は、成犬なら重症にならないようなことでも、一気に体調を崩してしまうことがあります。特に、お家に来て間もない子犬で気をつけたいのが「低血糖症」です。もし低血糖症を放置してしまうと、短時間で命を落とす可能性があります。飼い主さんは正しい知識を身につけて、子犬を低血糖症から守ってあげましょう。

低血糖症ってこんな状態

体を動かすための、ガソリンのような役割を果たしているのがブドウ糖(=血糖)です。このブドウ糖を燃やすことによって、体は色々な活動をすることができます。低血糖症というのは、このブドウ糖が著しく減ってしまうことにより、体が正常な活動を維持することができなくなる状態のことです。

なぜ子犬がなりやすいの?

犬や人を含めた動物にとって、体のエネルギー源であるブドウ糖を一定に保つことはとても重要です。そのために大切な役割を果たしているのが、肝臓です。

ごはんを食べた時に分解されたブドウ糖は、肝臓内でグリコーゲンという物質に変えられて貯蔵されます。そして、血液中のブドウ糖が少なくなってくると、肝臓は再びグリコーゲンをブドウ糖へ戻し、血液から放出して体中の組織にエネルギーを届ける働きをしているのです。肝臓が血糖値を調整してくれるため、大人の犬であれば数日ごはんを食べなくても、命の危険にさらされるほど血糖値が落ちることはありません。

 

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しかし、子犬の時はまだ十分に体ができあがっていません。肝臓の機能も大人の犬に比べると極端に低いのです。そのため、空腹時間が続くとすぐにブドウ糖が足りなくなり、低血糖症になってしまうのです。

低血糖症になるのはこんなとき

ごはんを与えるタイミング

離乳できていないような幼犬では、3時間ミルクを飲まないだけで低血糖を起こしてしまうこともあります。離乳した子犬でも、半日ごはんを食べないだけで低血糖症を起こす子もいます。子犬のうちは少なくとも6〜8時間おきにごはんを与えてあげましょう。ごはんを与える回数は、少なくても1日に3〜4回に分けてあげるといいと思います。

ストレスなどによる食欲低下

特に、子犬がお家にやって来た日から2〜3週間は要注意です。今まで過ごしてきた場所から急に移動させられることで、大きなストレスを感じてしまう子犬もいます。

ストレスから胃腸炎を発症して食欲不振に陥る場合もあります。「おうちに来て2〜3日はちゃんと食べていたのに、その後食欲が落ちてきた。」というような場合には、早めに獣医さんに相談してみてください。

低血糖症になるとどうなるの?

ブドウ糖が足りなくなってくると、活発に動き回ることができなくなります。ぐったりとして、眠ることも多くなります。また、体を温かい状態に保っていられなくなるため、体温が低くなります。

ブドウ糖が少なくなっても、体のなかで最も重要な役割を果たしている脳は、優先的に糖分を使っているのですが、脳が使うためのブドウ糖すらなくなってしまうと、以下のような症状を引き起こします。

 

□ 意識レベルが低下し、呼びかけに反応しなくなる

□ 痙攣を引き起こす

 

こうなってしまうと非常に危険です。数分で死に至る場合もあるので、一刻も早く対処する必要があります。

もしも低血糖症になってしまったら

最後にごはんをあげてから時間が経っているときや、激しく運動をした後にぐったりしているようだと、低血糖症の可能性があります。低血糖症が疑われるような場合には、必ず病院へ連れていく必要がありますが、その前に自宅でできる緊急処置があります。一刻を争う場合もあるので、ぜひ覚えておいてください。

ガムシロップを舌の上に垂らす

Honey pouring from spoon against a light background

 

ガムシロップがある場合はガムシロップを、ない場合は砂糖をぬるま湯に溶かして砂糖水を作ります。これを少し指に取って、舌の上に数滴垂らしましょう。糖分は、舌や歯茎の粘膜から吸収できるため、舌の上に垂らすと血糖値を回復させることができます。もし口があけられないような場合には、唇をめくって歯茎に塗りこんでください。少量ずつ垂らしていき、合計1~2mlくらいが目安です。

自宅処置の注意点

無理に飲み込ませようとして、喉の奥に押し込まないように注意してください。先ほどお伝えしたように、糖分は舌の上や歯茎から吸収できます。意識が朦朧としている時に、無理に飲み込ませようとすると、気管に入ってしまって、呼吸困難や肺炎の原因になってしまいます。絶対に流し込んだりせず、必ず指にとって少量ずつ舌につけるようにしてください。

元気になっても必ず病院へ

ガムシロップや砂糖での糖分補給というのは、一刻を争う場合の緊急処置です。元気になっても必ず病院に連れて行ってあげましょう。ガムシロップなどによる糖分はすぐに消費されてしまうので、1時間もすると再び低血糖症になってしまうことが多いのです。

また、胃腸炎などの病気が原因で食欲不振に陥っている場合もあります。そのような場合は根本的な治療が必要になるので、子犬が元気を取り戻したとしても、必ず病院へ連れて行ってあげましょう。

低血糖症の治療

低血糖症の治療はとにかくすぐにエネルギーを補充してあげることです。治療が間に合えば、今まで通り元気に暮らせるようになりますが、もしも治療が間に合わず、心臓や肺、脳などのような生命維持活動をしている臓器がガス欠になってしまうと、最悪の場合は死に至ることもあります。動物病院ではまず、点滴などで血糖値を安定させます。そして、検便や血液検査などによって低血糖症を引き起こした原因を探ります。

子犬が低血糖症に陥る多くの原因は、空腹によるものですので、この場合はごはんを与える間隔を調整することで再発を防止します。ただし、寄生虫が体内にいる場合は、寄生虫に必要な栄養素を取られてしまうことで低血糖症を引き起こしやすくなることもあるので、病院では寄生虫がいないか等も合わせて調べます。

 

 

子犬はまだ体も免疫もできあがっていないので、大人の犬であればなんともないようなことで、命の危険を招くことがあります。低血糖症の他にも気をつけなければならないことはたくさん。『子犬の時に注意したい病気』もあわせて読んでみてくださいね。

子犬の様子をきちんと観察して、もしもの時はすぐに対処できるようにしてあげてください。

アイペット獣医師

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