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外を歩いていても、犬を何頭か連れてお散歩している光景をよく見かけます。犬同士がとても仲良さそうに、歩調を合わせてお散歩している姿は、見ているこちらも微笑ましい気持ちになります。 

仲間もできて、楽しいだろうな…と思って多頭飼いを実現したはずが、一緒に暮らしている犬同士のケンカが絶えなかったり、時にはケガをするほどの争いに発展してしまったら、やはり穏やかには暮らしていけませんね。そこで、犬の攻撃行動シリーズの5回目となる今回は、同じ家庭内で飼われている、身近な犬同士で生じる攻撃行動についてお伝えしたいと思います。

なぜ攻撃し合うのか?

成長とともにケンカは増える

このタイプの攻撃行動は、どちらか一方の犬または両方の犬が、社会的成熟に達する時期(犬種や個体差はありますが、多くは1~3歳齢と言われています)に最も起こりやすいと言われています。犬が小さいときはうまくいっていたのに、成長するにつれてケンカが絶えなくなるといった例がこれに当たります。

ケンカのもとは”優劣”の乱れ?

原因はさまざまなものが考えられますが、まずは犬同士の間の優劣順位が不安定であったり、欠如したりすることがあげられます。特に、犬種、体の大きさ、年齢、性別が同じ場合には、優劣順位がつきにくいために、問題がひどくなってしまいやすいと言われています。

飼い主さんは、自分の犬同士がケンカをしていると、ついつい小さくて弱い犬の味方をしてしまうことはありませんか?弱い立場の者をかばってあげたくなるのは自然ですし、優しい感情ではあります。例えば、ケンカに勝った方の犬を叱ったり、弱い方の犬だけを抱っこしてあげたり、撫でてあげたり…。しかし、実は犬同士の間でははっきりと優劣順位がついているにも関わらず、このような干渉や介入をすることで、犬同士の優劣順位が乱れてしまうため、余計に犬同士の攻撃行動を悪化させかねません。

どうすれば防げるのか?

犬の優劣に沿った行動を心がけましょう

では、どうしたらいいのでしょう。犬同士の順位がはっきりしている場合は、優位な犬にすべての優先権を与えてあげます。例えば、優位な犬に先に食餌を与え、先に可愛がり、そして先に遊んであげるとよいでしょう。そうすることで、犬同士の順位が乱されることがなくなるので、無駄な争いもなくなり、順位が上の犬も下の犬も安心することができるのです。

愛情を込めすぎるのも・・・

また、犬同士ではきちんと優劣順位がついていたとしても、飼い主さんへの愛情が強すぎる場合にも、犬同士の攻撃行動が起こることがあります。その場合は、飼い主さんがいない時、例えば留守番させた時などにはケンカは起きません。そして、大好きな飼い主さんが帰宅すると、嬉しくて興奮します。その興奮が続いたまま、犬たちは飼い主さんの愛情を独り占めしようとします。それらが引き金となって攻撃が起きることがよくあります。これを避けるには、飼い主さんが帰宅する時はできるだけ平静を装い、すべての犬を無視して興奮させないように心がけてください。そして、ある程度時間が経って、犬たちが落ち着いてきたところで、初めて声をかけてあげるといいでしょう。

それから、オスはメスに比べて雄性ホルモンであるテストステロンの影響を受けやすいために、オス同士の攻撃行動が起こりやすいと言われています。去勢をすることは、犬同士の攻撃行動を低下させることがあるため、オス同士の場合は去勢を勧めることがあります。この時、劣位な犬の方を去勢し、優位な犬には手術をしないでおくことで、序列が明確になるという考えもありますが、この方法については、議論の余地があり、はっきりとした結論は出ていません。

犬どうしの攻撃は永遠のテーマ??

お伝えしてきたように、家庭内での身近な犬同士の攻撃行動は、社会的な序列を確立しようとして生じることが多いようです。序列が確立すると争いの頻度は減っていきますが、完全に決着がつくことはないと言われています。それは、いったん決着がついたと思っても、どちらか一方の犬が高齢になったり、病気になったり、あるいは入院やトレーニングなどでしばらく家にいなかった犬が戻ってくることなどによって、序列が混乱してしまうことがあり、再び犬同士の攻撃行動が生じることもあるからです。ただ、先のことばかりを心配しすぎるよりは、飼い主さんとそれぞれの犬との関係をしっかりと構築し、飼い主さんが不適切な干渉をしてしまうことで、犬同士の序列を混乱させないように注意してあげたいですね。

菊池 亜都子
菊池 亜都子

東京大学大学院 獣医動物行動学研究室で行動学を専攻。自身の飼い犬の問題行動...

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