French bulldog lying with his teddy dog friend

愛犬の様子に何となく違和感を覚えたことってありませんか?たとえばしきりに自分の手を舐めるようになったり、唸るようになったり、トイレを失敗するようになってしまったなどなど・・・。
そう言われてみればちょっと気にはなるけど、まあそこまで困ってないからいいかなと、そのまま見過ごしてしまうと、後々大変なことになるかもしれません。そのちょっとした違和感は、愛犬が必死に出しているSOSのサインである可能性があります。

SOSのサインを見過ごすと・・・

これは人間に置き換えるとわかりやすいので、ぜひ自分のことで考えてみてください。誰かになにか嫌なことをされたら、あなたはまず「やめてほしい」というサインを出しますよね。直接「やめて」という言う場合もあるでしょうし、嫌な顔をして見せたり、その人と距離を取ったりするでしょう。
そういったサインを出しても、相手が一切構わずに嫌な行為を続けてきたらどうしますか?本気で怒ったり、攻撃的な態度をとるようになるのではないでしょうか。もしくは精神的にまいってしまうかもしれませんよね。
嫌なことをされて怒るのは、犬だって同じです。嫌がっているサインを見て見ぬフリをしていたら、あとでとんでもないことになる可能性があります。

愛犬が攻撃的になってしまうケース

嫌なことをされ続けて、その拒否反応として攻撃的になることは珍しいことではありません。ここでは足拭きを例にあげて説明します。

「SOS」と「わがまま」を一緒にしないで!

お散歩から帰ってきたときなどの足拭き、苦手な子はとても多いですよね。特に後ろ足は犬にとって敏感な部分なので、触られるのを嫌がるのは普通のこと。嫌がって足を引っ込めたり、逃げ出してしまうことはよくあります。
これを単なるわがままだと思って、無理やり押さえつけて足拭きを続行しようとすると、次第に唸ったり、歯をむき出したりするようになる場合があります。唸るだけ、歯をむき出すだけで咬んではこないから大丈夫、と思っている飼い主さんが意外と多いのですが、「唸る」「歯をむき出す」は攻撃行動の初期段階。「これ以上やったら咬むよ」というサインを送っているので、そのサインを無視して、そのまま続けていけば、いずれは咬むようになるかもしれません。

ひどくなる前に治療を受けて

攻撃行動がひどくなると、体に触れようとするだけで咬もうとしてくるようになります。中には、飼い主さんがティッシュを取ろうと手を伸ばしただけで噛み付こうとした、なんて子もいました。ここまで悪化してしまうと、飼い主さんの愛犬に向き合う気力がだんだん失せていってしまいます。なんとかしたくてがんばっても、愛犬とのいい関係性を取り戻せないことに絶望してしまうのです。

ここまでひどくなる前にきちんと行動治療を受けることで、最悪の事態を避けることができるかもしれません。実際に咬む前に行動治療を受けるのと、咬んでしまってから行動治療を受けるのとでは、治療が必要な期間や治療効果は全く異なります。もし攻撃行動の予兆が見えるようであれば、早めに行動治療学の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

愛犬が精神的に病んでしまうケース

嫌なことをされ続けた結果、愛犬が精神的に病んでしまうこともよくあることです。精神的に病んでしまったら、どのようになってしまうのでしょうか?

自分の手を舐め続ける

自分の手や足を舐めるのは、ある程度までは正常な行動です。でも、舐めている時間がどんどん長くなっていたり、気が付くといつも舐めていたり、声をかけてもまったく反応しなかったりといった行動が目に付くようになったら、行動治療が必要かもしれません。その根底に、ストレスや不安といった深刻な問題が隠されている可能性があるからです。ひどい場合には自分の手を舐めすぎて、手が炎症を起こしても、それでも舐め続ける場合もあります。
詳細は『犬が自分の体を舐めるのはストレスが原因かも』の記事で解説しておりますので、あわせてご確認ください。

トイレを失敗するようになる

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いつもはきちんとトイレで排泄することができていたのに、いつからか失敗するようになった、というケースもよく聞きます。腎臓や尿道など、泌尿器系の病気の可能性もあるので、まずは病院に連れていってあげたほうがいいと思いますが、病気が原因でなければ、ストレスや不安といった精神的な問題が原因になっている可能性があります。
愛犬がトイレを失敗したとき、強く叱責していませんか?もしかしたらその叱責が、愛犬に強いストレスを与えているのかもしれません。犬を叱ることはとても難しいことなのです。飼い主さんはトイレの失敗を叱ったつもりでも、排泄行為そのものがダメなことなのだと感じてしまう子も中にはいます。そうなると、飼い主さんに怒られないように見えないところに隠れてこっそりしたり、ウンチを食べるようになってしまったりすることもあるのです。

お留守番時の異常な行動

飼い主さんが最も気づきにくいのが、お留守番中のストレスサインでしょう。一緒にいる時は、ちょっとした違和感に気付いてあげることができても、お留守番をさせている間は非常にわかりにくいですよね。
実際に、10歳を超える小型犬を飼われている飼い主さんから、こんな相談を受けたことがあります。数か月前に新しいマンションに引っ越しをしたそうなのですが、ある日、ご近所の方から「鳴き声がする」と言われて来院されました。それに対して飼い主さんは、「この子の吠える声は、生まれてから数回しか聞いたことがない。それくらい大人しい子ではあるけれど、留守番中に吠えているのでしょうか。」とおっしゃっていました。
相談を受け、飼い主さんに留守番中の様子を録画してもらうことにしました。そこで衝撃的な事実が発覚します。飼い主さんが出かけてから10分くらい経過した後、その子は不安そうに鳴き始め、常にドアの方を気にしながらウロウロしたり、ジャンプをしたりといった行動をずーっと繰り返していたのです。もしかしたら、この子は幼い頃から、留守番時は常にこのような不安を感じながら過ごしていたのかもしれません。引っ越しを機に、ご近所の方に指摘してもらったことがきっかけで、10年経ってようやく気づいてあげることができたのかもしれません。
このように、留守番時の様子はなかなか気付きにくいものです。もし心配な方は、ぜひカメラを設置することをおすすめします。そして少しでも違和感を感じたら、早めに行動治療へ連れて行ってあげてください。鳴き声がご近所に聞こえなければいいという問題ではなく、愛犬の不安な気持ちを取り除いてあげてほしいのです。

 

もしかしたらあなたの愛犬も、SOSのサインを出しているかもしれません。それに最初に気付いてあげられるのは、飼い主さんだけ。どうか、ちょっとした違和感を見過ごさずに、愛犬と向き合ってあげてください。動物行動治療については、『愛犬の行動に困ってる。その状態、放置しないで』の記事で詳しく解説しています。あわせて読んでみてくださいね。

菊池 亜都子
東京大学附属動物医療センター 行動診療科

菊池 亜都子

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