あなたの愛犬は雷やお留守番、掃除機の音など日常の些細な音に敏感に反応し怖がってはいませんか?日本の犬はスウェーデンの犬と比べ怖がりな犬が多いように思います。どうして怖がりな犬とそうでない犬がいるのでしょうか?

ビビり犬の特徴

変化に対する異常な反応

他の犬に比べて怖がりな犬はちょっとした環境の変化にもすぐに反応します。極端な例で言うと居間にあったソファの位置が変わっただけでも、警戒を見せます。

人見知りをしすぎる

その他の特徴では知らない人を異常に怖がってしまうということもあります。

 

□ コンタクトを避ける
□ 固まってしまう
□ 「ウ〜」と唸る
□ 体を低く保つ
□ 耳を後ろに引いている
□ 尻尾が垂れている

 

知らない人や犬に対してこのような仕草を見せたら「私は怖いの、あっちへ行って!」ということを伝えようとしています。

すぐにその場から離してあげるようにしましょう。

どうしてビビり犬になってしまうの?

犬はもともと用心深さの少ない性格

先祖のオオカミは非常に用心深い性格ですが、犬は人間と暮らす歴史の中で怖がるという気質がかなり除去されていきました。それは家畜化という過程を経たおかげなのですね。野生動物に比べて人に慣れやすいのが家畜化された動物の特徴です。

 

そうはいっても犬といえば全て自動的に人や人の住居環境を受け入れるわけではありません。野犬を見れば明らかです。野山に育ち、人から触られるという経験を経ていない犬は、やはり野生動物と同様に新しいもの、都市環境、人の動きに非常に用心深さをみせます。

 

犬が人と仲良く暮らしていくには人工的なトレーニングが必要なのです。

犬の性格を形成する社会化期

犬が私たちと仲良くできるのは、人の住む環境の中で生まれ、そして育つことで、人を含めた人工的な環境に「慣れる」というトレーニングを受けているからこそ。そして面白いことに「慣れ」に必要な脳の柔軟さは、犬はオオカミに比べてはるかに優れています。

 

この「慣れる」ためのトレーニングは社会化期に行われると効果的です。

社会化とは

犬が自分の周りの環境のあらゆるもの(人や他の動物を含めて)に対して柔軟かつ適切に対応する力を身につけることを言います。この社会化が行われる時期を社会化期といいこの時期に、多くの人や犬に会ったりいろんな場所にいくことで新しいことを必要以上に怖がることなく柔軟に対応できる力が身に着くのです。

 

オオカミの社会化期は生まれて数週間で終わってしまいますが、犬は4週間から12週目(一番大事な社会期は4〜8週目まで)まで続きます。

 

この期間は「社会化の窓が開く時期」とよく表現されることがあります。オオカミに比べて始まりのやや遅いそして期間の長い社会化期を持つおかげで、人と慣れる時間がたっぷりと与えられている、だからこそ犬と人との共存は実現しやすいのです。

*社会化期のしつけについて、詳しくは『子犬期のうちに絶対やっておくべきトレーニング【獣医師が解説】』をご覧下さい。

遺伝性の場合も…

怖がりの犬の中には生まれた環境によって怖がりになってしまったのではなく遺伝的にそのような性格の犬もいます。

 

雷や花火の音を異常に怖がる犬はガンシャイの性質をもっているかもしれません。ガンシャイとはもともとは銃(=ガン)を怖がる猟犬のことを指し今では過剰に音に敏感な犬のことをいいます。

 

また、留守番を怖がる犬というのも、ビビリ犬というよりもむしろ分離不安を抱えているといってもいいでしょう。これも遺伝が関係する場合があります。

犬の生涯の性格を決める大切な期間

生まれてから4〜8週目は、その犬の生涯の性格を決める非常に大切な期間になります。その期間の経験によって将来のビビり度/肝っ玉度が決定されるのです。

 

「怖がる」という感情は、生まれた瞬間から備わっているものではなく、社会化の窓があいてしばらくしてから徐々に現れてきます。そのあまり恐怖感のないうちに、社会化期が始まることで臆することなく多くの経験が出来るのです。
この期間にいろいろなポジティブな経験を与えれば、怖がるという感情をあまり持たずに一つ一つの事象を受け入れ学習することができるというわけです。

小規模なブリーダーから犬を引き取るべき理由

私はよく「家庭的な環境で小規模に犬を繁殖しているブリーダーから直接犬を得てください」といろいろなメディアを通して述べていますが、その理由はまさに社会化期にあります。

 

スウェーデンのコイケルホンディエのとあるブリーダー宅にて。母犬は普段居間の一角で子犬たちと過ごす。ここで子犬たちは生まれた時から生活音を聞きながらすくすくと育つ。

スウェーデンのコイケルホンディエのとあるブリーダー宅にて。母犬は普段居間の一角で子犬たちと過ごす。ここで子犬たちは生まれた時から生活音を聞きながらすくすくと育つ。

ブリーダーの家庭にいれば、嗅覚、聴覚、視覚といった感覚器が目覚め始めた瞬間から様々な家庭の音(掃除機の音やテレビ、子供の声など家庭の雑音)にさらされることになります。あるいは人に触られたり、人が出たり入ったりを経験するでしょう。
4週目では恐怖感がまだ弱いわけですから、ネガティブな気持ちに陥らず環境の一つとしてすんなりと受け入れるというわけです。

動物福祉先進国スウェーデンでは

スウェーデンではショップで商業的に子犬を売るのが法律的に禁止されており、欲しければブリーダーから得なければならないのですが、ブリーダーの元で予め「家庭環境」を経験しているので、子犬は割合すんなりと新しい家庭に順応をしてゆきます。

ちなみにスウェーデンでは多くのブリーダーが趣味でブリーディングを営んでおり、よって子犬が育つ環境も家の中という状況がほとんどなのです(もちろん大規模に犬舎で多くを繁殖しているブリーダーも少ないながらに存在します)。

日本に怖がり犬が多いわけは…

さて、日本の犬はなぜビビり犬が多いのでしょうか?もちろん飼い主の育て方に非もあるかもしれませんが、一番の原因は、犬を迎えるにあたって日本においてはペットショップからの購買がほとんどだからではないか、と推測をしています。

子犬のころのトラウマが原因?

ペットショップの子犬たちが生まれ育つ環境は様々ですが、いわゆるパピーミル出身であれば、社会化の窓が閉じそうになる頃に飼い主の家に迎え入れられることになります。それはいきなり環境の違うところに置かれるという境遇となります。

パピーミルで育っていた時の環境は残念ながら家庭のそれとは全く異なるものです。母犬はたいていケージに閉じ込められ単調な環境に囲まれ、子犬たちは大事な4〜8週の大部分をその世界しか知らないままで過ごします。

 

そのために、新しいものを受け入れるという脳の柔軟さも培われることもなく、見知らぬものに遭遇するという刺激への免疫すら持たず、そのまま家庭犬として迎えられてしまうわけです。

 

その頃にはおそらく6〜7週目を迎えており、恐怖心が徐々に芽生えつつある時期です。よっていきなりの環境変化に驚き恐怖を感じ、それがトラウマになっていく…そんなところにも日本の犬がやたらと怖がるという理由が見いだせそうです。

 

怖がりの性質は社会化期に単調な環境に閉じ込められていることだけが原因ではなく母犬の置かれている境遇も影響しているでしょう。母犬が精神的に満たされている、というのは子犬にとって大きな安らぎを与えるものです。しかし犬らしい生活を送ることもできずにケージで「子犬を産むマシーン」として生きるしかない母犬のストレスが子犬の気質形成に影響を与えるのは想像に難くありません。

怖がりな性格を変えることはできるの?

怖がりを完全に克服することはできないでしょう。しかし、飼い主さんと協力しながら様々な環境にでて新しいことに慣れるトレーニングを行うことによって緩和することはできます。

怖がりな性格で一番ストレスがたまっているのは犬自身です。楽しいことがたくさんあるのになんでも怖がってばかりなのはかわいそうですよね。

いろいろな経験をさせてあげよう

怖がりな性格を直すために最も効果的なのが犬のメンタルが許容する限りいろいろな場所連れてゆく、音や人に慣れさせてあげることです。いきなりたくさんの刺激を与えるとトラウマになってしまうこともあるので少しずつ進めていきましょう。

 

その時に必ずポジティブな経験させてあげるのも大事です。無理強いをしてはいけません。
たとえば、玄関から外に出たくないという犬がいれば、玄関のドアをあけたままにしてそのそばで何かトリーツ探しをさせてみるとか、わざと玄関のすぐ外にトリーツをなげるなどします。

 

そして犬のボディランゲージを読んでみましょう。
本気で嫌がっているジェスチャーを見せていたらすぐに切り上げます。その時に「かわいそうに!」などと同情したりしないこと。余計に気持ちを煽ってしまいます。
そして飼い主さん自身が気持ちをゆるりと持ち、じっくり気長に構えるのも大事なことです。

 

このトレーニングの際に気をつけたいことは決して過保護にしないこと。犬が恐がっているからといって飼い主さんが守りすぎてしまい新しい刺激に触れることができないと性格を変えることはできません。

 

もうひとつは完全に怖がりな性格を除去することはできないということです。トレーニングを行ったからといって大胆不敵な犬になることはないでしょう。
犬が少しでも生きやすくなることが目的なので完璧を目指して犬に負担をかけすぎると本末転倒になってしまいます。

 

子犬のころに形成された性格を変えるのは非常に大変なこと。少しの変化が見られただけでも大成功だと思いましょう。

ライター

藤田 りか子

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