犬の攻撃行動シリーズの4回目になります。

今回は、所有性攻撃行動と食物関連性攻撃行動についてお話しします。

所有性攻撃行動とは

文字通り、自分のモノを守る行動です

所有性攻撃行動とは、犬が自分の所有物だと思っているものを守るためにみせる攻撃行動を言います。自分のモノとは、食器、ガムのおやつ、お気に入りのおもちゃ、盗んだり見つけたものなどです。なかでも、食べ物に関するものだけを守って攻撃する場合は、特に「食物関連性攻撃行動」とか「食餌関連性攻撃行動」などと呼ぶことがあります。

自分のものは大切ですし、ましてや自分で獲得したものであれば、価値のある宝物のようなものですから、それを取られまいとして守ろうとする反応は正常の範囲内といえるでしょう。しかし、攻撃をすることでものを守ることができたという成功体験によって、過度な攻撃行動となっていくことがあります。また、飼い主さんが体罰を与えたり、大声で叱るといった反応をすることでも、防御的な攻撃反応が現れてきます。

この行動を防ぐには?

では、これが起きないようにするにはどうしたらいいでしょうか。

まずは、奪われて困るものは、犬の届かない場所に保管して、飼い主さん側できちんと管理をすることが大切です。与えたおもちゃを取り返そうとした時に、攻撃性が見られるようでしたら、無理やり奪うのはやめましょう。

攻撃性が出るのを予防するためには、普段からおもちゃやボールなどを使って、「放して」のトレーニングをしておくといいですね。トレーニングする際には、犬にとってくわえているものよりも価値の高いごほうび(特別なおやつなど)を用意しておきます。そして、「放して」という号令と同時に、そのごほうびを与えます。それを何回も繰り返し練習し、最初は号令と同時に与えていたごほうびを、口から放して落としたときだけ与えるようにするなど、少しずつレベルアップをしていきます。最終的には「放して」という号令だけで口から落としてくれるようになることを目指します。ちなみに、このトレーニングの際には、放した後に言葉で誉めたら、ご褒美として再びそのおもちゃやボールを返してあげるという方法も不定期にやってあげてください。ちゃんと放してくれたら、また返すんだよ、必ずしも奪うとは限らないんだよ、ということを知ってもらうためです。

危険なものをくわえていたら?

とは言え、拾い食いしたものや盗んだものの中には、危険なものもあり、場合によっては命に関わることもありますので、飼い主さんも慌てて口に手を突っ込んで奪い返そうとしがちです。そうすることで、犬は余計に取られまいと必死になって攻撃性が悪化したり、慌てて飲み込んでしまったり、もしくは、くわえ直そうとした時に取ろうとすると、あなたの手も一緒に咬まれてしまうことがあります。よって、決して慌てずに対応するようにしてください。

この場合も、普段から基本的なトレーニングをして犬と良好な関係を作り、拾い食いをさせないようにすることが前提となりますが、もしも盗んだものを取り戻さなければならない時には、犬の関心を他のことに向けさせる(例えば、散歩に行く、車に乗る、ドアのチャイムを鳴らすなど)ことによって、ものを放すことがあります。もちろん、さきほどご紹介したトレーニングを普段からやっている場合は、それを落ち着いて実践してみてください。そして、気を付けなければならないことは、盗んだものを取り戻す際に、決して犬の目の前で取り戻そうとしないことです。おやつなどを使って、できるだけ遠くに移動させてから、犬が見ていないところで取り返すようにしましょう。

ちなみに、所有性攻撃行動の対象は物だけではありません。例えば、大好きなお母さんに抱っこされている時に限って、他の家族が近づくと、唸ったり咬みつこうとしてくることがあります。これも、状況によりますが、一般的にはお母さんを守ろうとする所有性攻撃行動だと考えられています(獣医師によっては多少考えが異なるかもしれません)。

 

食物関連性攻撃行動とは

食べ物を他者から守る行動です

食物関連性の攻撃行動は、保護された犬によく見られるという報告があります。保護されるまで、飢えを経験した犬がそのような行動を示すのは、正常な行動の範囲内といえるでしょう。食べ物は生きていく上で不可欠です。満足に食餌を得る機会がなかったような保護犬にとって、食べ物を他者から守ろうとして攻撃的にふるまうことは、正常で適応的な行動だといえます。そのような犬は、譲渡されると次第におさまっていくということも知られています。

多食症に関係していることがあります

また、多食症を引き起こすような病状や治療によって攻撃性が高まることもあります。多食症の原因としては、妊娠、泌乳、成長、運動量の増加などの生理学的要因、糖尿病副腎皮質機能亢進症などの病理学的要因、そして、ステロイドや抗てんかん薬の投与などといった医原性要因が考えられます。まずはこれらを鑑別することが必要になります。逆に、食欲不振から自分の食餌を食べきることができず、残った食餌を守って攻撃的になることもあります。

犬が”安心して食べられる”状況を用意しましょう

その他の原因として意外と多いのが、しつけのつもりで、食べている最中にその食餌を奪ったり、わざと途中で食べさせないようにしたりといった人間側の行動です。少し前までは、このしつけ方法はごく一般的に行われていたのですが、これはあまりいい結果を生み出すとはいい難いような気がしています。ゆっくり睡眠をとる、休息をするのと同じように、食餌をするということは、犬に限らず生き物にとって生きていくために必要不可欠です。安心して食べられるような環境を、私たち人間側がぜひとも提供してあげたいものですね。

犬の攻撃行動についてのコラム

第1回 犬が威嚇をしてくるのはなぜ?

第2回 家族に対して犬が攻撃行動を取る理由

第3回 不安からくる犬の攻撃行動

第4回 犬がなにかを守ろうとするときの攻撃行動

第5回 多頭飼いでは犬の順位付けに気を付けて!

第6回 病院で暴れるワンちゃんは何が原因なの?

 

 

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菊池 亜都子
東京大学附属動物医療センター 行動診療科

菊池 亜都子

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