犬を飼ったらワクチンを打ちますよね。でも正しいワクチンの接種方法ってご存知ですか?実はワクチンプログラムには色々な種類があるので一概にこの打ち方がいい!と決まっているわけではないのですが、ここでは獣医師監修のもと、国際的な基準である「WSAVA」のワクチンプログラムについてご紹介します。

ワクチンの本来の役割や、打つべきタイミングのほか、ワクチン接種をしない場合のリスクと接種したときのリスク(副作用)についてまとめました。

そもそもワクチンてなぁに?なんで接種するの?

身体の中で、病原体などの異物が発見されたときに排除してくれるのが免疫です。子犬は生まれてスグに口にするお母さんの母乳を飲むことで、お母さん犬が持っている免疫力が譲り受けることができ、致死率の高いおそろしい病気からも身を守ることができます。しかし、その効果は生後2~3ヶ月間くらいしか続きません。母親からもらった免疫が薄れると病気にかかりやすくなるので、そこで子犬を守ってくれるのがワクチンなのです。

ワクチン誕生の物語

今から200年以上も前、伝染力が非常に強く、体中に膿疱を形成し、仮に治ったとしても、跡が残ってしまう「天然痘」という病気があり、悪魔の病気、不治の病として恐れられていました。

イギリスの医師、エドワード・ジェンナーは、牛の乳搾りをしている女性達は天然痘にはならないことを知りました。実は、牛にも天然痘と同じような症状を示す「牛痘」という病気がありました。そして、天然痘を発症している人に接すると天然痘に感染する場合があるのに対し、牛痘を発症している牛に接しても人には何も症状が現れないことが知られていました。

しかし、ジェンナーは乳搾りの女性達の話を聞き、牛痘と天然痘には何か共通するものがあると考え「牛の乳搾りの女性達は、牛痘に接した経験があることで天然痘にならないのではないか?」と仮説を立てました。

そこで、ジェンナーは、牛痘の膿を人に接種する実験を行いました。そして、牛痘の膿を接種された人は天然痘にならないことを見いだしたのです。これが、「人為的に、病原体を接種することで、より恐ろしい病原体から身を守る」というワクチンの基本原理を最初に発見した例で、この発見が、その後のワクチン開発の重要な基礎となりました。

ちなみに、ワクチン(Vaccine)という言葉はラテン語の「vacca(牝牛)」に由来しています。

ワクチンの種類とその効果

では、ワクチンを接種することで具体的にどのような病気が防げるのでしょうか?接種するワクチンによって、妨げる病気が異なります。

ワクチンの種類

ワクチンは2つの種類に分けられます。

コアワクチン

世界中で感染が認められており、死に至る可能性のある重い感染症から動物を守るため、全ての犬と猫に接種すべきワクチンとされています。

ノンコアワクチン

地理的要因、その地域の環境、またはライフスタイルによって、特定の感染症のリスクが生じる動物にのみ必要なものとされています。

コアワクチンは全ての動物に接種するのですが、ノンコアワクチンは動物の居住地域や生活環境などによって接種するかどうか、飼い主さんが判断しなければなりません。

ワクチンを打つタイミングは?

生まれて間もない子犬と成犬では、ワクチンを打つ回数や考え方が異なります。家族として犬を引き取る際は、今までどのようなワクチン接種をしてきたのか、必ず確認するようにしましょう。

基本的に、犬のワクチンの接種時期は、以下の通りとなります。

・1回目の接種:生後8週間後

・2回目の接種:生後12週間後

・3回目の接種:生後16週間後

・4回目の接種:3回目の接種から1年後

※このワクチンを打つタイミングは、最新の獣医療情報を発信している世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチンガイドラインをベースにしておりますが、基本的にはかかりつけの獣医さんと相談しながら接種するようにしてください。

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コアワクチンで防げる病気

狂犬病

狂犬病に感染した動物に咬まれることによって感染する病気で、人にも感染します。水などの液体を飲むと首の筋肉が痙攣するため、水を恐れるようになります。最終的には高熱で全身が痙攣し、昏睡状態となり死亡してしまうのですが、発症すると致死率は99.9%という、非常に恐ろしい病気です。

島国という立地柄、日本国内での発症は確認されていないものの、海外などでは今でも発生している病気なので、年に1度のワクチン接種が法律で義務付けられているのです。海外からウイルスを持ち込まないためにも、必ずワクチンを打ちましょう。

犬ジステンパー

初期は、風邪のような症状から始まりますが、ウイルスが脳に侵入する場合があります。ウイルスが脳にまわってしまうと、けいれんや震えなどの神経症状を引き起こし、90%の高確率で死に至ります。

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犬パルボウイルス感染症

パルボウイルスが鼻や口から侵入し、嘔吐や血便、激しい下痢を引き起こします。とくに子犬は致死率が高く、妊娠した犬が感染すると胎子に感染し、流産してしまいます。

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犬伝染性肝炎

感染すると嘔吐や下痢、頭部に水がたまるなどの症状を引き起こします。潜伏期後に41℃の発熱が4~6日続き、突然死をすることもあります。特に離乳後から1年未満の若い犬が発症しやすく、致死率が高い病気です。

ノンコアワクチンで防げる病気

ケンネルコフ(犬風邪)

病原体:犬パラインフルエンザウィルス、ボルデテラ

呼吸器症状がみられ、仔犬のときにかかりやすい病気です。また他のウイルスとの混合感染により症状が重くなります。

感染すると咳と鼻水などの症状が数日から数週間みられます。

ライム病

マダニに刺されることで、細菌感染を引き起こします。症状が見られることはまれですが、起立不能、発熱、食欲不振などの急性症状が見られることがあります。

犬も人も感染する可能性があるので注意が必要です。

ワンペディア関連記事☞「犬のノミ・ダニ対策、本当に必要?正しい方法は?【獣医師が解説】

レプトスピラ

ネズミなどの野生動物や家畜の糞尿が、眼や口の粘膜に付着して感染する。また、人間にもうつるので、特に小さな子供がいる家庭では注意が必要です。

ワクチンの副作用

ワクチンは、大きくわけると2種類の作り方があります。

生ワクチン

病原性を弱めた病原体からつくられます。

不活化ワクチン

原性をなくした病原体からつくられます。

このように、ワクチンは「病原性のない病原体」、もしくは「死んだ病原体」を使って作られているのです。もちろん病原性はありませんが、身体にとっては刺激になります。そのため、まれに副作用が起こる場合があるのです。副作用とは、ワクチン接種により免疫をつくること以外の反応のことを指します。

副作用がひどい場合には、発熱や嘔吐のほか、最悪の場合「アナフィラキシーショック」を示して命を落とすこともあります。もし、ワクチン接種後になにかしらの副作用が出てきた場合は、必ず獣医師に相談をしましょう。

*犬のワクチンの副作用についてはこちらをご覧下さい。

ワクチン接種後はしばらく安静に

人間と同じように、ワクチンを打った後は激しい運動を避け、安静に過ごさなければなりません。ワクチンの副作用で紹介したアナフィラキシーショック、接種後30分以内に起こることが多いです。その他の副作用は、接種後12時間以内に副作用起こることが一番多く、接種後数時間~3日の間も注意が必要です。ワクチン接種後から3日間ほどは、普段よりも注意深く観察するようにしてください。

 

また、ワクチンを打ったからといってすぐに免疫力がつくわけではありません。抗体生産にはワクチン接種後1~2週間ほどかかると言われています。そのため、ワクチンを打ったからといってすぐに遠出をしたり、犬の集団に入れることは避けたほうが良いでしょう。

いかがでしたか?「ワクチン」には法律で定められたものから任意のものまであり、効果も実はさまざま。犬が暮らす環境にあわせて選択するワクチン「ノンコアワクチン」もありました。また、犬が副作用を起こさない為にも、獣医さんとよく相談し犬の体調のよいタイミングでワクチンを接種するようにしましょう。

 

★うちの子の長生きのために、気になる病気について簡単に調べることができる、「うちの子おうちの医療事典」もご活用ください。

 

 

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