「犬の親子」といった場合、私たちはまず”母犬と子犬”を思い浮かべるのではないでしょうか。自分が生んだ子犬たちに母乳を与え、愛情豊かに優しく育てる…たくさんの子犬に囲まれた母犬には、なんとも温かで、幸せなイメージがあります。
それに比べると、犬の父親の存在感はやや希薄かもしれません。人間の場合は「家族のために外で働いているお父さん」像がまだまだ一般的ですが、一体お父さん犬は家族の中でどんな役割をしているのでしょうか?
犬の子育てについて
猫の雄は子育てにノータッチ
猫は孤独を好み、単独行動をするイメージが強いですが、メス猫が自分の子どもや姉妹で小さな群れを作って生活することがあります。通常、雄猫は群れからは排除され、子育てには参加しません。発情期に群れの雌に近づき、交尾を行います。犬は猫に比べ、集団で暮らしている印象があります。子育てにおける父犬の役割は、いったいどういったものなのでしょう。
生まれてからしばらくは、お母さん犬が子育てを担当
犬はもともと群れで暮らす社会的な動物です。子犬は母親や兄弟、仲間たちとじゃれあったり遊んだりしながら群れの中で生活し、他の犬や人とのコミュニケーションを取る能力、いわゆる社会性を身に付けます。子犬の生後~4カ月頃までを「社会化期」 と言い、 社会性を身に付ける社会化に適した時期となります。
しかし、子犬が生まれてからしばらくの間は、子育ては母親が一手に引き受けます。子犬の身体を舐めて清潔に保ち、排泄を促し、乳を与え、はぐれた子犬を優しく連れ戻したりします。
お父さん犬の役割
父犬の子育てについて
子犬は成長するにつれ動きが活発になり、兄弟犬とのじゃれ合いや、先輩の子犬たちとの触れあいを通じて、さまざまな感情表現を学びます。生後8週間から12週間ほどが経過すると、ほかの子犬たちとの優位性を確認し合う遊び「戦闘遊戯」を行うなかで、行き過ぎた攻撃を制御する方法を身につけるなど、徐々に社会性を獲得していくことになります。
それまではじゃれつかれても抵抗もせず、子犬の好きなようにさせていた父犬が、このころになると積極的に子育てに参加しはじめます。たとえば、食事中の父犬に子犬が近づくと威嚇をしたり、子犬の口を傷つけないように咬んだりすることで、してはいけないことや触れてはいけない場所などを教えていきます。
さらに、所属している群れの和を乱すような行為をした場合にも、父犬は子犬のもとに駆けつけ、注意します。この注意は、子犬がその行為が悪いことだと理解し、しなくなるまで根気良く、何度も繰り返されます。
以上のように、父犬は子犬の”やりすぎをいさめる”こと、そして“群れを統率する”ことに大きな役割を担っていることがわかります。つまり父犬は、「群れの一員としては未熟な存在」である子犬をしっかりとした成犬へと導く役目を果たしているのです。こうしてみると、子育てにおける父犬の影響はとても強く、その存在感は薄いどころか、社会的な動物である犬の根幹をなす、非常に重要なものであることがわかりますね。
父親不在だと社会性を養いにくい
子犬にとってお父さん犬というのは、本来であれば非常に大きな存在です。
しかしながら現在は、ペット流通の都合で、生後2〜3カ月で親元から離されて販売され、人間の家庭で飼育されるケースが増えています。社会化期に必要な集団生活を経験することなく、また母犬や父犬からの教育を十分受けられず、結果としてコミュニケーション能力に欠け、飼い主さん以外の人やほかの犬と仲良くできない犬が増えているのです。
犬でも人間でも、父親がうまく機能していない家庭は不安定になりがちです。犬を飼育するうえでは、こうした父犬の不在を飼い主さんが補ってあげる必要もあるかもしれません。昨今では、子犬の社会化を促すための場として、パピーパーティーなども注目を集めています。もし月齢の幼い子犬を迎え入れることになった場合には、こういった施設の利用も含め、してあげられることを最大限考えたいものですね。
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