短いマズルにブラックのマスク、筋肉質で無駄のないボディが特徴のボクサーは、かつて猟犬や闘犬として活躍するために品種改良が行われて誕生した、ドイツ原産の犬種です。ドイツで誕生したのちアメリカへと渡り、第二次世界大戦下ではアメリカの軍用犬としても登用された歴史をもつ犬で、その見た目とはギャップのある優しさと賢さを兼ね備えた犬として人気です。そんなボクサーですが、「ボクサー心筋症」とも呼ばれる不整脈を起こす心臓病を発症しやすい犬種であることをご存知でしょうか。

ここではそんなボクサーの歴史や特徴・性格・一緒に暮らす上での注意点・かかりやすい病気について詳しく解説します。

 

 

ボクサーの歴史

 

ボクサーは19世紀後半にドイツで誕生した、比較的新しい犬種です。

ボクサーは猟犬を祖先に持ちますが、走って獲物を追いかける一般的なスタイルの猟犬ではなく、猟師が到着するまでの間仕留めた獲物に咬み付いて押さえつけるという危険な仕事を任された「ブレインバイザー(牛咬み犬)」と呼ばれる猟犬でした。ブレインバイザーは、グレート・デンやブルドッグなどを交配して生み出されたマスティフ系の狩猟犬で、獲物を捕らえる大きくて頑丈なアゴ、しっかりした歯列、咬みつき続ける持久力、飼い主への服従性など、猟のスタイルに適合するよう猟師たちの間でさらなる品種改良が繰り返され誕生したのがボクサーです。そしてその強さは、当時流行していた闘犬でも使われるようになり、1835年にイギリスで闘犬が廃止するまではボクサーは闘犬としも活躍していました。

1905年頃にドイツで公式に犬種として登録されたことをきっかけにボクサーは世界へと広まり、第二次世界大戦ではアメリカの軍用犬としても登用されました。終戦後は、家庭犬としての需要が高まり、日本でも家庭犬や警察犬として多くのボクサーが愛されています。

 

 

ボクサーの特徴

 

ボクサーは使役犬・護衛犬のグループに属する大型犬です。

全身が筋肉質で引き締まった頑丈な体をしており、大きな頭とアゴが特徴です。アゴは下アゴが出ているアンダーショットで、マズルは短めの短頭種です。

 

大きさ

ジャパン・ケネル・クラブ(JKC)では、以下のように規定しています。

オス:体高57〜63cm、体重30kg以上(体高約60cmに対して)

メス:体高53〜59cm、体重約25kg(体高約56cmに対して)

 

被毛

ボクサーは短く滑らかなシングルコートの被毛を持つ犬種です。

毛色は、子鹿のような明るい黄色の「フォーン」と、虎のような模様の「ブリンドル」があります。

フォーンの色合いは様々で、薄めのフォーンから濃いめのディアー・レッドまでありますが、その中間のレッド・フォーンが最も美しいとされています。口の周りが黒い「ブラック・マスク」が特徴で、所々に白い斑が入っているカラーも魅力的だと言われています。

 

寿命

ボクサーの平均寿命は10〜12歳とされています。

 

断尾・断耳

ボクサーはもともと狩猟や闘犬のために改良された犬種のため、相手に尻尾や耳を咬まれたりして弱点となる部分を極力減らすよう、断尾や断耳が習慣的に行われてきた歴史を持ちます。しかし現在では動物愛護の観点から、ヨーロッパをはじめとする多くの国で断尾・断耳は禁止されています。日本では現在禁止する法律はありませんが、ボクサーらしいとされる見た目以外に断尾や断耳が必要な理由はないため、日本でも行わない流れになってきています。

 

 

ボクサーの性格

いかつい見た目で誤解されがちなボクサーですが、実はとても明るく愛情深い犬種です。

家族に対しては非常に穏やかで、信頼関係を築くことができれば最高のパートナーとなる素質を持っています。しかし、やや保守的で真面目な性格なため、見知らぬ人や動物には警戒心を示し、慣れるまでは接触させないよう注意が必要です。

 

 

一緒に暮らす上での注意点

室内飼育が必須、熱中症に注意

ボクサーは短毛のシングルコートの被毛なので、夏の暑い日差しも冬の寒さも苦手です。飼育はエアコンの効いた室内で、特に夏は熱中症にならないよう気温と湿度を適切に管理してあげましょう。

 

運動欲求の高い犬種

ボクサーは運動が大好きな犬種です。散歩は1日2回・1回1時間以上を目安に行い、時にはボール遊びやアジリティなども取り入れて、頭と体を存分に使わせることで満足感が高まります。

ただし、暑さに弱い短頭種のため、夏は散歩や運動の時間・タイミングに注意しましょう。

 

子犬期からのしつけが重要

家族には穏やかに接することのできるボクサーですが、本来は狩猟・闘犬のために生み出された犬種のため、突発的に攻撃性が出てしまうこともあります。知らない人や動物に対して咬みついたり、じゃれているつもりでも力が制御できなかったり、思わぬ事故や怪我に繋がる危険があるので、日頃から飼い主の指示にすぐに従えるようトレーニングを行いましょう。

特に子犬期から様々な人や場所に慣れさせて社会性を育むことや、興奮してしまった時でもすぐにクールダウンさせらるような訓練はとても重要です。

 

 

かかりやすい病気

不整脈源性右室心筋症(ボクサー心筋症)

ボクサーやブルドッグに多い、不整脈による失神や突然死を起こす心臓病です。

3歳以上の中〜高齢で発症し、主に心臓の右心室の心筋細胞が脂肪や線維などの他の組織に変わってしまうことで不整脈や心不全などを起こします。ボクサーではオスに多い傾向があります。

不整脈源性右室心筋症を発症すると、疲れやすい・散歩を嫌がる・安静にしていても呼吸が荒い

などの症状が見られ、重度の不整脈を起こしている場合には失神や突然死を引き起こす危険性があります。

ボクサーでは特に発生が多いことから「ボクサー心筋症」とも呼ばれ、遺伝的な関連も疑われていますが、残念ながら有効な予防法はありません。そのため、早期発見・早期治療がとても重要になります。聴診や心電図、X線や超音波などの画像検査を若いうちから定期的に受けるようにしましょう。また、ホルター心電図検査といって、犬に持ち運び用の心電図を装着して、24時間連続して心電図を記録する検査も、この病気の発見には有効です。

治療には、抗不整脈薬や心臓の負担を和らげるための薬を状態に応じて組み合わせる内科治療を行いますが、完治することはなく、突然死を起こさせないために運動や興奮を避けながら生活するなどの対応も必要となります。

 

拡張型心筋症

心筋が何らかの原因で薄くなってしまうことで、心臓の収縮力が低下してしまう病気を拡張型心筋症といいます。ボクサーやレトリバーなどの大型犬に多く、発症すると咳が出たり、疲れやすくなるなどの症状が見られます。進行すると、元気や食欲の低下、ふらつき、失神、不整脈を起こす場合もあり、重度なものでは突然死を引き起こす危険性があります。

拡張型心筋症の治療は内科治療が中心です。心臓の収縮をサポートする強心薬や、全身の血管を広げて心臓の負担を減らす血管拡張薬、おしっこを出しやすくする利尿薬など、心臓の状態に合わせて様々な薬を組み合わせて使いつつ、激しい運動や肥満に気をつけながら生活します。

残念ながら予防できる病気ではないので、定期的な健康診断を受け、病気を早期に発見することが重要です。

 

食物アレルギー

ボクサーは食物アレルギーの好発犬種として知られ、年齢や性別に関係なく発症しますが、特に1歳未満での発症が多いとされています。

犬の食物アレルギーは、体内で食べ物や添加物への過剰反応が起こることで、さまざまな皮膚症状や消化器症状を引き起こす病気です。原因の多くは食事中のタンパク質で、中でも肉類(牛・鶏)、卵、乳、穀物類(トウモロコシ・小麦・大豆)などが代表的なアレルゲンです。アレルゲンとなる食べ物を摂取してった犬は、皮膚の痒み・赤みなどの皮膚症状や、下痢・嘔吐などの消化器症状を起こし、特に口や目の周り・肉球の間・肛門の周囲などを痒がる傾向が強いと言われています。

アレルゲンを特定するのは非常に困難なため、一般的に食物アレルギーが疑われる場合には、アレルゲンが除去されたドッグフードのみを1〜2ヶ月間与えて症状や反応をみる「除去食試験」が行われます。除去食試験で症状が一旦落ち着いたら、その後通常の食事に戻してみる「負荷試験」を行い、症状が再発した場合に食物アレルギーと診断します。食物アレルギーと診断された場合には、アレルゲンが除去された除去食のみの食生活を続ける食事療法が中心となります。

このような食事療法の他に、皮膚に細菌などによる二次感染が見られる場合には抗生剤やシャンプーによる治療を、痒みや炎症が強い場合にはステロイド剤などを併用するケースもあります。

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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