人間と同じように、犬も熱中症にかかります。蒸し暑い室内や閉め切った車の中でのお留守番、激しい暑さの中でのお散歩は、熱中症を引き起こす可能性があるので、注意が必要です。
熱中症は対処が遅れると死に至るケースもあるため、絶対に軽視してはいけません。しかし、きちんと対処をしていれば防げるので、正しい知識を身につけて、予防を徹底することが大切です。ここでは熱中症のメカニズムから予防方法について解説します。
熱中症とは
からだが高温多湿な環境に適応できず、体温をうまく下げることができないでいると、全身の臓器の働きが鈍くなる障害を引き起こします。これを熱中症と言います。
いつ熱中症になるの?
犬の場合は6~8月の間、そして午前よりも午後のほうが熱中症にかかりやすいとされています。特に暑い日と涼しい日を繰り返す時期は注意が必要です。
高温多湿な環境に一定時間いると、からだは暑さに順応できるようになります。犬の場合、60日ほどでからだは暑さに慣れていきます。しかし、まだからだが暑さに順応できていない時期は、より低い温度で熱中症を発症しやすくなるので、特に初夏は気を付けなければなりません。
また、同じ気温であっても、湿度が高いか低いか、風があるかどうか、地面や建物からの放射熱があるかどうか等の要因も大きく影響します。無風状態で湿度が高い場合や、地面からの照り返しが強い場合も、より低い気温で熱中症を引き起こしやすくなるため、気温以外の要因にも注意をする必要があります。
熱中症になるとどうなるの?
過度な運動をしたり、高温多湿な環境下に長時間いると、体温が上昇しますよね。人の場合は汗をかくことで体温調整をしますが、犬はハァハァという口呼吸(パンディング)によって体温調整を行います。しかし、パンディングだけでは追いつかないほどの熱が体内にたまってしまうと、からだは高体温の状態となってしまいます。からだを構成している細胞や臓器は、高体温の状態では働きが鈍くなるため、結果、全身の臓器の動きが鈍くなり、場合によっては死に至るのです。
熱中症の症状
初期症状の見分け方
体温が40~41℃以上に上昇し、呼吸数と心拍数が増加します。暑いところに連れだしたり、暑い日に閉め切った部屋などでお留守番させた後、なかなかパンディングがおさまらなければ熱中症にかかっている可能性があります。
熱中症ではなく、ただはしゃいでハァハァ言っている状態の場合は、自分でお水を飲みに行ったり、冷たい床におなかをくっつけたりして、ちょっと体を休めてからまた遊ぶ、等の調整ができます。犬がぼーっとしていて、ひたすらハァハァと荒い呼吸をしているようでしたら、熱中症にかかっている可能性が高いです。すぐに体を冷やし、早めに動物病院に連れて行って下さい。初期症状で対処ができれば助けられる可能性は非常に高いので、「熱中症かも?」と思ったら、躊躇しないで動物病院へ連絡しましょう。
重症化すると・・・
初期症状を見逃すと、以下のような症状がみられるようになります。
□下痢
□嘔吐
□ふるえ
□発作
□意識消失
どれか一つでも当てはまる場合は、かなり重症化していると考えられますので、即動物病院へ連れて行った方がいいでしょう。
非常に重症で死亡率が高くなる段階
尿が出なくなったり、血尿が出たりしている場合は、とても危険な状態です。熱中症が重症化して、腎臓に急激な障害が起こっている可能性があります。またその場合、腎臓以外の複数の臓器でも機能が低下していることが考えられるため、死に至る確率が非常に高い状態です。すぐに体を冷やし、即病院へ連れて行って下さい。
熱中症の治療方法
熱中症の治療は時間との勝負
熱中症は初期症状を見逃すとどんどん悪化します。症状が重くなればなるほど、獣医さんが助けられる確率も極めて低くなります。熱中症治療は時間との勝負ですので、早急な対応が必要となります。
熱中症の疑いが少しでもあるなら、すぐに動物病院へ連絡しましょう。病院に行く前に事前連絡を入れておくことで、病院側も受け入れ態勢を整えておくことができます。
治療方法について
熱中症の疑いがある場合は、からだを冷やす必要があります。涼しいところに移動させ、人肌程度の水で濡らし、扇風機で送風します。冷水や氷、アイスパック等の急な冷却は、体の表面だけを冷やして、体内を冷やすことはできないので、オススメしません。
体を冷やしながら病院へ向かいましょう。病院では、点滴で水分や薬剤を投与しながら、入院させることが一般的です。
予防
室内飼育の場合
閉め切った部屋で室温が高くなると熱中症にかかる可能性が高くなります。窓を開けて風が通るようにするか、クーラーを使って温度・湿度を管理してあげましょう。また、いつでも十分な水分をとれるよう、新鮮なお水をたっぷりと置いておく必要があります。
室外飼育の場合
暑い時期だけでも玄関先に避難させてあげると無難ですが、難しい場合は日よけや風通しの良いところを作ってあげて下さい。室内飼育と同様、きちんと水分補給ができる環境を整えてあげましょう。
散歩に行く場合
暑い時間、湿度が高いとき、道路の照り返しが強いときの散歩はやめましょう。真夏のアスファルトは50~60℃にもなり、火傷の原因にもなります。朝早い時間か、日が沈んでからの涼しい時間帯に行くといいでしょう。また、お散歩のときも水分補給ができるよう、飲み水を持っていきましょう。
車に乗せる場合
車の中は気温が上がりやすいので、エンジンを切った車内に放置するのは夏以外でも危険です。車に乗せる場合はエアコンで車内を涼しく保ってあげて下さい。暑い中、エンジンを切った状態で閉めきった車内に置いていくのは絶対にやめましょう。
普段から体温を測れるようになっておくとベスト
犬の体温を測るときは、専門の体温計を肛門内に差し込んで測ります。おうちでも体温を測れるようになっていれば、犬がハァハァと荒い呼吸をしているとき、すぐに体温を確認して、ただのパンディングなのか、熱中症の前兆なのかを見極めることができます。犬の平熱(直腸温)は37.9℃~39.9℃ですので、それ以上の体温があれば熱中症にかかっていると考えられます。
熱中症にかかりやすい犬種
大型犬
ゴールデンレトリーバー、ラブラドール等の大型犬は、小型犬に比べて体温を下げにくいので注意が必要です。長距離のお散歩に出かけることが多いと思うので、お散歩に出かけるときは必ず飲料水を持っていきましょう。
短頭種(鼻の低い犬種)
シーズー、ペキニーズ、パグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、ボクサーなどは、鼻の穴が小さかったり、喉の入り口が狭かったりすることが多く、息の通り道が狭い構造になっています。
パンディングをして鼻や口の中を息が通ることで、粘膜上の水分を蒸発させ、体温を下げる仕組みになっているのですが、短頭種は息の通り道が狭い分、熱放出の効率が悪く、高体温状態に陥りやすいのです。
疾患を持っている犬
以下の疾患を持っている犬も、通常の犬に比べて熱中症にかかりやすいので注意が必要です。
□ 呼吸器疾患
□ 心臓疾患
熱中症で動物病院を緊急に受診する犬の死亡率は約50%との報告もあります。きちんと対策をしていれば熱中症にはかかりませんし、もし発症してしまったとしても、初期症状のうちにしっかり対策をうっていれば助けられることがほとんどです。ただ遊び疲れてハァハァ言っているだけなのか、初期症状が出ているのかは正しく見極めて、愛犬を熱中症から守ってあげましょう!
「熱中症」に関する獣医師監修記事
■ 対策:熱中症は命を落とす危険も!犬の熱中症対策や予防法とは?
■ 初期症状:人間よりも暑さに弱い犬。熱中症になると命を落とす危
■ スポーツドリンク:犬の熱中症対策にスポーツドリンクは効果があ
■ 応急処置:犬が熱中症になったときの応急処置の方法は?まずは、
■ 車対策:犬と車でお出かけする場合の、車内や車外での熱中症対策
■夏の散歩:夏は犬の散歩に要注意!熱中症にならないための対策
■ 要注意な犬種:犬の熱中症は命の危険も!
■ 家づくり:愛犬と暮らす家づくり~夏の暑さ対策編
■ 調査結果:愛犬・愛猫の熱中症対策どうしてますか?
■ 危険温度:危険温度!気温が何度以上になると犬は熱中症になる?
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☞例えば、下記のような切り口から、
【治療面】■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり
【対象】■ 子犬に多い ■ 高齢犬に多い ■男の子に多い ■女の子に多い ■ 大型犬に多い ■小型犬に多い
【季節性】■春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい
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【費用面】 ■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額
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