警察犬や麻薬探知犬として世界中で活躍しているドーベルマン。その歴史はドイツの護衛犬として
スタートしました。ドーベルマンといえば、ピンと立った耳や短い尻尾をイメージされる方も多いかと思いますが、実はあの耳や尻尾は生まれながらの形ではなく、人工的につくりだされていることをご存知でしょうか。
ここではそんなドーベルマンの歴史や特徴、性格、一緒に暮らす上での注意点、かかりやすい病気について詳しく解説します。

ドーベルマンの歴史

ドーベルマンは19世紀後半にドイツで誕生した比較的新しい犬種です。
同じドイツ発祥のジャーマン・ピンシャーを基礎に、ジャーマン・シェパード、ワイマラナー、グレーハウンド、ロットワイラーなど複数の犬種を交配して生み出され、最初の繁殖者であるフリードリッヒ・ルイス・ドーベルマン(1834〜1894年)の名前から「ドーベルマン」と名付けられました。税金を徴収する仕事をしていたドーベルマン氏は、普段から金銭を持ち歩くことが多く、パートナーとして優秀な護衛犬を生み出すために繁殖を試みました。こうしてつくられたドーベルマンは護衛犬としての能力が高く評価され、1900年にはドイツのケネルクラブに犬種として公式に認定。瞬く間に世界中で警察犬や軍用犬として採用されるようになり、日本へは1930年代に軍用犬としてやってきたのがはじまりだと言われています。現在でもその高い能力を活かし、軍用犬や警察犬、麻薬探知犬などとして活躍しています。
ちなみに、「ドーベルマン・ピンシャー」と「ドーベルマン」は同じ犬種のことを指します。ヨーロッパをはじめとする世界的な流れは「ドーベルマン」に統一されつつありますが、アメリカではドーベルマン・ピンシャーという犬種名で登録されています。また、色や形のよく似た小型犬である「ミニチュア・ピンシャー」は、ドーベルマンを小型化した犬種と誤解されがちですが、全く異なるルーツを持つ犬種です。

ドーベルマンの特徴

大きさ

ドーベルマンは成犬時の体重が30〜45kg程度の大型犬に分類されます。
JKC(ジャパン・ケネル・クラブ)では、標準体高はオスで68〜72cm、メスで63〜68cmと規定しています。

被毛・毛色

ドーベルマンの被毛は艶のある短毛で、上毛のみから成るシングルコートの犬種です。
毛色は「タン・マーキング」と呼ばれる赤褐色のマーキングを持つ毛色が一般的で、ブラックやブラウンを基調にした「ブラック&タン」や「ブラウン&タン」が公認のカラーです。タン・マーキングは頬や眉の上、喉、胸、四肢の内側や尻尾の裏などに見られます。
この他には、全体的に色が薄い「ブルー」や「イザベラ」、白い毛色の「アルビノ」の個体も存在しますが、これらは色素欠乏により健康上の問題が起こりやすいため、公式には認められていません。

断耳・断尾

長い四肢に引き締まった体をもつドーベルマンは、「尖った立ち耳」と「短い尻尾」が見た目の特徴に挙げられますが、生まれたばかりの子犬はこのような尻尾や耳ではありません。
ドーベルマンの子犬は他の犬種と同じくらい長い尻尾と、顔の半分程度の長さの大きな垂れ耳を持って生まれてきます。尻尾は生後3日以内に、耳は3ヶ月以内に手術をし、耳はさらに綺麗に立つように長期間固定することで、あの姿は完成します。

ドーベルマンが断尾や断耳をされるようになった理由は、護衛犬としてつくられた歴史に関係しています。長い尻尾や耳は、何かに襲われた時に噛まれたり踏まれたりして弱点となりやすく、警察犬や軍用犬として活躍するようになってからはより聴覚を高めさせるためには垂れ耳よりも立ち耳の方が優れているとされてきました。

このような背景から、長い間断尾や断耳が行われてきたドーベルマンですが、家庭犬としての人気も高い現代では「ドーベルマンといえばこの耳と尻尾!」という見た目上の理由が大半を占めているため、動物愛護の観点から原産国であるドイツやヨーロッパ諸国では断尾・断耳が禁止されています。                                                                                                                        

寿命

ドーベルマンの平均寿命は、10〜13年と言われています。

ドーベルマンの性格

ややイカツイ見た目から凶暴そうなイメージを持たれがちですが、実はとても優しく穏やかな性格をしています。学習能力に優れ、家族への愛情も深いため、信頼関係を築くことで最良のパートナーとなることができるでしょう。
ただし、家族や家への防衛本能が強いため、見知らぬ人や侵入者に対しては強い警戒心を示すことがあります。そんな時には飼い主さんの一声で落ち着きを取り戻せるよう、日頃からのトレーニングはとても重要です。

一緒に暮らす上での注意点

トレーニングは必須

賢く優しいドーベルマンですが、防衛本能が強く大型犬ならではのパワーと俊敏性がある犬種のため、見知らぬ人や予期せぬ動きをする動物に飛びかかってしまうなどの事故が起こる可能性があります。そうした事故を防ぐため、日頃からトレーニングをし、信頼関係を築くことがとても大切です。学習能力や探究心も高いため、トレーニングには前向きに取り組み、物覚えもとても早い犬種ですが、初めて犬を飼う方にはハードルの高い犬種です。

十分な運動が必要

筋肉質なドーベルマンは、十分な運動量が必要な犬種です。持病などがない限り、最低45分〜1時間程度の散歩を1日2回を目安に、また時々はドッグランやアジリティなどで思いきり走らせてあげると良いでしょう。

食事の与え方にもひと工夫

ドーベルマンは胃拡張・胃捻転症候群という緊急疾患を起こしやすい犬種です。(下記参照)
この病気は、食事の早食いや一気食い、食事直後の運動などがリスク因子となるため、食事は1日2回以上の小分けにし、散歩や運動は食後を避けて行うようにしましょう。

被毛のお手入れは優しく

ドーベルマンは毛が短く、毛の層も薄いシングルコートのため、皮膚は敏感になりがちです。シャンプーは月1〜2回を目安に、乾燥予防のため保湿剤なども併用すると皮膚のコンディションを整えてあげることができます。
ブラッシングにはラバーブラシや獣毛などの柔らかいブラシを使い、優しく撫でてあげましょう。

かかりやすい病気

胃拡張・胃捻転症候群

大型犬に多く、早急に処置をしないと命を落とす危険性のある緊急疾患です。
胃がガスでパンパンに膨れ(胃拡張)、捻れてしまう(胃捻転)病気で、胃が捻転すると次第にショック状態となり死に至る可能性があります。食後3時間以内にお腹が急に膨れる・えずく・お腹を痛がる・ゲップやよだれが頻繁に出る・呼吸が苦しそうなどの症状がみられたら、すぐに動物病院に連絡しましょう。明らかな原因は解明されていませんが、食事の早食い、水の一気飲み、食事直後の運動などがリスク因子となります。

ウォブラー症候群

ウォブラー症候群とは、頚椎すべり症・頚部脊椎不安定症・後部頸髄狭窄症などさまざまな名称で呼ばれる頚椎(首の骨)の病気です。頚椎の奇形や頚椎が不安定なことが原因で、頚部の脊髄を圧迫して起こる頚部痛や跛行、四肢の麻痺などの症状を引き起こす症候群のことをいいます。大型犬や超大型犬でみられ、特に中高齢のドーベルマンと若齢のグレート・デーンで多く発生します。
ウォブラー症候群では、ふらつき・後ろ足の踏ん張りがきかない・後ろ足が開いてしまう・頭を上げられない(頚部痛)などの症状が見られ、「Two engine gait」と呼ばれる前足と後ろ足の歩幅が揃わない特徴的な歩き方をする場合もあります。
ウォブラー症候群の治療には、運動制限やステロイド療法などの内科治療と手術による外科治療がありますが、多くのケースで慢性進行性の経過をたどり、重度の場合には歩行や起立が困難になることもあります。

拡張型心筋症

拡張型心筋症は犬の心筋症の中では最も一般的な心筋症で、心臓の筋肉に異常が起こり、収縮力が弱まってしまうことで血液をうまく送り出せなくなってしまう病気です。ドーベルマンやボクサー、グレート・デーンなどの大型犬に多く、中でもドーベルマンは遺伝することが明らかになっています。
拡張型心筋症は初期段階では目立った症状がありませんが、進行すると食欲低下や体重減少が見られたり、散歩にあまり行きたがらない・疲れやすい・咳が出るなどの症状が見られます。重症化すると、肺水腫(肺に水が溜まる)や胸水・腹水の貯留、不整脈、呼吸困難などが見られ、命に関わる危険性があります。
拡張型心筋症の治療は、心臓の状態に合わせた内科治療が中心です。拡張型心筋症を予防する方法は残念ながらありませんが、病気が進行する前の早期発見・早期治療がとても重要な病気なので、ドーベルマンを家族に迎えたら、最低でも半年に1回以上の健康診断や聴診を受けるようにしましょう。

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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