犬を飼うと毎日お散歩に出かけますよね。このお散歩、愛犬にとってどんな意味があるのでしょう?
実は単なる運動というだけではなく、お散歩には他にも大切な意味があるのです。ここでは、愛犬のために飼い主さんが心得ておくべきお散歩について紹介します!
愛犬にとっての散歩とは?
愛犬がお散歩することには3つの大きな意味合いがあります。
運動になる
お散歩の大きな目的の一つが運動であることは間違いありません。もともと自然界では、犬は餌を求めて走り回っているので、お家にばかりいると運動不足になってしまいます。
お散歩による運動は、
肥満の予防とそれによる糖尿病や関節炎などのリスクを減らしてくれる
だけでなく、
ストレス発散のためにも大切
なのです。 糖尿病については「犬の糖尿病ってこんな病気。症状、メカニズム、治療法を徹底解説!【獣医師が解説】」をご覧ください。
新しい刺激によって社会性が身に付く
お家の中で暮らしている犬の場合、基本的には常に同じ環境の中で生活しています。お散歩で外に行くと、知らない人や犬、車や大きな建物など様々なものに出会いますよね。お散歩を通じて、様々なものを見たり、匂いを嗅いだり、音をきくことで、やがて慣れて問題ないということを犬が理解できると、恐怖心も和らぎ、興奮したり吠えたりすることがなくなるのです。人や物に慣れていないと、動物病院やペットホテルを利用する時に怖がってしまいます。
お散歩は犬が外の環境に慣れる「社会化」に非常に有効
なだけでなく、毎日繰り返す日々の中で刺激になり、ストレス発散の効果も期待できます。
飼い主さんとのコミュニケーション
お仕事などで忙しい飼い主さんは、お家の中で一緒にいても愛犬をかまってあげる時間が多くはとれませんよね。お散歩は
愛犬が飼い主さんと1対1でコミュニケーションを取れる貴重な場
です。犬たちもただ歩ければ満足というわけではありません。飼い主さんと一緒にお出かけできることがうれしいのです。スマホを片手にお散歩をしているという飼い主さんは、愛犬とのお散歩の時間にはきちんとコミュニケーションを取るようにしましょう。また、
お散歩を通して初めて愛犬の体調不良に気づく
こともあります。「なんとなく動きが遅いな」とか「足をかばっている」、「すぐに疲れてしまう」などの異常は、普段の生活では見えにくいものだったりします。愛犬の体調のバロメーターとしてもお散歩は役立ちます。
お散歩は犬のストレスを発散し、体調の管理をしてあげるためにも重要なものです。飼い主さんは犬のお散歩の意味を理解し、犬もヒトも楽しく散歩ができることが理想です。
*こちらの記事も併せてご覧ください!⇒「作業的なお散歩はやめて!愛犬が喜ぶお散歩とは【獣医師が解説】」
初めてのお散歩はいつ頃からするもの?
お散歩を始める時期は重要です。ワクチンを完了していない子犬にお散歩をさせると、恐ろしい感染症にかかってしまう可能性があります。おうちの外には犬や猫を媒介して感染するウイルスがたくさんあり、中には致死率が非常に高い、怖ろしいウイルスも存在するのです。
それらのウイルスがお散歩中に子犬に感染してしまうと、免疫力の低い子犬は耐えることができず、死に至る可能性もあります。
しっかりしたお散歩は、ワクチンプログラムが終わってから
にしましょう。
ただし、ワクチンプログラムの終了を待っていると4~5カ月齢になってしまうことがほとんどでしょう。子犬にとって、4カ月齢位までは社会性を身に付けるのに非常に重要な時期。この「社会化期」と呼ばれる時期にいろいろなモノを見たり聞いたりすることで、物事に対して必要以上の警戒心を起こさないようになります。ワクチンプログラムが終わるまでお家の中だけで過ごしてしまうと、その子の社会化期を逃してしまうことになるのです。
そこでぜひ実行してほしいのが、抱っこしながらのお散歩。他の犬との接触がなければ感染症にかかるリスクは非常に少ないです。できるだけ外の環境に慣らすために、
小さいころから抱っこをしてあげて、外にお散歩に行ってください。
その場合、最初は短時間から始めて徐々に距離や時間を伸ばしていきましょう。子犬のお散歩は、感染症のリスクと社会化の重要性のバランスを取りながら行うようにしましょう。
お散歩デビューの方法
とはいえ、初めてのお散歩は子犬にとって未知のものばかりです。首輪やリードといった見たことのない道具、大きな音を立てて走る車、たくさんの人たち、知らない道や建物。いきなりそんな場所に連れて行けば怖がって何もできなくなってしまいます。お散歩はいきなり無理をするのではなく、徐々に慣らしてあげることが大切です。
お散歩デビューの前に
まずはお散歩に行く前に、首輪とリードをつけて歩くということを、お家の中で慣れさせておきましょう。子犬の性格にもよりますが、お家に迎えてだいたい1週間も経てば環境に慣れてくるので、その時期くらいから首輪やハーネスとリードをつけて家の中を歩かせてみてください。
お家に来て2週間くらい経ってから、無理しない程度に抱っこのお散歩も始めて行きましょう。徐々に、外の世界に慣らしていきます。
*こちらの記事も参考にしてみてください!⇒「首輪とリードに慣れてもらうには?【獣医師が解説】」
最初のお散歩は家の近くから始める
外のお散歩をさせる場合は、初めは家の近くの静かな場所で、短時間の散歩をすることから初めてください。好きなおやつやフードを持って行き、お散歩中に少し与えることで、家の外でもいいことがあると覚えてくれますよ。外の環境に慣れてきたら、徐々にお散歩の範囲を広げていきましょう。
お散歩の注意点
怖がる愛犬を無理に引っ張ると余計に怖がってしまい、お散歩やリードへの恐怖心が強くなってしまいます。怖がっている場合は無理に散歩させず、おやつを使ってうまく歩かせるようにしましょう。それでも歩かない場合は、その日は無理をせず抱っこしてお家に帰ってください。愛犬のペースに合わせて徐々にお散歩のペースや距離を伸ばしていくことが大切です。
どれくらいお散歩が必要なのか?
飼い主さんからよく「お散歩の時間はどれくらい行くべきなのか?」という質問を受けることがあるのですが、体の大きさや体力は犬によってもバラバラなので、一概には言えません。超小型犬と言われるチワワやトイプードルでも、1㎏の子もいれば3㎏の子もいて大きさはさまざま。また、大きさが同じでも、ボーダーコリーのようにもともと広いフィールドを走り回っている犬と、バセットハウンドのようにおっとりしている犬ではお散歩の必要量は違います。お家の中で走り回ることができる場合、小型犬ならたくさんの距離のお散歩は必要ないかもしれません。その子に合ったお散歩の量を見極める必要があるのです。
お散歩が十分かどうか見分けるには
愛犬がお散歩に満足しているのか、お散歩の量が十分かどうかを判断するためには、犬の様子を観察することが大切です。
お散歩が十分に満足できた場合、犬はお家に帰ってウトウトしたり、落ち着いてくつろぐことが多い
です。一方、
お散歩が不十分で運動が足りない子は、お家に帰ってからも遊ぼうと誘ってくることが多い
です。 もしお家に帰ってもまだ体力が有り余っているようであれば、おもちゃを与えて遊ばせるのもいいでしょう。
逆に、お散歩中に息を切らしてしまったり、歩きたがらなかったり、お家に帰ってグッタリしている場合、お散歩が長すぎるのかもしれませんね。お散歩の時間を短くしてみたり、歩きたがらないときは無理に歩かせず抱っこして連れて帰ってください。
お散歩は、量だけでなく「質の充実」を
お散歩の量はその子に合わせて見極めることが大切ですが、お散歩の質についても考えてみてください。
お散歩は体を動かすだけでなく、頭もたくさん使っています。
お家の中では経験できないことを、外でたくさん経験させてあげることで社会化や頭の体操にもつながるのです。毎日同じコースをたんたんとお散歩するのではなく、人通りの多いコースや芝や砂利のコース、いろいろな動物のにおいのする場所、坂道や公園など、
新しい発見のある場所へ連れて行ってあげることも、愛犬のお散歩の満足度を上げるコツ
です。
雨の日や暑い日はどうするか?
雨の日のお散歩
雨の日には無理にお散歩に連れていく必要はありません。排尿排便をお家の中で済ませられる子で、本人がお散歩に行きたそうにしていなければお家で遊んであげてください。
ただし、運動量の多い子で、どうしてもお散歩に行きたがる子の場合は、飼い主さんがカッパを着てお散歩してあげてください。傘を差しながらお散歩をする場合には視界が悪くなるので、交通事故に十分気を付けてくださいね。犬はカッパを着る必要はありませんが、雨に濡れた場合は必ず乾かしてあげましょう。
雨の日の犬のお散歩に関する詳しいお話については、「雨の日の犬のお散歩、どうしてますか?」の記事もご確認ください。
暑い日のお散歩
暑い日の日中のお散歩は危険です。特に肥満動物・高齢動物・チワワやパグなどの短頭種は熱中症の恐れがあります。必ず涼しい時間に、休憩しながら水分摂取をしっかりさせてお散歩してあげてください。
一方で、犬は寒さには比較的強いのですが、特に心臓が弱い犬の場合は注意が必要です。暖かい家の中から、いきなり寒い所に出ると血管が収縮して心臓へ負担がかかります。少しの間、玄関などで外の寒さに体を慣らしてから出発するようにしましょう。
お散歩に必要な道具は?
マナーを守ってお散歩するために必要なものは、忘れずに持って出かけるようにしましょう。
首輪/ハーネス(胴輪)
リードをつけるためには必須の道具です。首輪とハーネスにはそれぞれメリット・デメリットがあり、愛犬に合わせたものを選ぶようにしてください。首輪とハーネスのメリット・デメリットはこちらの記事も参考にしてくださいね。
リード
路上でのノーリードによるお散歩は認められていません。他人や他の犬を噛んでしまったり、交通事故に遭った場合、リードが付いていなければ大部分の責任を負わなければなりません。愛犬を守るためにも、また、迷惑やトラブルを避けるためにも必ずリードは付けましょう。
迷子札
飼い主さんの住所か電話番号を書いた迷子札を首輪につけておくと、万が一リードが外れて迷子になってしまった場合に、保護してくれた人が連絡をしてくれます。必ずつけてください。個人情報が気になる人は、かかりつけの動物病院名と、苗字、犬の名前を書いておくといいでしょう。動物病院経由で連絡が入る可能性もあります。
トイレグッズ
お散歩でしたウンチは必ず持ち帰りましょう。ウンチを拭くためのお尻拭きシートやスコップ、ウンチを入れるための袋を入れたお散歩バッグを持っておくといいでしょう。
水
お散歩中に犬が飲むためと、尿を流すためにも水を持ち歩いてください。公園や民家の近くなどで尿をしてそのままにしておくと、強いにおいのもととなるのでエチケットとして尿を流す癖をつけましょう。また、夏場のお散歩には熱中症や脱水を避けるためにもお水を持っていき、途中で飲ませるようにしましょう。
犬のお散歩にしつけが必要なのはなぜ?
お散歩をうまくできるかどうかは、とても重要な問題です。お散歩をお利口にできる子なら良いのですが、吠えたりリードを引っ張ったりする子を、お散歩に連れて行くのは飼い主さんにとって一苦労ですよね。お散歩がうまくできる子の場合、お出かけや動物病院へ連れていくときもそれほど苦労しないことが多いです。小さいころからお散歩のしつけをすることは、将来の愛犬とのお出かけの際にとっても役立ちます。
基本的に、
お散歩は飼い主さんの主導で
行います。犬が行きたいところに飼い主さんが付いていくというお散歩スタイルは、お家の中の順位付けを狂わせてしまいますので注意してくださいね。飼い主さんの歩くペースに犬が合わせるようにし、犬が引っ張ったらリードを引っ張って止めるということを繰り返してください。
ただし、
犬が多少自由に動き回れる時間を作ってあげることも必要
です。広くて安全な場所ではリードを緩めて自由に動き回れるようにしてあげましょう。しつけと楽しみをうまく使い分け、オンオフのメリハリをつけてお散歩してあげることが大切ですね。
愛犬とのお散歩は、犬の飼い主ならではの醍醐味ですよね。実は、犬のお散歩が飼い主の健康寿命を伸ばしてくれるという報告もあるのです。犬も飼い主さんも楽しく健康的なお散歩ができるよう、いろいろと工夫してみてくださいね!
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