犬の骨折の初動

愛犬が骨折してしまった! そんなとき、病院までどうやって運べばよいか、応急処置をしたほうがよいのか、そして何よりも、大切な命への危険があるのかどうか。骨折の原因別に命への危険度と、合併症などのリスクを解説します。

 

 

骨折発生時に飼い主さんがすべき初動と考え方

 

●まずは緊急性の把握と、悪化の防止

 

命への危険は、どのくらい強い外力を受けたか

骨折は大きなケガであり、最悪の場合、亡くなってしまうこともあります。

死に至る可能性は「どのくらい強い外力を身体に受けたか」に依存

し、骨折と共に脳神経、内臓、筋、血管などに重大な異常が起こっている可能性を考えなければいけないケースです。

強い外力は、高所からの落下交通事故が代表的な要因です。強い外力には含まれませんが、咬傷による骨折は、骨折部位以外に咬み傷ができて、それが致命傷となる可能性があります。

命に関わるかどうかの目安となる表を以下に記載しました。強い外力を全身に受けて引き起こされる骨折は、より命の危険が高まりますこれらは、あくまで目安であるためどんな場合でも動物病院へ来院してください。

 

骨折要因を把握することは、骨折自体の治療だけでなく命に関わるか否か判断するために大切な情報ですので、できるだけ詳しく正確に先生にお伝えいただくことが重要です。

 

命の危険

合併症

骨折要因

頭部外傷

肺挫傷

気胸

血腹

泌尿器損傷

(膀胱破裂など)

高所落下(3階以上から落下など)

交通事故

咬傷事故

 

脊髄損傷

軟部組織損傷

(切り傷など)

高所落下

交通事故

咬傷事故

落下(飼い主様の胸元から、椅子から落下など)

自力運動(ジャンプして着地失敗など)

※これらは、あくまで目安であるため、どんな場合でも動物病院へ来院してください。

 

特に命の危険度が高と中に含まれる骨折要因のような事故にあってしまった場合は、骨折をしていなかったとしても、

骨折ではない大きな病気が隠れている可能性がある

ため、一刻も早く診療をしてくださる動物病院にお連れになることが賢明です。

 

 

●骨折していなそうでも必ず動物病院へ

一方、骨折してしまったかどうかが不明瞭な場合もあります。骨折していて何日か経つと足をつき始めてしまうことがあり、このような骨折では、おおむね(上記の表の)命の危険度が低い骨折要因によって引き起こされます。

何もしないと骨変形し、生涯不安を抱えることになります。

骨折は、骨が正しい位置に安定していない限り、何もしないまま骨が癒合した場合を含め、骨の変形を生み、関節に炎症を起こしたり、靱帯などを傷めるようになってしまいます。

そうなると特殊な骨の形態を変える手術を行うか、行わない場合は一生涯不安を抱えてしまうことになります。これらのことから、命の危険があると推測されない骨折要因でダメージを負ってしまった場合であっても、可能なかぎり早く動物病院への受診をお勧めします。

 

 

飼い主さんができる応急処置とは

●整形専門医が推奨する骨折の応急処置

前項の通り、外傷を負ったら、即座に動物病院にお連れになることが大切です。ただし、「その前に何かやってあげたい」というご質問を飼い主さまから頂戴することがままあります。

ワンちゃんは骨折の激痛のため、応急処置中をする飼い主さんに噛みついてしまう可能性

もありますので、

決して無理はせず、難しそうであれば『応急処置を行わず』に動物病院へ

お連れください。

 

応急処置を行う目的としては、

骨折部を安定化させ痛みを軽減すること

②周囲組織の損傷などの症状悪化を防ぐこと

です。

 

●処置を受け付けず、攻撃的になることもあるので、『外部刺激を減らす』こと

後述する添え木を含め、何らかの処置を受け付けない場合もあります。ワンちゃんは、激しい痛みにより攻撃性を持ってしまい、意図せず反射的に飼い主さんに攻撃を加えてしまうことがあります。ケガをしてしまったワンちゃんに対しての応急処置は慎重に行い、難しい場合は決して無理はせず動物病院へお連れいただくことを優先してください。

攻撃性を持ってしまった場合、過度な声がけは逆効果

になります。そこで、

キャリーケースに入れてさらにタオルや厚手の毛布などでカバーし、外部刺激を減らす

ことで、落ち着いてもらえるように努めましょう。

そして、もし可能な状態である場合には、次のような応急処置が考えられます。

 

 

●体の中心から遠い手先足先の骨折

体の中心から遠い、手足、足先の骨折の場合には、

割り箸とタオル・ハンカチを用いる添え木

が有効です。

割り箸

ハンカチ

 

添え木が有効となるためには、

折れた骨の上下の関節も同時に固定する必要

があります。体幹に近い関節(肩関節、股関節)の固定は不可能であることから、上腕骨、大腿骨より体の中心に近い骨には無効です。

 

●骨折を疑う部位が体幹に近い場合

骨折を疑う部位が体幹に近い場合は、以下の2パターンの対応が望まれます。

 

1番目は、動物が自分自身で起き上がれる場合です。

できるだけ、安定した状態で移動することが望ましいため、

 

□ キャリーケースなどに入れて移動

 

してあげましょう。この際に、あまり

 

□ 隙間がないようにタオルなどの柔らかいものを詰めてあげる

 

ことで、キャリーケースの中で安定して動くことがなく移動することができます。大型犬は、抱き上げて車に乗せる必要があります。抱き上げる際の注意点は、折れている箇所によって異なりますので、病院の先生の指示を仰いでください。

 

 

2番目は、触れることも難しくなっているような状態です。

この状態であると、抱き上げることも困難であり、大型犬であると、移動自体が困難になります。

このような状態でも、

 

□ 大型のタオルを敷きその上に動物を乗せて、担架のように使用

 

すると、安全に移動が可能となります。

背骨の骨折の場合は、背骨が動かないようにする必要があるため、

 

□ 板などにタオルをガムテープなどであらかじめ貼り付けておく

 

必要があります。

 

患部を冷やすと腫れを抑えるのに有効だが適切な処置が難しい

患部の冷却は、腫れを抑えることに有効です。ただし、動物の場合は骨折箇所に適切に冷却剤を保持することが難しい場合が多いと感じるため、あまり現実的な応急手当てではないと考えています。

 

 

症状の見極め方

 

●病院に行く前に、折れているかどうかを見極めるには?

骨折しているか否かを、病院に到着する前に知りたいと思われる飼い主様が多くいらっしゃると思います。

四肢の骨折であれば、折れている箇所から先がブラブラになることが多いため、判別がつきやすいでしょう。

また、尾の骨折もその形態が明らかに変化するためわかりやすいものと感じます。

ただし、典型的な症状を見せるばかりではないことから、同じ外傷で引き起こされたとしても、骨折と捻挫と脱臼の見極めは、身体検査だけでは難しく、X線検査などの画像診断に頼ることが多くあります。

 

ただし、多くの場合、

 

骨折:その罹患部位の周囲を触るだけで痛がる。

捻挫:受傷部位の周囲を触ることで痛がることは少ない。

脱臼:足がぶらぶらになるより、どちらかというと足を挙げ地面につけない動作(完全挙上)をし、少しでも患部を動かすと強い痛みを示す。

 

ことが多くあります。膝蓋骨脱臼は種々の症状を呈するため、例外と考えます。

 

 

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動物整形外科の専門医・木村太郎先生監修『犬の骨折』記事

第1回:動物整形外科専門医の視点で語る『愛犬を骨折させてはいけない理由』

第2回:視覚とデータで理解!『骨折の原因』を徹底排除   

第3回:骨折発生! もしかして骨折_ を含めた応急処置と対処法 (本稿)

第4回:動物の整形外科とは?~骨折治療の得意な先生の探し方ヒント

第5回:骨折の定義と、部位別の原因・症例・治療法~完治まで

第6回:骨折の治療法完全ガイド

第7回:⾻折で発⽣する後遺症と合併症

第8回:骨折しやすい犬種の理由として考えられること

 

アイペット獣医師による【うちの子 HAPPY PROJECT】の骨折対策

飼い主さんの「あのとき知識があれば防げたのに…」といった後悔や、ワンちゃん、ネコちゃんの痛みを無くしたいという“想い”で始まったアイペット損保の獣医師チームによる【うちの子 HAPPY PROJECT】では、今日から実践できて、すぐに役立つワンちゃん、ネコちゃんの病気・事故対策をご紹介しています。『骨折』に関する記事は、こちらをご覧ください。

 骨折経験者のホンネ

◇ 飼い主さんが知っててほしい3つのポイント

◇ 今日からできる骨折対策

 

★「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典『うちの子おうちの医療事典』をご利用ください。

うちの子おうちの医療事典

例えば、下記のように『骨折の特徴』と似た病気やケガを、さまざまな角度で知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

□ 子犬に多い

□ 小型犬に多い

□ 緊急治療が必要

□ 手術での治療が多い

□ 手術費用が高額

□ 専門の病院へ紹介されることがある

□ 後遺症が残ることがある

□ 長期の治療が必要

□ 予防できる

 

犬の骨折に関する解説はこちらをご覧ください。

■ 骨折

 
動物外科診療室 東京(VST)院長 木村動物病院 院長

木村 太郎

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