秋田犬と書いて「あきたいぬ」と読みます。渋谷駅前にある有名な「忠犬ハチ公像」のモデルとして知られる秋田犬。近年ではフィギュアスケートのザギトワ選手に贈られたり、奇跡のブサカワ犬と呼ばれた「わさお」なども注目を集め、日本原産犬として世界中で人気の犬種ですが、その歴史は戦争抜きには語れないものがあります。また、見た目は柴犬に似ていますが体格はとても大柄で、飼育する上で気をつけなければならないポイントも。

ここではそんな秋田犬の歴史や特徴、性格、一緒に暮らす上での注意点やかかりやすい病気について、詳しく解説します。

歴史

 

秋田犬は1931年に、はじめて日本の天然記念物に指定された犬種です。

 

秋田犬の祖先は、秋田をはじめとする東北地方でクマやイノシシの狩猟に使われていた犬「マタギ犬」であったと考えられています。江戸時代に闘犬としてマタギ犬を元に交配が行われ、明治時代に入るとより強くて大きい犬を作るために、マスティフや土佐犬、グレートデンなどの大型犬とも交配されるようになりました。大正時代の1916年に闘犬が禁止されると、秋田犬の繁殖が減り存続の危機に瀕しますが、愛好家や研究者たちによって秋田犬の新たな標準が模索され、天然記念物保存法の指定動物登録を目的に改良が進められるようになりました。なかなか標準の外貌に定まらず、一時は登録が見送られてしまいましたが、改良努力の末に1931 年に天然記念物「秋田犬」として登録されることとなりました。かの有名な忠犬ハチ公が話題となったのもこの時期で、1934年には渋谷駅前に忠犬ハチ公像が設置されました。

 

しかし、世界大戦の戦禍に秋田犬も巻き込まれることになります。忠犬ハチ公像は設置からわずか数年後に、金属供出のため撤去され、機関車の部品へと溶解されてしまいました。さらに戦時中は防寒のための毛皮の需要が高まり、軍用犬として活躍していたジャーマン・シェパード・ドッグ以外の犬たちは軍への供出を迫られました。どうにか秋田犬を残そうとした人々は、ジャーマン・シェパード・ドッグと交配させたり、犬を疎開させるなどひっそりと保存活動に励みました。終戦時に残っていた純粋な秋田犬はわずか20頭ほどでしたが、この犬たちを基礎に現在の秋田犬のスタンダードとなる犬たちが作出されていきました。

 

日本原産の秋田犬が海を渡るきっかけとなったのは戦後のこと。アメリカ軍帰還兵らによってアメリカに持ち帰られた秋田犬たちはジャーマン・シェパード・ドッグとの混血も多く、のちに「アメリカン・アキタ」という別の犬種として世界中で人気を博すことになります。

 

特徴

 

国の天然記念物として指定されている「日本犬」の中で唯一の大型犬で、その体格が最大の特徴です。長くがっしりとした脚に幅の広い腰、太くて上に巻いた尻尾を持ち、全身をもふもふの毛が覆っています。顔だけ見ると素朴な感じがありますが、全身のスタイルからは高い品位と威厳を感じさせます。

大きさ

JKC(ジャパンケネルクラブ)では、オスは体高67cm、メスでは61cmで、上下3cmまでは許容範囲と規定しています。

寿命

秋田犬の寿命は11〜13歳と言われています。

被毛

秋田犬のもふもふの被毛は、上毛と下毛で作られた「ダブルコート」という構造をしています。上毛は強くてまっすぐな毛質で、下毛は柔らかく密なのが特徴です。尻尾の毛は体よりも少し長いため、フサフサ感があります。

毛色は赤・虎(縞目)・白・胡麻があります。白以外の毛色では、裏白(顎〜胸、お腹、尾や脚の内側が白っぽいこと)でなければならないとされています。

 

性格

 

秋田犬の性格は、「沈着・忠実・従順」。忠犬ハチ公のエピソードからも分かるように忠誠心がとても厚く、家族には大変従順です。しかし少し神経質な側面も持つため、家族以外の人や他の動物には強い警戒心を持ちます。また、意にそぐわないことや興味を惹かれるものに出会うと、闘犬・猟犬時代の血が騒ぎ、凶暴さや頑固さが顔を出すこともあります。

 

しつけ

基本的には穏やかで物覚えも良いため、トレーニングに向いている犬種と言えます。ただし大型犬ならではのパワーを持つので、飼い主さんもそれに負けないパワーとリーダーシップが必要です。

秋田犬のしつけは子犬期がとても重要で、子犬期に家族とコミュニケーションを多く図ることや、様々な人や犬たちと出会う経験をすることで社会性を身につけることが大切です。プロのトレーナーさんと協力してトレーニングを行うのもおすすめです。

きちんと信頼関係を築きトレーニングを積めば、とても穏やかで優しい犬種ですが、初めて犬を飼う方にはハードルの高い犬種と言えます。

 

一緒に暮らす上での注意点

 

飼育には届出が必要な自治体も

人に怪我をさせてしまう可能性のある大型犬種は特定犬種とされ、都道府県条例で届出や飼育方法に規定のある自治体が多くあります。まずは家に迎える前に、お住まいの地域の保健所などに確認しましょう。

夏の暑さは過酷。室内飼育を。

その名の通り秋田を中心とする東北地方出身で、全身をもふもふの毛に覆われた秋田犬は、冬の寒さには強い犬種です。反対に夏の暑さは大の苦手。夏場は空調の効いた室内で過ごさせてあげましょう。

多頭飼育

秋田犬は忠誠心の厚い犬種です。飼い主さんには深い愛情を示しますが、ライバルともなりうる他の犬と仲良くするのは少し苦手なようです。闘犬だった歴史もあることから、多頭飼育は難しい犬種と言われています。

お手入れの頻度

もふもふの毛をもつ秋田犬は抜け毛の多い犬種です。できれば毎日、最低でも週に2回以上はブラッシングをして抜毛を取り除いてあげましょう。

散歩・運動

秋田犬は体力のある犬種で、1日1時間以上の十分な運動が必要です。運動不足になるとストレスが発散できず、欲求不満につながるため信頼関係を損ないやすくなります。トレーニングのためにも、日々のお散歩は十分にさせてあげましょう。

 

注意したい病気

 

眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)

まぶたが正常より内側にカールすることで、入り込んだまつ毛などが角膜を傷つけてしまうまぶたの奇形のひとつです。

秋田犬は子犬期に眼瞼内反症が見られることが多く、成長とともにまぶたの形も自然と正常になるケースもありますが、角膜への刺激が続くと充血や目やになどが見られます。目の異変に気付いた際は早めに動物病院を受診しましょう。重度の内反症の場合には、まぶたの矯正手術が必要となるケースもあります。

 

股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)

大型犬に多い股関節の病気です。1歳未満の成長期に発症することが多く、散歩の途中で歩きたがらなくなったり、階段の昇降を嫌がったりすることで飼い主さんが異変に気付くことが多いです。また、腰を左右に大きく揺らして歩く「モンローウォーク」という歩き方が特徴です。

股関節形成不全の発症要因は、7割が遺伝的な要因で、残る3割は環境的な要因だとされています。特に成長期に肥満にさせてしまうと、股関節の形成に大きな影響を与えるため注意が必要です。

この病気を発症しやすい大型犬では、症状がみられなくても、骨の形成が完成する1〜2歳の間に股関節のレントゲン検査を受けることが推奨されます。

 

*詳しくは『犬の股関節形成不全【獣医師が解説】』をご覧ください。

皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、ブドウ膜皮膚症候群)

秋田犬はアトピー性皮膚炎にかかりやすい犬種で、多くが3歳以下で発症します。皮膚にかゆみや赤みなどが見られた場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

また、秋田犬は「ブドウ膜皮膚症候群(フォークト・小柳・原田病)」という目と皮膚に炎症を起こす自己免疫疾患にもかかりやすいことが知られています。この病気を発症すると、メラニン細胞を自分の免疫が攻撃してしまうため、皮膚や毛の色素が抜けて薄くなってきます。また、目にぶどう膜炎という炎症を起こし、進行してしまうと失明の恐れがあります。過剰な免疫や炎症を和らげる飲み薬や目薬で病気の進行を防ぐ治療が一般的です。早期診断が重要なため、目や皮膚に異常を感じたら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。

 

 

 

参考文献

・最新犬種図鑑(写真で見る犬種とスタンダード)/ 社団法人ジャパンケネルクラブ監修 / interzoo出版

・新犬種大図鑑 / ブルースフォーグル著/福山英也監修 / ペットライフ社

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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