日本がペット後進国であると言われている理由は色々あります。たくさんの犬や猫が飼い主さんと幸せな生活を送っているはずなのに、一体なぜ日本はペット後進国と言われているのでしょうか?ここでは動物福祉の先進国であるスウェーデンの動物保護法から、その理由を紐解いていきたいと思います。
飼い主が最低限知っておくべき、飼い方の規則
スウェーデンの動物保護に関する法律の詳細を担っているのは農業省です。その農業省から、飼い主向けに「犬に関する保護法について」という小冊子が出ているので、その最初のページに書かれている規則をご紹介しましょう。
犬をケージに閉じ込めて飼ってはダメ!
スウェーデンでは法律で、
犬をケージに入れたまま過ごさせてはいけない
ことが決まっています。また、犬の居住スペースについても細かい規則が盛り込まれていて、例えば、体高25cm以下のチワワやヨークシャーテリアのような小型犬を飼養する囲いであれば少なくとも2平方メートル、3匹の小型犬を使用する場合は3平方メートルが必要とされています。
そのため、日本のペットホテルやペットショップなどで、狭いケージに入れられっぱなしの犬たちのことを考えると胸が痛みます。確かに日本ではスペースが足りない、という問題もありますが…!
犬は社会的な動物という考慮がされている
また、スウェーデンの法律では、
犬に社会的な接触を与えることも義務付け
られています。これは日本では見過ごされているケースも多いのではないでしょうか。
犬はもともと群れで生きる社会的な動物です。ならば社会的な接触を取ることは、彼らの習性の一つ。言葉を変えて言えば、彼らは生まれつき社会的な接触を望んでいるとも考えられます。
私たち人間も社会的な動物ですよね。もし、他の人との接触が剥奪された状態で、毎日長い間建物に閉じ込められたらどうでしょうか?こんな風に考えると 「社会的コンタクト」がどんなに犬たちにとって大事な要素であるか、理解しやすくなるかもしれませんね。
お留守番も6時間までと決まっている
「犬に関する保護法について」の最初のページに書かれているわけではありませんが、
犬のお留守番の時間も6時間が限度
と法律で定められています。日中働いて家を留守にする人が多いスウェーデンの都市部には、なるほど犬のデイケアセンターが多く集まっています。それだけでなく、犬の飼い主たちは友人同士の間でネットワークを作っていて、お互いの犬の預かり合いっこを頻繁に行なっています。ちなみに私も長い間出かけるときは、できるだけ車で出かけて犬も一緒に連れていきますし、それが不可能な場合は家族や友人、恋人、元恋人まで人脈をフル活用して、犬を預かってもらう先を探します!
ちなみに、社会的な接触をする動物でいうと、馬に関しても同様な規則があります。馬も群れる動物ですので、決して一頭でポツンと過ごさせてはいけないことになっています。習性に反することを強いるというのは、結局その動物に精神的な苦痛を与えることになるからです。
飼い主が知っておくべき犬の飼い方
他にも色々な細かなことが小冊子には書かれています。以下は書いてあることの全容です。
□ 少なくとも一日2回は飼い主あるいは誰かが犬の様子を見ること。子犬あるいは病気や怪我をしている犬の場合は数回行うこと。
□ 社会的な接触を必ず与え、犬を満足させること。
□ 室内飼いをしている場合は、定期的に外に出して排泄をさせること。ただし、犬の歳や健康状態に適宜応じること。
□ 庭付きの犬舎で飼われている犬でも、必ず毎日外に出して犬舎外で排泄する機会を与えること。
□ 室内で犬を係留して飼ってはいけない。外でも2時間以上犬を繋ぎっ放しにしないこと。
□ 犬をケージに入れたままに過ごさせてはいけない(ドッグショー、競技会、トレーニング、狩猟、輸送の時は例外)
この6つの項目以外にも動物を保護するための法律は様々なものがありますが、中でも特に犬を飼う上で日常的に気をつけなければならないこと、犬の習性を鑑みて飼い主が守るべき最低限のことをリストアップしているのが、この6箇条なのです。
動物を飢えさせてはいけない、痛い思いをさせてはいけない、というのは規則として言われなくとも誰もがほぼ感覚的にわかることでしょう。しかし動物が気持ちよく生きていくにはそれだけでは足りず、各々の生き物が持つ習性についても考慮しなくてはなりません。
このような、意外と私たちが見落としがちな動物愛護の盲点の部分が、スウェーデンの動物保護法の基盤をなしていると言ってもいいでしょう。
生き物としての精神的な満足を
動物に対する精神面における思いやりというのは、多くのスウェーデンの犬飼い主の間で理解されていることでもあります。だからこそスウェーデンの飼い主たちは、犬に多くのアクティビティを与えようとします。お散歩の時間は1日平均1時間以上取りますし、トレーニングも盛んです。犬は嗅覚の世界に生きる動物なので、嗅覚を使わせるスポーツもします。これらは全て、犬の精神的な満足感を与えるためのものです。
日本の動物愛護法
日本の動物愛護法の基本原則にも、以下の一文が記載されています。
“人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない”
しかし一方で、東京都の福祉衛生局が出している飼い主への手引き書である[犬の飼い方]にはこうも書かれています。
“排泄を済ませてから散歩に出るような配慮も求められています”
これは前述したスウェーデンの「規則」の中の3番目の項目と、まさに正反対なことを言っている部分です。寝ぐらから出て周りの匂いを嗅いだりマーキングしたりするのは、犬にとっては自然な行動です。だからこそ、庭のついた犬舎に住まわせていても、せめて一日一度は外に出して、習性に応じた行動ができる可能性を与えようとしているのがスウェーデンの法律なのです。
日本にはたくさんの犬のケアやサービスに溢れている国だと思うのですが、もう少しこの「精神面」での犬の満足感について多くの人が注目をしてくれればいいと願っています。
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