子犬はからだも免疫もできてないので、病気にかかりやすいもの。ここでは獣医師監修のもと、子犬がかかりやすい病気と予防法についてまとめています。正しい知識を身につけて、子犬を守ってあげましょう。

子犬のときに起きやすいケガ・かかりやすい病気

人間も赤ちゃんや子どものころはまだ体ができあがっておらず、なにかと病気やケガをしやすいですよね。それは人間だけでなく、動物も一緒。子犬を飼う上で気をつけるポイントはいろいろあります。

ここでは飼い主さんたちが気にしている、子犬のかかりやすい病気やケガについてまとめました。こちらを参考にして、きちんと予防してあげて下さい。

子犬は、免疫が未完成の状態

生まれてから8時間以内の授乳を初乳といいます。生まれて初めて口にするおっぱいは通常のおっぱいよりも濃く、赤ちゃんにとって必要なものがたくさん入っていて、初乳によって初期段階の免疫力をつけるのです。しかし母親の授乳によって得られる免疫は、生後2カ月ほどで効力を失ってしまいます。そのため、とくに生後2か月~生後1年くらいまでは、感染症や寄生虫症にかかりやすい傾向にあります。

 

子犬がかかりやすい感染症と寄生虫症

子犬は体ができあがっておらず、免疫も未完成の状態です。そのため、通常であればかからずにすむような病気を発症してしまうのです。どのような病気になりやすいのか、一例をあげておきます。

 

■子犬がかかりやすい感染症の一例

パラインフルエンザ(ケンネルコルフ)

パルボウィルス感染症

 

■子犬がかかりやすい寄生虫症の一例

犬回虫

・犬鉤虫

ジアルジア

コクシジウム

・トリコモナスなど

 

子犬は免疫力が不足しているため、成犬に比べて発症したときに重症化してしまう可能性があります。最悪の場合には死に至ることもあるので、免疫力の低い子犬を守るには、きちんとした予防が必要なのです。

 

予防するためには

生活環境を整えて、健康状態を維持する

当たり前のことを言いますが、健康体を保つことこそ、非常に有効な予防法です。きちんと栄養と水分を取って、十分な睡眠と適度な運動をさせてあげることが、とっても大切なんです。十分に運動をしているにも関わらず、子犬がもっと遊んでとおねだりしてきても、飼い主さんがしっかり睡眠時間を確保してあげなければなりません。

また、子犬の生活環境を清潔に保つことも大切です。フード入れ、お水入れは毎回きちんと洗ってから使いましょう。ケージやクレート、トイレの中も清潔に保って、衛生面にも気を使ってあげましょう。

ワクチン接種は絶対

飼い主に課せられている義務として、畜犬登録と狂犬病の予防接種がありますが、狂犬病の予防接種をする際に、必ずワクチン接種も一緒にしてあげて下さい。子犬の低い免疫力をカバーするためにワクチンがあります。ワクチンを打っていれば、発症を防ぐことができますし、もし病気にかかったとしても重症化しなくてすむので、ペットショップでワクチン接種が完了していない場合は、必ず飼い主さんがワクチン接種を受けさせてあげましょう。

*ワクチンについて、

・「獣医師監修!犬に接種するワクチンと防げる病気

・「犬のワクチンを打つ前に知っておきたい副作用のこと【獣医師解説】

も併せてご覧ください。

 

低血糖症にも要注意!

特に小型犬を飼う場合、最も気を付けなければならないのが「低血糖症」です。血液中の血糖値が下がり過ぎてしまい、意識を失ったりけいれんを起こしたりします。この症状が起こってしまうと、最悪の場合死に至ることもある怖い病気です。

血液中の血糖値が低下すると、通常であれば肝臓が糖分を補うような働きをするのですが、肝臓がまだできあがっていない子犬の場合(生後3ヶ月くらいまで)は、肝臓がうまく機能しないために、低血糖症になりやすいのです。長時間、空腹状態にさせないことが予防になるので、最低でも食事は1日3回に分けたほうがいいでしょう。

*低血糖症について、詳しくは「子犬は要注意!短時間で死に至る「低血糖症」とは【獣医師解説】」を参照してください。

 

異物誤飲にも気を付けて

好奇心旺盛な人間の赤ちゃんと同じように、子犬も目にしたもの、触れたものをなんでも口に入れたがります。とくに乳歯から永久歯に生え替わる時期には、むず痒さからいろいろなものをかじりたがる時期です。結果としてそのまま飲みこんでしまって、誤飲に繋がる可能性があるので、かじっても安全なおもちゃを与え、口にすると危険なものや、誤飲の恐れのある小さなサイズのものは、子犬の目に触れない場所に置きましょう。

尚、もし万が一、有害物をかじってしまったり、食べ物以外のものを誤飲してしまった場合には、すぐに動物病院に連れて行きましょう。獣医さんに正確に情報を伝えるために、可能であれば誤飲してしまったものと同じもの(食べかけたものでも可)を持参するといいでしょう。

*「犬に与えてはいけない危険な食べ物【獣医師解説】」も併せてご覧下さい!

 

子犬は骨折や脱臼になりやすい

免疫力がきちんとできあがっていないことと同様に、骨が完全には形成されていないのが子犬の体です。特に小型犬は体の骨が細いため、この時期は骨折しすい傾向があります。抱き上げたときにうっかり落としてしまったり、乗せた膝の上から硬い床の上に飛び降りたりして、骨折をすることはよくあります。

ソファへの乗り降りや、ぴょんぴょんジャンプさせることはなるべくやめさせましょう。ダメと言っても続けるようなら抱きかかえてあげて下さい。また、床がフローリングの場合は滑って骨折しやすいので、カーペットやコルク版など滑りにくい素材の敷物を敷いてあげるとよいでしょう。詳しくは、「室内での骨折に要注意!あなたの愛犬は大丈夫?【獣医師解説】」を参照してください。

骨折については、完治するまでの長さや手術の難しさなどから、特に防いでおくべきケガですので、詳しく記事を掲載しています。あわせてご一読ください

 

動物整形外科の専門医・木村太郎先生監修「犬の骨折」記事

第1回:動物整形外科専門医の視点で語る「愛犬を骨折させてはいけない理由」 

第2回:視覚とデータで理解!「骨折の原因」を徹底排除

第3回:骨折発生! もしかして骨折_ を含めた応急処置と対処法

第4回:動物の整形外科とは?~骨折治療の得意な先生の探し方ヒント 

第5回:骨折の定義と、部位別の原因・症例・治療法~完治まで

第6回:骨折の治療法完全ガイド

第7回:⾻折で発⽣する後遺症と合併症

第8回:骨折しやすい犬種の理由として考えられること

 

いかがでしたか?1歳になるまでの子犬は、気を付けなければならないことが多いので大変な思いをすることもあるでしょうが、子犬の時期はあっという間に終わります。正しい知識を身につけて、子犬との生活を楽しみながら、健康に育ててあげてくださいね。

 

「子犬」に関するワンペディア専門家監修記事

飼い主さんが知っておきたい子犬期の情報はこちらをご覧ください。

□ 健康チェック:「成犬とはどこが違う?子犬の健康を細かくチェックする方法とは?

□ 注意すべき病気とケガ:「子犬は絶対に気をつけて!注意すべき病気と怪我」(本稿)

□ 低血糖症:「子犬は要注意!短時間で死に至る「低血糖症」とは

□ 水頭症:「1歳未満の子犬に多い水頭症とは?治療法と飼い主さんができること

□ 胃液を吐いた:「子犬が黄色っぽい液体を吐いた!原因と対処法

□ 子犬の骨折:「子犬の骨折が発生しやすい月齢は? 発生しやすい3大要因と予防策

□ 環軸亜脱臼:「子犬がかかりやすい、環軸亜脱臼

□ 子犬のお部屋:「子犬のためのお部屋作り

□ 子犬のしつけ:「子犬を迎えたばかりのお家は要注意!そのしつけ、本当に大丈夫?

□ 子犬のトレーニング:「子犬期のうちに絶対にやっておくべきトレーニン

□ トイレトレーニング:「子犬のトイレトレーニング、失敗しても大丈夫!

□ パピーパーティ:「他の子犬たちと出会えるパピーパーティーとは

□ 父犬の役割:「子犬育ての参考に!お父さん犬の隠れた役割

□ 社会性:「子犬に社会性を身につけてもらうために!

□ お散歩デビュー:「獣医師がわかりやすく解説!初めてのお散歩

□ドッグランデビュー:「その子犬、ドッグランに連れて行っても大丈夫?

□ 夜鳴き:「子犬が夜鳴きするのはなぜ?夜鳴きの対処方法

□ 食糞:「子犬の食糞の理由や予防対策

 
 

★「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

例えば、下記のような切り口から、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

 

【治療面から】■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり

【症状面から】■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い

【対象から】■ 子犬に多い ■ 高齢犬に多い ■男の子に多い   ■女の子に多い ■ 大型犬に多い ■小型犬に多い

【季節性から】■春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度から】■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつりやすさから】 ■ 他の犬にうつる ■ 人にうつる ■猫にうつる

【命への影響度から】 ■ 命にかかわるリスクが高い

【費用面から】 ■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防面から】 ■ 予防できる ■ワクチンがある

 

★「うちの子おうちの医療事典」で子犬が注意すべき傷病を調べてみましょう

子犬に多い傷病

低血糖症

水頭症

骨折

回虫症

ジアルジア症

コクシジウム症

ケンネルコフ

犬パルボウイルス感染症

アイペット獣医師

詳細はこちら

関連記事

related article