飼い主さんのお悩みで最も多いのが、実は犬の吠え。来客があったときに吠えたり、通りすがりの犬に吠えたり、中にはヒトがごはんを食べてる間、ずーっと吠えている犬もいます。
飼い主さんが「うるさいなー。」と思って終わりにならないのが吠えの悩みどころ。近所迷惑になりますし、通りすがりの人をびっくりさせてしまうことだってありますよね。人と犬が気持ちよく暮らせるように、吠えないようにトレーニングをしておいたほうがいいでしょう。ここでは犬が吠える原因と、原因別の対処法を解説します。
大前提として、犬は吠える生き物です。
犬は人と一緒に作業を行うため、様々に改良されてきました。少し前まで、犬の吠えるという行動は、猟犬や番犬として活かされていた、という背景もあります。不審者の存在を教えてくれたり、羊の大群をまとめたり、獲物の存在を教えてくれる犬たちは、当時の人間にはなくてはならない存在だったのです。犬は吠える性質をもっているのだ、ということを理解した上で、吠えないようにトレーニングをしていきましょう。
犬が吠えることには必ず理由があります。大きく分けると原因は二つ。原因によって対処法が異なるので、まずは自分の愛犬がどういった理由で吠えているのかを明確にしましょう。
原因1 「警戒」吠え
ひとつめは、何かに対して恐怖や不安を抱き、警戒して吠えるという行為につながるケースです。
たとえば…
・知らない人が近づいてきて吠える
・お散歩中に他の犬とすれ違ったときに吠える
・外の物音に対して吠える
・玄関のチャイム音に吠える
など
こういったときに吠えるのは、恐怖心が大きな原因です。
まだ愛犬が子犬であるなら、しっかりとした社会化のトレーニングが重要になります。
社会化期のうちにさまざまなものと触れ合うことで、恐怖心や警戒心を解いてあげることができる
からです。詳しくは「子犬期のうちに絶対やっておくべきトレーニング」を参考にしてください。
社会化期、とっくに過ぎてる・・・という方もご安心ください。社会化期に十分なトレーニングができなかった場合でも、愛犬が恐怖を抱く対象を取り除いてあげるか、
「怖い」というイメージを「嬉しい・楽しい」というイメージに変えてあげればよい
のです。
恐怖対象を取り除く
愛犬が吠えてしまう
対象を取り除くことで、吠える行動を止めさせる
ことができます。一番シンプルな方法なので飼い主さんが取り組みやすく、犬にも大きなストレスを与えずにすみます。たとえば、他の犬を見つけたときに吠えてしまう場合には、他の犬とすれ違わないように進路を変えたり、飼い主さんが立つ場所をズラして他の犬が見えないように視界を遮ったりして、吠える対象を隠してしまえばよいのです。
しかし、これでは根本的な解決にならないので、吠えを止められないケースもあります。たとえば雷や来客など、飼い主さんの工夫でなくすことができないものが原因で吠えているときは、止めることができません。そんなときは次のようなトレーニング方法がオススメです。
「怖い」を「嬉しい」というイメージに変える
犬が吠える相手に対して「恐怖心」を抱えていることが、警戒吠えの原因になっていることがほとんどです。この怖いという気持ちを嬉しい気持ちに変えることができるトレーニング方法があります。イメージしやすいよう、例を用いて解説しますね。
●人に対して恐怖を感じ、吠えてしまうケース
お散歩中、見知らぬ人を見かけてワンワンッ!と吠えてしまう場合
この時、犬が吠えてしまっていても問題ありません。「見知らぬ人は怖い人じゃないんだよ~。おやつをくれる素敵な人
ちなみに、吠えている状態でおやつをあげても大丈夫なのですが、気を付けなければならないポイントが2つあります。
まず、
常におやつをあげられるようスタンバイしておくことが大切
です。おやつを貰える時と貰えない時があると、犬の感情が「怖い⇒嬉しい」に変化しづらくなります。なので、どんなときもおやつをあげられるように準備しておきましょう。
次に、
愛犬のテンションがあがる美味しいおやつを使う
ことも大切です。いつものおやつをあげようとしているのに、食べない…。こんなこともあるでしょう。そういう時は今使っているおやつより、その子がもっと好きなおやつを準備してみましょう。人で例えるなら、「お使いを頼まれた時、10円のお駄賃と1,000円のお駄賃、どちらのお駄賃だったらお使いに行きますか?」と天秤にかけられたとき、どちらの方がお使いに行くか、考えてみると分かりやすいと思います。
こうしておやつをたくさんもらうことで、見知らぬ人が恐怖や警戒する対象から、「おやつをくれる人」という嬉しい対象に変わっていくはずです。犬の様子も必然的に変わっていきますよ。
●玄関のチャイムに吠えてしまうケース
上記のトレーニングは、玄関のチャイムや雷の音が原因で吠えてしまう場合にも、もちろん有効な方法です。ただし、恐怖や警戒対象(音)からおやつを貰うことは難しいので、飼い主さん自身が与えてあげましょう。
「チャイムが鳴るとおやつがもらえる。」「雷が鳴るとおやつがもらえる。」というイメージをつけて
あげてください。
もし、これらの方法で改善が見られない場合は他にもトレーニング方法がありますので、うまくいかなくても焦らないでください。ただ、他のトレーニング方法には少しコツが必要なので、上記のトレーニングでうまくいかなかった場合は、お近くのドッグトレーナーに相談してみることをオススメします。
原因2 「要求」吠え
もうひとつの原因が要求吠えです。飼い主さんに何かしてほしいことがあったり、欲しい物があったときに、それを知らせようとして吠えにつながるケースです。
たとえば・・・
・夜鳴きをする
・抱っこしてほしくて鳴く
・お散歩の準備を始めると吠える
・クレートから出してほしくて鳴く
・人間のゴハン中に吠える
など
では、犬はなぜ要求するのでしょう?それは、人間がその要求に応えてしまっているからなのです!
要求に応えないことがトレーニング
トレーニング方法は至ってシンプル。「要求に応えない」、これだけです。例を挙げて解説します。
ごはんが欲しくて吠えてしまうケース
[犬]ご飯をあげる前にワンワン吠える。
[飼い主さん]吠えている犬には、ごはんを与えない。吠えやんだらごはんをあげる。
クレートから出たくて吠えてしまうケース
[犬]クレートやハウスで吠える。鼻をピーピーと鳴らす。扉をカリカリする。
[飼い主さん]クレートやハウスから出さない。声をかけない。犬が目線を向けられたと感じないようハウスにタオルをかけて目隠しする。犬が落ち着いてからクレートやハウスから出してあげる。
お散歩に行きたくて吠えてしまうケース
[犬]お散歩の準備を始めると、ワンワン吠える。
[飼い主さん]吠えている状態ではお散歩に行かず、お散歩の準備もやめる。そして静かになってからお散歩に行く。
このような対処をすることで、犬は
「な~んだ。要求しても意味がないんだ。むしろ落ち着いていた方が良いこと(お散歩、ご飯等)が起こるんだ!」と学習
し、要求吠えを止めてくれます。
トレーニングに必要な期間
トレーニングを開始して、どのくらいの時間で吠えやむかは犬の性格によるため、一概には言えません。しかし、要求吠えが止むまで、犬の要求に応えないことが難しい場合もあると思います。
たとえば、子犬をひとりでハウスで寝かせようとしたとき、ひとりで寝るのが嫌で、キュンキュン、ワンワンと吠えたとします。ここでかわいそうと思って、ハウスから出して抱っこしてあげる等の行動は、要求吠えをエスカレートさせる原因の代表例です。では、我慢して放っておけばいいかというと、夜遅くにワンワンと吠えられてしまっては、ご近所迷惑にもなりますし、飼い主さん自身も寝られなくて困ってしまいますよね。要求に応えるような行動は避けたいけど、吠え続ける状態にしておくこともできない、とても難しい状況です。
こんな時は
要求吠えをしないような環境作り
をしましょう。先ほどの要求吠えの例であれば、犬が寝る前にオヤツを詰めた知育玩具を一緒にハウスに入れることで防げる場合があります。子犬はオヤツが詰められた知育玩具に夢中になり、全部食べ終えるころには疲れ切って寝てしまい、気づいたら朝…という環境に近づけることができます。
愛犬の吠え癖を直したいときは、まず吠えている原因を探ることからはじめましょう。『行動治療学の獣医師が無駄吠えについて解説!』もあわせて読んでみてください。犬の気持ちを理解した上で、いろいろなトレーニングを試してみましょう!
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