シルクのような被毛から覗く、つぶらな瞳が愛らしいマルチーズ。小柄で人懐っこく「犬の貴族」ともいわれ、長い間多くの人に愛されてきた犬種でもあります。でも「長い間…」ってどれくらいだと思いますか?実はマルチーズが誕生したのは、紀元前1500年頃のヨーロッパだといわれているのです。
今もなお愛され続ける「犬の貴族・マルチーズ」は、一体どんな歴史を歩んできたのでしょう。ここでは、マルチーズの歴史とその性格、そして飼育上のポイントについて紹介します。
「犬の貴族」マルチーズの歴史とは
マルチーズの歴史が始まったのは紀元前1500年頃、地中海貿易の中継地点だった「マルタ島」。そこにフェニキア 人が持ち込んだ犬が、現在のマルチーズの元になっているといわれています。当初のマルチーズは、フェニキア人の船員が愛玩動物として船の中で飼育していました。
17世紀のはじめにマルタ島がイギリスの植民地になったことから、マルチーズはイギリスに持ち込まれることに。その後、愛玩犬としてイギリス王室に献上され、ヴィクトリア女王はじめ、王室貴族に愛されるようになります。上流階級の貴婦人たちの間では、膝におとなしくのってくれる可愛らしい「抱き犬」として人気を集めました。これが「犬の貴族」といわれる背景なのです。当時は破格の値段で取引されていたようです。
「抱き犬」として愛されたマルチーズの性格とは
「抱き犬」とされていた時代があるように、マルチーズは落ち着きのある温厚な性格。物覚えもよく、家の中でしてはいけないこと、散歩のときのルールなど、すぐに覚えてくれます。
温厚な一方で、陽気で活発な面もあり遊びも大好き。また、大きな犬に対しても向かっていくような気の強い部分も持ち合わせています。可愛らしいのに気が強くて大胆…そんな二面性もマルチーズの魅力の一つかもしれません。
飼い主が愛犬を愛するように、マルチーズも飼い主に対してとても従順です。飼い主のあとをついてまわったり、甘えることが大好き。しかし、飼い主さんを愛するがあまり嫉妬心が強く、他の人や犬に嫉妬する場合もあります。
どこか品を感じられるマルチーズは、貴族に愛された歴史が影響しているのかもしれませんね。愛情もってお世話をすれば、愛情をしっかり返してくれるマルチーズ。「抱き犬」としての歴史もあることから膝にのせたり、抱いてお散歩したり、「抱く」行為でコミュニケーションを取るのもいいかもしれません。
マルチーズの特徴と体格
マルチーズの特徴といえば、輝く白い絹のような被毛でしょう。シングルコートのため毛は抜けにくく、放っておくと床につくくらいまで伸びます。被毛を長く伸ばしたい場合は、毎日のブラッシングやコーミング、そして定期的なお手入れが必要となります。
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体格については、個体差はあるものの、成犬になると床から高さ25cm程度になり、体重はだいたい2.0kg程度と言われています。マルチーズの中でも大柄な子、華奢な子がいますので、適正体重についてはかかりつけの獣医師に必ず確認しましょう。
マルチーズを飼育する前に!知っておくべき注意点
初心者でも飼いやすいマルチーズではありますが、飼育上で注意すべき点もあります。
適正体重を維持する
可愛くてついつい餌を与えすぎてしまう…なんて事はよくある話。確かに少しくらい太ってコロコロしている様子は可愛い気もしますが、肥満は病気につながるので注意しなければなりません。
理想体重から15%ほどオーバーすると肥満と呼んでいい状態になります。マルチーズは膝を故障しやすいため、適正体重を保つことはとても重要です。また、散歩は1日1~2回程度、それぞれ10分ほどと必要な運動量がもともと少ない為、食事のバランスは気を付けなければなりません。
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マルチーズがかかりやすい病気
膝蓋骨脱臼
マルチーズは、遺伝的に「膝蓋骨脱臼」になりやすいと言われています。膝蓋骨脱臼とは、何らかの原因で膝の靭帯がうまく機能せず、膝の皿が脱臼してしまうこと。それにより本来の足の動きができなくなり、足を引きずったり、足が床につかないようにして歩いたり、といった症状が現れます。
愛犬の足の様子がおかしいと思ったら、すぐに獣医師の元へ。症状が軽ければ痛み止めなどを処方してくれますが、深刻な場合は外科手術が必要なこともあります。もともと運動量をそこまで必要とはしない犬種ではありますが、普段から散歩や家の中で活発に運動させるようにし、靭帯が衰えないようにしてあげましょう。適正体重でも記載しましたが、肥満状態になると膝に負担がかかるので、適正体重を保つのも予防の大切なポイントです。詳しくは『小型犬に多い「膝蓋骨脱臼」とは?治療法と予防法【獣医師が解説】』をご覧下さい。
流涙症(涙やけ)
病気が原因となる場合もあるので、急に涙が出るようになった場合などは、一度獣医さんに相談してみるといいでしょう。眼瞼内反症(逆さまつ毛)や二重まつ毛(まつ毛がまぶたの内側に生えて目を傷つけてしまう病気)など、目の炎症によって涙が異常に増えてしまったり、鼻炎・副鼻腔炎など鼻になんらかの障害があった場合に涙をうまく排泄できなくなってしまったりして涙があふれてしまうのです。
治療には、上記のような鼻の症状を治療したり、目の周辺の毛を短くカット、抗生物質の入った目薬を使います。それでも改善しない場合は麻酔をかけて涙腺の詰まりを治します。先天的に涙を排泄する管が開いていないという場合には、外科手術をする場合もあります。涙やけについて、詳しくは『犬の流涙症』をご覧下さい。
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外耳炎
真菌や雑菌の感染、耳ダニ、皮膚炎などが原因で外耳炎は起こります。マルチーズは、きれいな被毛を保つために、頻繁にシャンプーする飼い主さんが多い犬種です。シャンプー時の水が耳に残り、そこから細菌が繁殖し発症することもあります。茶色、茶褐色の耳アカ、悪臭やただれに繋がる場合があるので、シャンプーの後は水分をしっかり拭き取るようにしましょう。犬の外耳炎について、詳しくは『犬の外耳炎』をご覧下さい。
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マルチーズのお手入れは?
マルチーズ美しい被毛はストレートで、体の両側にシルク糸のように垂れ下がり、放っておくと床につくほどまで伸びます。1本1本は細く繊細なので、丁寧にブラッシングしてあげると、そのツヤが増して、さらに美しく光を反射します。サラサラ、ツヤツヤした優雅な雰囲気が「犬の貴族」と呼ばれる理由の一つかもしれません。被毛が繊細な分からまりやすいので、毎日のブラッシングやコーミングが必要となります。
また、綺麗な白さを保つためには、適度なシャンプーが必要です。あわせて、耳や目の周りのお手入れもきちんとしないと、汚れが付着してしまい、真っ白な被毛が徐々に変色してしまう場合があるので、目やにが出ていたらこまめに拭いてあげましょう。
マルチーズのカットの種類
上記でも説明したように、マルチーズは適度にヘアカットする必要があるため、そのカット方法にはたくさんの種類があります。飼い主さんと一緒に生活していくために、その暮らしにあったカットを、季節に合わせて選んであげるとよいでしょう。
伝統的なフルコート
全身の被毛を、床につくまで伸ばしたもので、鼻の上の毛も顔の横に垂らして残しておくカットです。目の上の毛は、そのままにしておくと顔全体を覆ってしまうので、犬用のへアピンやゴム、リボンなどを使って止めておくことが多いです。
白い被毛の美しさを満喫するのにぴったりな、優美なカットですが、1日に何度もブラッシングするなどして、その魅力を保つ努力が必要です。
顔の部分カット
体の被毛はそのまま伝統的カットのように伸ばしておいて、顔だけカットすることもできます。目や耳の周りは、涙やけ、耳だれが気になる部分なので、ケアがしやすいのが特徴です。長い被毛の上にちょこんと顔が載っている感じになるので、可愛らしいと人気があります。
ぬいぐるみカット
全身の毛を、モコモコ、フワフワのぬいぐるみのようにしたカットです。耳、鼻の周り以外の毛は3〜5cm程度にカットします。
変身カット
全身の毛はぬいぐるみカットのように短めに整えて、顔の周りの毛をまあるくカットすると、大きな目が目立つようになり、まるでポメラニアンかチワワのような雰囲気を醸し出します。また、眉毛と鼻の横の毛だけを長く残すと、ミニチュアシュナウザーのようにも見えます。
サマーカット
長い被毛を持ったままだと、暑い夏には熱中症になってしまうことも。夏場に向いているのは、手足の毛は長めに残して、お腹、背中、顎の下はすっきりと短くカットしたサマーカット。マルチーズらしさが残るので人気のカットです。
超サマーカット
全身の毛を、1センチ以下に短く刈り込みます。ここまで短くカットすると、マルチーズが、じつはとても華奢な体をしているのがよくわかります。
カラーリング
これには賛否両論ありますが、マルチーズは耳の毛を長く伸ばすことができるので、その部分に好みの色を入れる飼い主さんもいます。
こんな人にオススメな犬種
マルチーズは賢く、他の犬に比べてしつけも簡単なので初心者でも扱いやすいと言われています。また、「抱き犬」と言われる通り、抱きかかえたりキャリーバッグに入れての移動も簡単です。また、飼い主さんにたくさんの愛情を注いでくれるので、「犬に思いっきり愛されたい」「いつも一緒に出掛けしたい」そんな風に思っている飼い主さんにはぴったりの犬種だと思います。セラピードッグとしての能力も高いため、ご年配の方がいる家庭にもおすすめですよ!
あまり長く散歩をする必要のない犬なので、仕事で忙しい人にも向いているでしょう。
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