「家に迎えたばかりの子犬が、とにかく耳をずっと掻いている」、というときは耳ダニに感染している可能性があります。耳ダニの痒さは尋常ではなく、外耳炎などほかの耳の病気の比ではないと言われるほど。一刻も早く治療をし、再発防止のためにも徹底的に駆除しなければなりません。犬の耳ダニについて詳しく解説します。

 

ダニはダニでも、耳の中で繁殖するのが耳ダニ

耳ダニってどんな虫?

耳ダニの正式名称は「ミミヒゼンダニ」。顕微鏡を使わないと見えないほどの小さいダニです。何らかの原因で犬の耳の中に住み着き繁殖することを「ミミヒゼンダニ感染症」と呼びます。繁殖力が非常に高いうえ、薬を使って徹底的に駆除しないと完治しません。

勘違いされることがありますが、毛の中でピョンピョンと飛んでいるように目視できるのは、耳ダニではなくマダニです。混同しないように注意しましょう。

 

主な症状は尋常じゃない痒さ

体内に住み着いた耳ダニは、耳の中を潜って奥へ奥へと侵攻していきます。その痒みは尋常ではなく、感染した犬はひたすら頭を振り続けたり、足で掻き続けたりします。

痒みがひどい場合は、出血するまで掻き続けることも。自傷行為がエスカレートする前に、早く獣医師を受診しましょう。

 

耳ダニが住み着く原因は?

耳ダニは、劣悪な環境の中で感染すると考えられます。衛生環境が整っていない場所で育った子犬や、外飼いの犬に多いのはそのためです。逆に、一般的な家庭で室内飼いをしていると感染することはほとんどありません。しかし清潔な飼育環境で育てていても、頻繁に原っぱや森などで外遊びをさせたり、ほかの犬と接触をさせたりすると、感染する可能性もあるので注意が必要です。

 

徹底的に駆除するまで治療を続けることが大事!

子犬の頃に完治させる

耳ダニにかかるのはほとんどが子犬です。なぜなら耳ダニに感染すると我慢できないほどの痒みを伴うので、たいていは小さい頃に耳ダニを発見され治療を済ませているからです。治療は2週間に1回、駆除薬で行います。2、3回の治療で完治することがほとんどですが、途中でやめてしまうと、耳の中に残された卵が孵化し再発することも。治ったと思っても油断せず、徹底的に駆除するまで治療を続けましょう。

 

耳ダニ感染は予防できる

耳ダニに感染しないためには、まず感染動物に接触させないことが一番です。野良犬や野良猫は耳ダニに感染している可能性が高いので、むやみに近づけないようにしましょう。また外飼いをしている場合は、日常的に感染しやすい状況にあると言えます。頭をブンブンと振っていたり、掻き続けるような素振りを見せたりする場合は、すぐに動物病院に連れて行ってください。

 

耳ダニは人には感染しない

感染力、繁殖力ともに強い耳ダニですが、幸いなことに人間には感染しません。人間と犬の耳の内部の環境が違うので、人間の耳の中では生存することが難しいのです。余談ですが、目で見えるマダニは犬から人へ感染する恐れがあります。マダニが媒介する病気は重症熱性血小板減少症候群(SFTS)やダニ媒介性脳炎など重症につながるものがあるので、十分注意しましょう。

 

これからおうちに子犬を迎えるという人は、耳ダニのことを知っておくといいですね。簡単に治療できるので、疑いがあれば一刻も早く病院に連れて行ってあげてください。

 

 

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★犬種や季節、年齢など、うちの子がかかりやすい病気を調べて予防するため、「うちの子おうちの医療事典」を、ぜひご利用ください。

耳ダニ

マダニの寄生

外耳炎

 

☞例えば、下記のような切り口から、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

 

【治療面】■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり

【症状】■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い

【対象】■ 子犬に多い ■ 高齢犬に多い ■男の子に多い   ■女の子に多い ■ 大型犬に多い ■小型犬に多い

【季節性】■春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度】■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつりやすさ】 ■ 他の犬にうつる ■ 人にうつる ■猫にうつる

【命への影響度】 ■ 命にかかわるリスクが高い

【費用面】 ■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防面】 ■ 予防できる ■ワクチンがある

アニーマどうぶつ病院 院長

村谷 親男

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