ディズニー映画「わんわん物語」の主人公・レディのモデルとなったアメリカン・コッカー・スパニエル。ふわふわの耳や脚の飾り毛が特徴で、優雅な雰囲気をまとった犬種ですが、意外にもそのルーツはスペインの狩猟犬にあります。一体どのようにしてアメリカン・コッカー・スパニエルは誕生したのでしょうか。また、美しい飾り毛をキープするためにはお手入れが重要な犬種でもあるので、飼育する際には気をつけていただきたいポイントがいくつかあります。
ここでは、アメリカン・コッカー・スパニエルの歴史、特徴、性格、飼育のポイントやかかりやすい病気について解説します。

アメリカン・コッカー・スパニエルの歴史

アメリカン・コッカー・スパニエルは、「イングリッシュ・コッカー・スパニエル」を祖先とするアメリカ原産の犬種です。
コッカー・スパニエルの歴史は古く、「スパニエル」という名の通り、スペインで生まれた猟犬がルーツとなっています。そのスペインの猟犬たちがヨーロッパ各国に渡り、狩猟の用途に応じて交配されていく中で、様々な犬種へと分かれていったと言われています。

 

そのなかのひとつである「ランド・スパニエル」という犬種が、のちに「イングリッシュ・コッカー・スパニエル」と「イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル」に分かれました。これがアメリカン・コッカー・スパニエル誕生の第一歩であったと言えます。ちなみに、「コッカー」とは「ヤマシギ」という小さな鳥のことで、当時のコッカー・スパニエルはこのヤマシギを追う最も小柄な鳥猟犬として活躍していたようです。

 

そして1620年、メイフラワー号に乗ってイギリスからアメリカへと移民が渡ってきたことは世界史的にも有名な話ですが、その船には2頭の犬が乗っていたと言われています。そのうちの1頭であるイングリッシュ・コッカー・スパニエルが、アメリカ国内に持ち込まれ、アメリカン・コッカー・スパニエルが生み出されました。

 

その後アメリカン・コッカー・スパニエルは猟犬ではなく、愛玩犬として改良され、丸みを帯びた顔や美しい飾り毛が特徴となるようになっていきました。ドッグショーでも人気を博し、1870年〜1940年頃まではイングリッシュ・コッカー・スパニエルと同犬種として扱われてきたアメリカン・コッカースパニエルですが、1945年、アメリカン・ケネル・クラブ(AKC)が独立した犬種として認定し、1968年にはイギリスでも別犬種として認められました。

 

1955年に公開されたディズニー映画の「わんわん物語」では、アメリカン・コッカー・スパニエルのレディが主人公として描かれ、たちまち世界中で大人気となりました。

 

アメリカン・コッカー・スパニエルの特徴

アメリカン・コッカー・スパニエルは、鳥猟犬の中では最も小柄な体格で、可愛らしい顔立ちに、筋肉質な体を持った犬種です。顔つきは彫りが深く、頭頂部は平らで、口先はやや短め、長い垂れ耳が特徴です。

大きさ・体重

中型犬に分類されますが、体重は7〜13kgと小柄な犬種です。
JKC(ジャパン・ケンネル・クラブ)では、体高はオスで38.1cm、メスで35.6cmが理想的と規定しています。

被毛・毛色

アメリカン・コッカー・スパニエルは、上毛と下毛から成るダブルコートで、1本1本の毛は細くシルクのようですが、毛量が多いため厚みのある被毛をしています。特に耳周り、胸、お腹、四肢は飾り毛が豊富で、ゴージャスな印象を与えます。毛質は「ストレート」と「ウェーブ」の2タイプがあり、ウェーブタイプが一般的です。

ブラック・バラエティー

ブラック(黒)の単色、もしくはタンやポイントの入るブラックをさします。ブラックの質はジェットブラック(純黒)に限定され、胸や喉にホワイトが少しだけ入るものも認められます。

アスコブ・バラエティー(ブラック以外の単色)

ブラック以外のクリーム、レッド、ブラウン、セーブルなどの単色のものをまとめて「アスコブ・バラエティー(Any Solid Color Other than Blackの頭文字をとって)」と呼びます。ブラック・バラエティーと同様に、胸や喉に少量のホワイトが入るものも認められています。

パーティーカラー・バラエティー

明確に区別できる毛色が2色以上混ざったカラーで、そのうちの一色はホワイトでなければなりません。ブラック&ホワイト、レッド&ホワイト、ブラウン&ホワイト、3色が混ざったトライカラー、地の色とホワイトが混在したローンなどが、これに分類されます。基本の色が90%以上を占めてホワイトが少なすぎるものは認められません。

 

毛色は大まかにはこの3つに分類されますが、多種多様な色の組み合わせがあり、20種類以上の毛色があると言われています。

寿命

アメリカン・コッカー・スパニエルの平均寿命は12〜15歳と言われています。

性格

人懐っこい性格で、明るく活発なタイプの犬種です。賢く、好奇心旺盛な性格に、筋肉質な肉体を合わせ持つため、ドッグスポーツなどにも向いています。家族と一緒に過ごすことが大好きですが、家族以外の人や動物にも友好的に接することができます。動物病院でも持ち前の好奇心を発揮して、病院の隅々をクンクン!診察台の上でも緊張することなく尻尾をフリフリ!という子が多く、その陽気な性格から「メリー・コッカー(陽気なコッカー)」とも呼ばれています。

 

子どもがいるご家庭や、アウトドアなどのお出かけが好きな方に向いている犬種と言えるでしょう。ただし、ブラッシングは必須の犬種なので、毎日お手入れしてあげられる時間を設けられる方、また寂しがりやな一面もあるのでお留守番の時間が長くない方、に最適です。

アメリカン・コッカー・スパニエルを家族に迎えたら

お手入れ

こまめな被毛のお手入れが必要な犬種です。お手入れを怠ると見た目に影響が出るばかりでなく、皮膚疾患を起こしてしまう可能性もあるので、とても重要です。

ブラッシング(できれば毎日)

ゴージャスな被毛は絡みやすくい、毛玉を作りやすい毛質です。また、ゴミなども巻き込みやすいので、お散歩の後や寝る前などタイミングを決めて、できるだけ毎日ブラッシングをしてあげるようにしてください。また、長い垂れ耳は外耳炎を起こしやすいので、耳もチェックする習慣をつけるとよいでしょう。 

シャンプー(月1〜2回)

皮脂の分泌が多く、べたつきやすい肌質の子が多い犬種です。また、彫りの深い顔はシワの部分に汚れが溜まりやすいので、シャンプーが目に入らないように注意しながら顔もよく洗ってあげましょう。
月に1〜2回は自宅やトリミングサロンでシャンプーをして、シャンプー後はしっかり乾かすこと、そして保湿ケアをしてあげることで皮膚や被毛を清潔に保つことができます。

トリミング(月1回以上)

ゴージャスな飾り毛がチャーム・ポイントですが、伸ばしっぱなしにしてしまうと毛玉や汚れがつきやすくなってしまいます。また、長い垂れ耳は外耳炎を起こしやすいので、耳の周りや耳道内の毛のカットも重要です。

寒さも暑さも苦手

屋外での飼育は不向きな犬種のため、必ず室内に生活スペースを設けましょう。
分厚いダブルコートの被毛に覆われているので、暑さはとても苦手です。夏は室内でも熱中症にかかる危険があるので、エアコンによる室温管理は大変重要です。また、寒さも苦手な犬種なので、室温は一年中気を配ってあげる必要があります。

肥満に注意

食欲が旺盛で太りやすい犬種です。食事量をきちんと測り、体重増加に注意するようにしましょう。
また、運動が大好きな犬種なので、1日1〜2回のお散歩も体型維持には効果的です。筋肉質でスタミナもあるため、飼い主さんとのランニングやドッグランでの運動も積極的に参加してくれますが、暑さは苦手なので、気温や水分摂取に気をつけながら運動を行うとよいでしょう。

かかりやすい病気

白内障

眼の中の「水晶体」というレンズの役割をしている部分が、白く濁る病気です。人間同様に加齢によって発症することが多く、7歳以降での発症が一般的ですが、アメリカン・コッカー・スパニエルは遺伝的に白内障を起こしやすいことが知られているため、2歳以下の若齢で発症するケースもあります。また、糖尿病や高脂血症などの全身性の病気の症状として、発症することもあります。
濁りが軽度な段階では視覚に異常はきたしませんが、進行するにつれて、目が見えにくくなり、視覚を消失してしまうこともあります。根治には、眼科専門施設での外科手術が唯一の治療法とされています。

 

*詳しくは『犬の白内障の症状や予防法【獣医師が解説】』をご覧ください。

緑内障

眼圧(眼の中の圧力)が異常に上がってしまう病気です。正常な眼では、「房水」という眼の中の水を常に産生し、その量を一定に保つことによって眼圧が保たれています。それにより、眼はきれいな球形を維持することができますが、眼圧が上昇すると眼の形は歪み、視神経を圧迫して痛みが出たり、視覚に障害が起きたりしてしまいます。これが緑内障です。

 

緑内障には、原発性と続発性があります。原発性緑内障は、生まれつきの眼の構造が原因で発症する緑内障で、好発犬種としてアメリカン・コッカー・スパニエル、柴犬、シーズーなどが挙げられます。続発性緑内障は、他の疾患が原因で二次的に起こってしまう緑内障で、原因となる病気には、白内障・ぶどう膜炎・水晶体脱臼・眼内腫瘍などさまざまな疾患が挙げられます。

 

いずれの緑内障の場合でも眼には強い痛みが生じるため、痛みによって元気がない、食欲がない、動きたがらない、頭を触られるのを嫌がる、などの症状がみられます。また、結膜の充血、角膜の白濁、目が飛び出したように見える(眼球突出)、明るいところでも黒目が大きく見える(散瞳)などの症状も特徴的です。

 

治療には内科療法(内服・点眼)と外科療法がありますが、緑内障を発症してから時間が経ってしまうと、視覚の回復が見込めなかったり、痛みが取り除けなくなるケースもあります。その場合には、義眼の挿入や、眼球摘出も選択肢の一つとして検討されます。

 

*詳しくは『犬の緑内障【獣医師が解説】』をご覧ください。

外耳炎

長い垂れ耳と豪華な飾り毛を持つアメリカン・コッカー・スパニエルは、外耳炎を起こしやすい代表的な犬種のひとつです。細菌や真菌、耳ダニなどが耳の中で繁殖して炎症をおこす「感染性外耳炎」が一般的で、耳を掻いたりこすりつけたりする、耳が臭う、耳を触られるのを嫌がる、頭を振るなどの症状がみられます。

 

外耳炎を予防するためには、こまめに耳をチェックしたり、蒸れやすい時期には耳をめくって通気性をよくし、月に1回はトリミングサロンで耳の中の毛を抜いてもらうようにしましょう。おうちでの耳掃除のしすぎも外耳炎につながるため要注意です。獣医師の指導による正しい耳掃除に加え、点耳薬や飲み薬で治療しますが、難治性のものや、中耳や内耳に炎症が及ぶと外科手術が必要になる場合もあるので、早期発見・治療がとても重要です。

 

*詳しくは『【獣医師監修】犬の耳に関する病気といえば、外耳炎。年齢によって原因が違うって本当?』をご覧ください。

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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