子犬のうちに社会に慣らしておくことができるかどうか。それによってその子の生活が大きく変わります。子犬のうちにトレーニングができないと、他の犬が苦手になったり、飼い主さん以外の人間を怖がるようになってしまいます。
社会性を身につけるトレーニングというのは、人間社会できちんと生活するために必要なのです。
“社会化”ってなに?
社会化とは、犬が人間社会のあらゆるものに対して柔軟かつ適切に対応する力を身につけることをいいます。
生後3週齢~12週齢を社会化期といい、子犬はこの時期に、周囲の人や他の動物との触れ合い・人間社会での経験を通じて、生涯にわたる社会性と適応力を身に付けます。
社会化期を過ぎると社会化ができなくなる訳ではありませんが、警戒心や自我が強くなってくるため、初めて触れる物に対して慣れにくくなってしまいます。そのため、社会化期において色々なことを犬に経験させることがとても重要なのです。
社会化ができないとどうなるの?
社会化が十分にできないと、車や初めて会う人を必要以上に怖がったり、人との日常生活において落ち着いていられなくなったりとあまり幸せではない結果になってしまいます。
代表的な問題行動である、吠え癖や咬み癖など、様々な攻撃行動は社会化不足が原因だと言われています。
反対に、社会化が上手くできている犬は多くの人や他の犬と仲良くなることができたり、旅行などで新しい環境に置かれても、怖がらないで過ごす事ができるようになります。
犬と楽しい生活を送る為にもしっかりと社会化をしていきましょう。
具体的に何をすれば良いの?
社会化の意味と必要性を確認したところで、いよいよ具体的にやることについてご説明します。
色々なものに慣れさせる
色々なものを見せたり聞かせたり、匂いを嗅がせたり触らせたりしてみましょう。子犬にいろいろな事を経験させてあげてください。新しい事を経験させる時には、褒めたりおやつをあげるなどして「いい経験だ」と認識させる事が大切です。焦るあまり、犬を怖がらせてしまっては意味がありません。怖そうな様子があれば中止し、次の日に持ち越しましょう。
他の犬に慣れさせる
親元を離れ、室内飼育を始めると他の犬と接触する機会は極端に減ってしまいます。子犬は社会化期に他の犬と会うことで、挨拶の仕方など犬同士のコミュニケーション方法を学びます。無理をする必要はありませんが、積極的に他の犬と会わせる機会を作ってあげましょう。動物病院やしつけ教室で開催しているパピーパーティーに参加するのもオススメです。
*パピーパーティーについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
人に慣れさせる
家の中でお世話をするようになると、家族以外の人と接触する機会が少なくなってしまうので、色々な人と犬を積極的に会わせてあげましょう。可能であればその人からおやつをあげてもらうのがオススメです!犬が知ってる人や見たことのない人、子どもから老人など、いろいろなパターンの人に会わせてあげるといいでしょう。
ヒゲをたくわえた人やメガネ・帽子・傘を持っている人なども子犬は警戒します。社会化期のうちに色々な人に出会わせてあげてください。
環境に慣れさせる
動物が見知らぬものを恐れたり、避けたりすることは生存本能として自然な行動です。しかし一緒に生活していく上で、人間社会に対して恐怖心をもってしまうのは非常にかわいそうなことですよね。犬が慣れるべき対象は犬にとって見知らぬもの全てです。特に今後、犬が接触すると想定される環境には積極的に慣れさせてあげましょう。
例えば、次のような環境が挙げられます。
□ 屋外
□ お散歩ルート(横断歩道、踏切、階段、アーケード、商店街、交通量の多い道路、公園、池、など)
□ 一緒に乗る車
□ プール
環境に慣れさせる時も感覚を刺激することを意識すると良いでしょう。見せて、聞かせて、嗅がせて、触らせて、犬を徐々に様々な環境に慣らしていきましょう。
ものに慣れさせる
犬が今後触れるであろうものは全て、見せて、触れさせて、嗅がせたりするなどして慣れさせましょう。
例えば以下のものが挙げられます。
□ コーム/ブラシ/歯ブラシ/ドライヤーなどのケア用品
□ 洋服
□ キャリーケース
噛む力加減も学習させて!
社会化期に犬に経験させておきたいことのうち、特筆すべきがこの『咬みつく力の調節』です。犬は社会化期の前半に親犬や兄弟犬とじゃれたり、ケンカをしたりします。それらを通じて「相手を強く咬むと、同じように強く咬み返されて痛い」という経験をすることで、咬む力を調節する事を学びます。
しかし、親元を離れ人と暮らすようになり、人を噛んでも楽しそうに遊んでくれるようになれば、「噛むことは良いことだ」誤解してしまう恐れがあります。先述したように、社会化期にこのような認識をさせることは、将来攻撃行動という厄介な問題行動に結びつく可能性があり非常に危険です。犬が今の時期に「咬みつく力の調整」を学ばなければいけないという事を意識して対応しましょう。
子犬はものを噛むことで、それがどのようなものかを認識したり、歯の生え換わり期のむずがゆさを解消するなどしています。また、甘がみをする事で「かまってほしい」という欲求を伝えています。これは本来、子犬がするべき行動であり、自然なことです。だからこの本来あるべき行動や欲求をできるだけ否定・拒否せずに、「人のことは噛んではいけない」ということを飼い主が意識的に教える必要があります。
具体的な手順
□ おもちゃを使って遊ぶ
□ 犬の歯が指に触れた瞬間、遊びを中断する(無視)←これにより、犬は人の手に歯が当たったら楽しいこと(遊び)が無くなったと感じます。
□ しばらくして(無視は最低10秒)遊びを再開する
これを繰り返し行うことで、犬は人の事を噛んではいけないと覚える事ができます。同時に、噛みたい欲求や甘えは満たしてあげる必要があるので、コングなどの噛むおもちゃを与え遊ばせてあげましょう。
ポイントは「最後は遊んで、楽しい気持ちで終わる」ことです。
【甘がみ→無視】で終わるよりも【甘がみ→無視→遊ぶ(強化)】のように最後に遊びを入れて、犬が楽しい気持ちでしつけを終了したほうが効果的に教える事ができます。
注意事項
ワクチン接種が終わっていない犬は、他の犬との触れ合いや地面など外部との接触はできません。かかりつけの獣医師にいつから他の犬と会ってもいいか、外を歩いていいか聞いてみましょう。その時に、「社会化」をしたいのですと明確に伝えると、色々なことを教えてくれるでしょう。獣医師にとっても、ワクチンプログラムの終了が社会化期の終了に間に合わないという問題は、ジレンマの1つです。ただ、社会化期は待ってくれないので、ワクチンプログラムが終了するまでの間も、犬を抱っこして外出する、Youtubeなど、外部環境の動画を閲覧できるサイトを活用して、さまざまなシーンの音を聞かせるなど、積極的に社会化をしましょう。
ワクチンプログラム完了前にできる社会化は?
□ 抱っこして外出し人や環境に触れさせる。(ただし、地面に犬を降ろしてはいけません)
□ ごはんの時にCDやYoutubeなどで環境音(玄関チャイム、人ごみの音、電車、車の音など)を流す
□ リードや首輪・胴輪をつけて家の中を歩く
□ たくさんの人に家に来てもらい、おやつをあげてもらう
□ 抱っこしたまま他の犬がたくさんいる場所に連れて行き、犬の姿を見せておく
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