日々の暮らしの中で、愛犬のちょっとした変化に気づいてあげられるのは飼い主さんだけです。「何かがおかしい」「いつもと違うかも」という飼い主さんの直感はあなどれません。とりわけ、
「食事」「飲水」「排泄」「呼吸」という基本的な活動の変化に気づくことは非常に重要
です。ここでは、これら4つの日常の活動について、
確認すべき変化とその原因
について紹介します。
犬の適正な食事量とは?
ドッグフードのパッケージに表示されている給与量が適正量ですが、ライフステージや運動量、活動量に合わせて量やカロリーを調整してください。体重を定期的に計測し、増減がなければ、その量が愛犬に合った適正量ということです。
●食事量・食欲の異常
【症状1】 食欲が減ってきた、まったく食べない、食べたそうなのに食べない
【原因】
食欲の減少は、さまざまな原因が考えられます。内臓障害、腫瘍、感染症、ケガによる痛み、精神的ストレスなどです。ときに発熱や嘔吐、下痢、咳などを伴うこともあります。食べたそうにしているのに食べられない場合は、口内炎や歯肉炎による痛みがあるなど口腔に問題があるか、鼻や脳に障害がある可能性もあります。
【観察ポイント】
□ 口臭はきつくないか
□ 食べるときに痛がっていないか
□ よだれが出ていないか
□ 臭いだけは嗅ぐのか、まったく興味を示さないのか
□ どんなタイミングで食欲がなくなったか
【症状2】 食欲がとても旺盛(ご飯の要求が激しい、食べる量が増える)
【原因】
単に成長期であったり、妊娠や環境の変化、食事の嗜好性の問題だったりするかもしれません。しかし、ご飯を何度も要求したり、よく食べているのに体重が減少してきたりする場合は、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、糖尿病、腸の消化吸収障害、消化管内寄生虫症などが考えられます。
【観察ポイント】
□ 食べているのに体重が減ってはいないか
□ 短期間で体重が増えていないか
犬の適正な飲水量とは?
飲水量を正確に計測するのは、食事からの水分摂取もあるためなかなか難しいのですが、およそ1日に体重1㎏あたり40~60mlが適正とされています。これを大幅に上回ると多飲といわれますが、個体差や運動量の多い少ないといった日常生活の差もあります。一度、愛犬がいつもどのくらい1日に水を飲むのかを測定し、この量を基準とすれば変化を把握しやすくなります。
● 飲水量の異常
【症状1】 いつもより飲水量が減った、まったく飲まない
【原因】
飲水量が減るのは、運動量の低下、寒さなどの原因が考えられますが、明らかに水を飲まない場合は、関節炎などで痛くて首を下げられないのかもしれません。また、水を飲みたくなくなるほど体調が悪いこともあります。その場合は他にも症状が出ている可能性がありますので、よく様子を観察し、獣医師に相談しましょう。
【観察ポイント】
□ よだれが出ていないか
□ 食欲はあるか
【症状2】 いつもより飲水量が増えた
【原因】
糖尿病でも飲水量が増えますが、腎臓や腎臓の働きを補助するホルモンに何らかの異常がある場合も、体内の水分が不足がちになり、のどが渇いて飲水量が増えます。飲水量が明らかに増えたときは、動物病院を受診しましょう。
【観察ポイント】
□ 尿量に変化はないか
□ 食欲はどうか
□ 体重減少がないか
成犬の健康なウンチの特徴とは?
ウンチは、色、状態(硬さ)、臭い、回数などを毎日確認すると良いでしょう。
【正常時のウンチの特徴】
色:こげ茶色~黄土色
硬さ:つかんでも形が崩れない程度
形:断面が丸い
臭い:ウンチそのものの臭いのみ
回数:1~2回/1日
その他:ウンチ以外には何も異物はない
● ウンチの異常
【原因】
下痢の場合、非常に多くの病気が考えられますが、特に子犬や老犬は命に直結することも多いため、すぐに獣医師に診てもらいましょう。便秘は、大腸や肛門周辺の器官に閉塞や、ヘルニアなどによる神経障害によっても起こります。異物を食べてしまっても、ウンチに異常が現れることがあります。
【観察ポイント】
□ 色:ウンチの表面に血などが混じってないか
□ 硬さ:小さくコロコロしているのか、持てないほど柔らかいのか
□ 量:いつもより多すぎたり、少なすぎたりしないか
□ 回数:数日出ないのか、1日に何度もするのか
□ その他:ウンチ以外に寄生虫や寄生虫の卵が見える、いきむときに苦しく鳴いたり、嘔吐をしたりする、床にお尻をこすりつけて歩く、など
成犬の健康なおしっこの特徴とは?
おしっこの場合は、量、色、臭い、回数を観察します。
【正常時のおしっこの特徴】
量:量:体重1㎏あたり、1日に約24~41ml
色:透き通った薄めの黄色
回数:2~3回/1日
● おしっこの異常
【原因】
老化とともに腎臓機能が低下するため、おしっこの観察は特に大切です。そのバロメーターが量と色です。頻尿や多尿は膀胱炎、腎臓病、糖尿病が疑われ、尿が出ない、または血尿となるときは、尿路結石が疑われます。
【観察ポイント】
□ 1日に何度もトイレに行っていないか
□ トイレにいる時間が長くないか
□ 量が異常に多くないか
□ 色に異常がないか(血が混じる、オレンジ色をしている、キラキラしている、白っぽく濁る)
□ 排尿時に痛くて鳴いたりしないか
犬の正常な呼吸とは?
呼吸数は、1分間で15~30回が正常ですが、大型犬がより少なく、小型犬は多い傾向にあります。運動後でも、
気温が高いわけでもないのに呼吸数が40回程度を超え、ハアハアと口で息をすることが続くようであれば要注意
です。その際、呼吸方法や雑音がないかも確認しましょう。呼吸数は、犬が安静にしているとき(寝ているとき)に、お腹の上下の動きを1回とし、15秒で何回かカウントします。その数を4倍すれば、1秒間の呼吸数が算出できます。
● 呼吸の異常
【原因】
空気の通り道である鼻、咽頭、気道の異常や、心臓や肺の異常によって苦しそうな呼吸となります。また、発熱や熱中症などによって高くなった体温を調節しようとして呼吸が荒くなることもあります。短頭種は呼吸器の病気が多く、また、大型犬は心臓の病気(心筋症)が多いため、特に注意して観察しましょう。
【観察ポイント】
□ 呼吸数が速くないか、遅くないか
□ ヒューヒュー、ゼーゼーといった呼吸音をしていないか
□ 鼻がヒクヒクしていないか
□ 熱くもなく、運動後でもないのに、口で呼吸していないか
□ 胸が大きく動いていないか
□ 呼吸が浅くないか
□ 震え、よだれ、嘔吐などはないか
愛犬の状態を日常からよく観察しておけば、ちょっとした体調不良に気づくことができ、そうすることで病気の予防・早期発見につながります。そのためにも、日ごろから様子をよく観察することを習慣づけると良いでしょう。
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【うつるか】 ■ 他の犬にうつる ■ 人にうつる ■猫にうつる
【命への影響度】 ■ 命にかかわるリスクが高い
【費用面】 ■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額