尿路結石とは尿中のカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが結晶化し、結石となったもののことを言います。尿路結石になってしまうと、血尿が出たり排尿時に痛みを伴うこともある上、一度治っても再発しやすい傾向があります。また、結石が尿路に詰まって排尿できない状態になると最悪の場合は命を落とす可能性もあります。ここでは、愛犬に尿路結石が見つかったときの治療法や再発防止の方法など、飼い主さんが知っておくべき情報を解説します。

 

尿路結石は尿中の成分から作られる

腎臓の働き

体内で生成された老廃物は、血液に乗って腎臓へ届けられます。腎臓は浄化装置のようなもので、血液中の老廃物をこし取り、尿として体外へ排出させ、キレイになった血液を再び体に返す役割を担っています。

 

 

 

腎臓で生成された尿は尿管を通り、膀胱へ送られ、最終的には尿道を通って体外に排出されます。この尿の通り道のことを、尿路と言います。

 

なぜ結石ができるの?

ミネラルが集まり、くっつくと結石になる

食べ物や飲み水に含まれるミネラルは、体にとって必要なものです。とはいえ、体が必要とするミネラルの量は決まっているので、過剰なミネラルの一部は腎臓で処理され、尿として排出されます。ミネラルには、成分同士がくっつくという性質があるため、尿中のミネラル濃度が高くなると結石になる前の結晶や結石ができやすくなります。そのため、不要な血液から尿を作り濃縮する腎臓や、尿をためる膀胱などで結石ができてしまうのです。

 

尿のpHも原因のひとつ

ミネラル同士がくっついて結晶・結石化するには、pH(酸性・中性・アルカリ性を示す指数)も大きく関係しています。ミネラルの種類ごとに結晶・結石化しやすいpHがあるのです。体質や食べ物などが原因で、尿路結石を作りやすいpHになると、結石ができやすい状態になってしまうのです。

 

結石ができるとどうなるの?

尿路結石がどこにあるかで、症状は異なります。

膀胱に結石ができた場合

尿路結石が原因で引き起こす犬の病気のうち、最も多いのが膀胱炎です。膀胱の中で結石がゴロゴロして膀胱粘膜を傷つけてしまい、膀胱に炎症や感染が起きてしまいます。痛みが強いケースも多く、血尿頻尿などを引き起こします。

 

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膀胱から尿道に結石が流れた場合

比較的小さな膀胱結石が尿道の方に流れて行った場合、結石が尿道に詰まってしまう「尿道閉塞(尿閉)」を起こすことがあります。特に、尿道が細くて長い男の子に多いと言われているので、注意が必要です。完全に塞がっていない場合は、少量の尿を頻繁にしたり、少量の血尿が出ることもあります。

 

結石が完全に尿道を塞いでしまうと、尿をすることができなくなります

 

 

こうなると非常に危険な状態で、一刻も早く動物病院で診てもらう必要があります。本来なら体外に排出すべき老廃物が体内に溜まり続けるせいで、尿毒症になってしまいます。全く排尿できない状態が続くと、2-3日で死に至ることもあるのです。

尿道が太い女の子ではあまり見られない状態ですが、まれに発生することがあるので、結晶や結石が見つかった子の場合は、トイレの様子をしっかり確認してあげることが大切です。

 

腎臓に結石ができた場合

犬の場合、結石は膀胱でできることが多いですが、まれに腎結石になることがあります。腎結石は腎臓を圧迫するため腎機能の低下を引き起こすことのある病気です。急に元気をなくしたり、腰を痛そうにしているときは、腎結石によって腎臓に感染や炎症を起こしている可能性があるため注意が必要です。

 

腎臓から尿管に結石が流れた場合

小さな腎結石が尿管の方へ移動すると尿管結石になります。犬の尿管はとても細いため、結石がつまりやすい場所の一つです。

尿管結石は片方のみであればそれほど大きな症状を起こすことはありませんが、慢性化するとその上に繋がっている腎臓の機能が低下し、反対側の腎臓にも少しずつ負担がかかってしまします。さらに、両側が詰まってしまうと急性腎不全を起こし、一気に状態が悪くなることがあるので注意が必要です。

 

結石の治療法

尿路結石の治療法は大きく分けて食事療法と手術があります。どちらの方法を選択するかは、結石の位置・種類・大きさ・症状などによって変わってきます。

食事療法による治療

犬の尿路結石で問題になるのは、マグネシウムからできている「ストラバイト結石」と、カルシウムからできている「シュウ酸カルシウム結石」の2種類が多いです。この結石のうち、ストラバイト結石は食事によって溶解させることが可能です。

 

食事療法の注意点

□ 特定の種類の尿路結石にしか効果が期待できない。

(シュウ酸カルシウム結石は溶解させることができない。)

□ 療法食を食べている間は基本的におやつなども与えてはいけない。

□ すぐには効果が出ないため、症状が重篤な犬(尿閉や重度の血尿)には使用できない。

□ 尿に出ている結晶が結石のすべての成分とは限らないため、必ず効果があるとは限らない。

(ストラバイトが出ていてもシュウ酸カルシウムとの混合結石であることもある。)

 

手術による治療

大きな結石やシュウ酸カルシウムが疑われる結石は手術で取り出すことが一般的です。全身麻酔をかけて開腹し、尿路結石を取り出すというものです。ただし、手術で結石を取り除いても再発することが多いので、尿路結石ができにくい身体作りのためにも術後の食事療法が必要です。

食事療法は手術よりも犬の体に負担をかけないというメリットがある一方で、結石を溶かすのに時間がかかる上、確実性に欠けるという面もあります。食事療法と手術どちらを選択するかは、緊急性・症状・結石の種類などから判断する必要があります。

飼い主さんができること

愛犬の食事管理をしっかり

膀胱結石は再発しやすいため、一度発症している子にはしっかりした食事管理が必要になります。牛乳やほうれん草、サプリメントなど特定のミネラルが偏っている食べ物を与えるのは控え、かかりつけの獣医さんの指示に従って食事を管理してあげてください。

また、ミネラルがたくさん入っている硬水のミネラルウォーターは与えないようにしてください。軟水、もしくは水道水を、無理のない程度にしっかりと飲ませてあげましょう。

 

日々のトイレはきちんと管理

結石が詰まっておしっこが出なくなってしまうと、短期間で命に関わるようなことに発展するケースもあります。きちんとトイレができているか、血尿頻尿が出ていないか、確認してあげましょう。血尿の中には、鮮血が混じったことが一目でわかるようなものから、オレンジ色っぽくなるだけの、わかりにくいものもあります。トイレシーツを白色に変えるなどして、ちょっとした異変にもすぐに気付いてあげられるようになるといいですね。

 

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お世話をしながら気付い事たことから病気を調べる

「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

例えば、下記のような状態から、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

(元気)■ 元気がない ■ 疲れやすい ■ ぐったりしている ■ 意識がもうろうとしている

(食事)■ 食欲がない ■ 食べすぎる ■ 水を飲まない ■ 水を沢山飲む

(体型)■ 太る ■ 痩せる ■ お腹がはっている ■ 腫れている

(体温)■ 体が熱い ■ 体が冷たい

(挙動)■ 痛がる ■ 足をあげる ■ 歩かない ■ 頭を振っている ■ ふらつく ■ ぐるぐる回る ■ 遠吠えをする

(性格)■ 性格が変わる

 

他にも次のような切り口でさまざまな傷病を調べることができます

【治療面】■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり

【症状】■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い

【対象】■ 子犬に多い ■ 高齢犬に多い ■男の子に多い   ■女の子に多い ■ 大型犬に多い ■小型犬に多い

【季節性】■春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度】■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつりやすさ】 ■ 他の犬にうつる ■ 人にうつる ■猫にうつる

【命への影響度】 ■ 命にかかわるリスクが高い

【費用面】 ■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防面】 ■ 予防できる ■ワクチンがある

 

「うちの子おうちの医療事典」で「尿路結石」に関連する病気を調べる

膀胱炎

尿道閉塞

尿石症

 

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