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愛犬がトイレに頻繁に行くようになったり、血尿が出るのは膀胱炎の代表的な症状です。膀胱炎は即座に命を落とすような病気ではありませんが、再発しやすく、治療をしないで放置しているとひどい痛みが出るようになったり、慢性化してしまうので注意が必要です。膀胱炎は犬によくある病気のひとつですので、愛犬がかかってしまったときに、正しい対処ができるようにしておきましょう。

そもそも膀胱はこんな役割をしています

全身をめぐった血液は、組織に必要な栄養分を渡し、かわりに組織から老廃物を受け取ります。そして腎臓でこされてキレイになった血液は、再び全身をめぐるのです。このとき、腎臓でこしだされた老廃物は尿として膀胱に溜まります。そして尿道を通って体の外に排出されるのです。

犬の膀胱炎とはどういう状態なの?

cavalier spaniel puppy

膀胱炎は何らかの原因で膀胱に炎症が起きている状態で、若い犬から高齢犬まで幅広い年齢でよく見られる病気です。

炎症とはどういう状態?

ウイルスや細菌などの侵入や腫瘍などがあったとき、体は有害なものを体の外へ追い出そうとします。また、傷を負ったときには、壊れた組織を修復しようとします。この働きをするのが、白血球の仲間である炎症細胞という細胞です。炎症細胞は異物に侵入されたところや傷口に集まるのですが、その働きの結果、熱が出たり痛くなったりするのです。

犬が膀胱炎になる原因とは

膀胱炎は、膀胱の粘膜が炎症を起こすことで、膀胱からの出血や残尿感が起こり、血尿や頻尿を起こす病気です。膀胱の炎症は、以下のようにいくつかの原因によって起こります。

細菌性膀胱炎

細菌性膀胱炎は、細菌が尿道を伝って膀胱に入り込むことで起こります。オスに比べて尿道が短いメスは外陰部から細菌が入りやすいため細菌性膀胱炎にかかりやすいのです。また、免疫力の低下した高齢動物にもよく起こります。

膀胱結石

腎臓や膀胱のような尿の通り道の中で、カルシウムなどが石のように固まってしまうことがあります。この固まりを結石と言います。結石が膀胱の粘膜を傷つけることで炎症がおき、膀胱炎へと発展してしまうのです。結石ができる原因は様々ですが、もともとの体質やミネラルの過剰摂取(犬にミネラルウォーターを与えてはいけません)、水の摂取量が少ないことでおこります。

特発性膀胱炎

特発性膀胱炎は、はっきりした原因のわからない膀胱炎です。精神的なストレスがかかわっている可能性が指摘されていますが、膀胱に突然炎症が起こって血尿が出ます。飼い主さんの旅行やホテルに預けられたなど、ストレスがかかるたびに血尿が出るという犬もいます。

犬が膀胱炎になったときの症状は?

膀胱炎の主な症状は、血尿と頻尿です。また、結石による膀胱炎や重度の膀胱炎がある場合は、腹痛がある場合もあります。
膀胱炎になると、膀胱に少し尿が溜まっただけで残尿感が出るため、頻繁にトイレに行くようになります。トイレに行ったところで少しの尿しか出ないので、トイレシーツがほとんど濡れていないように見えるかもしれません。

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このような場合は至急病院へ!

膀胱炎であれば、ごくわずかでも必ず少量の尿が出ています。完全に尿が出ていない場合は、別の病気の可能性があるので、早急に病院に連れていったほうがいいでしょう。
また、膀胱炎では頻尿や血尿があっても、元気や食欲まで落ちることはあまりありません。元気や食欲が落ちている場合や、他に症状がある場合は上記のような危険な病気の可能性があるので、すぐにでも動物病院で診てもらった方がいいでしょう。

 

獣医さんはこのようにして診断をしています

close up of vet with dachshund dog at clinic

尿検査

尿検査では、血尿や尿の炎症の有無だけでなく、膀胱炎の原因を見つけることも可能です。尿検査では、尿中の細菌や結晶(膀胱結石の成分)、腫瘍細胞の有無の確認もできるため、膀胱炎の有無だけではなく、原因の推測を行うためにも必要な検査です。ただし、尿検査で原因を100%確定することはできないため、超音波検査も組み合わせる必要があります。

超音波検査

膀胱炎の診断には、超音波検査も有効です。超音波検査では、結石や腫瘍(ポリープ)の有無などを調べることができるだけでなく、腎臓や前立腺に異常がないか、子宮に膿がたまる子宮蓄膿症にかかっていないかなど、他の病気のチェックもできます。

レントゲン検査

レントゲン検査は必ずしも必要な検査ではありませんが、結石が原因で膀胱炎になっている場合には、結石の大きさや数がわかる上に、尿道に結石が詰まっていないかどうかも合わせて確認することができます。

膀胱炎の治療法

結石が原因になっているケース

結石が原因で膀胱炎になっている場合は、膀胱炎の治療と同時に結石を取り除く治療をします。医療用のフードを使って結石を溶かす場合もあれば、手術をして取り除く場合もあります。手術になった場合でも、術後に結石ができにくい特殊なフードを食べ続ける必要があります。

細菌やストレスが原因になっているケース

細菌を抑えるための抗生剤と、炎症を鎮めるための消炎剤を投与することが一般的です。注射や飲み薬をしばらく使うことで、ほとんどの犬では比較的早く症状が改善します。ただし、症状がなくなったからといって投薬を止めてしまうとすぐ再発してしまうこともあるので、かかりつけの獣医さんから言われた通りに必要な期間お薬を飲みましょう。

飼い主さんができること

再発したら必ず病院へ

膀胱炎は再発しやすい病気です。再発した時に「どうせ膀胱炎だからいっか。」と考えて無治療で放置すると、なかなか治らなくなってしまったり、腎臓へ炎症が波及して腎臓病(腎不全)を超す可能性があります。再発が疑われる場合には、必ず早めに治療を受けさせてあげてください。

トイレを我慢させない

排尿することで、尿道や膀胱に付着した細菌を洗い流すことができるので、つまり尿が膀胱にたまる時間が長くなればなるほど、膀胱炎が起こりやすくなります。特に膀胱炎を起こしやすい子では、尿を我慢させる時間を短くするようにしましょう。

水分をたくさん取らせる

水分をたくさん取っていれば、トイレに行きやすくなります。寒い時期になるとどうしても水分摂取量は減ってしまうので、カリカリをふやかして与えたり、ウェットフードを混ぜるなどして、食べ物からの水分摂取量を増やしてあげるとよいでしょう。
きゅうりや茹でたキャベツなど、水分がたくさん含まれた野菜をおやつにあげることも効果的です。

飲み水に注意する

人間にとっては害のないミネラルウォーターですが、犬に飲ませるのはNGです。ミネラルウォーターや井戸水のように、ミネラルの含有量が高いものについては、結石を作る原因にもなってしまいます。

 

膀胱炎という病気は人間にもある病気なので、名前を聞いたことがある方は多いかもしれませんね。確かに命にかかわるようなことになる可能性は低いものの、きちんと治療をしてあげないと大変なことになってしまう場合もあります。
また膀胱炎だと思っていたら、実は膀胱に腫瘍があった、なんてことも十分考えられます。必ずかかりつけの獣医さんに相談しながら、愛犬の健康を守ってあげてくださいね!

 

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