犬の血尿には真っ赤で分かりやすいものや、「これって血尿なの?」と色が薄くて識別しにくいものもあります。犬が血尿になった時、飼い主さんはどのような対処をすべきなのでしょうか?
血尿のサインと血尿になりやすい犬のタイプ
普段使っているペットシーツが青かったり、血尿の色が薄いと血尿に気づけないこともありますよね。そんな時には、血尿と同時に出る犬の行動を観察してみてください。また、性別や年齢、犬の性格によっても血尿や、血尿に似た症状が出やすい傾向があります。犬の血尿は自然治癒することはほとんどありません。愛犬の行動をきちんと観察し、些細な変化を見逃さず、病気の早期発見につなげましょう。
血尿と同時に見られることが多い行動
・頻尿(何度もトイレに行く)
・排尿困難(トイレにかかる時間が長くなる)
・陰部を気にする
これらの行動が目立つ場合には血尿を疑ってみてください。そしてもし「血尿かも…?」と思ったら、以下の方法を参考に血尿かどうかを調べてみるといいでしょう。
・白いペットシーツに変更する
・トイレの後に、白いティッシュペーパーを押し当ててみる
血尿はぽたぽた垂れることもあるので、いつもはしない床に水滴として落ちていることも。トイレ後、ティッシュを直接押し当ててみるか、もしくはペットシーツに押し当てて確認してみてください。鼻血や体からの出血は真っ赤ですが、血尿は薄いピンク色やオレンジ色をしていることがあります。
血尿や、それに似た症状が出やすい犬
神経質なタイプの犬
神経質な子だと、環境の変化や飼い主さんの不在だけでも血尿になってしまう子がいます。この場合の原因として圧倒的に多いのが「膀胱炎」で、ストレスや細菌が主な原因です。膀胱の痛みで元気や食欲が落ちることはありますが、全身状態は良好であることが多いでしょう。頻尿の症状が出ることが非常に多い場合は膀胱炎が一番疑わしい病気です。
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高齢犬
高齢犬の場合は「膀胱腫瘍」の可能性も考えられます。症状は膀胱炎と似ていますが、血尿が長引くことが多く頻尿の症状は出ることも出ないこともあります。また、膀胱腫瘍が大きくなると、膀胱の出口を腫瘍が覆ってしまい排尿困難を引き起こすこともあります。
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去勢手術、避妊手術をしていない場合
子宮や前立腺などにおきた炎症が、血尿や血尿に似た症状を引き起こすことがあります。緊急度が極めて高い、命に関わるケースもあるので、気付いたらすぐに病院につれていってあげましょう。
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血尿になったらすぐに病院へ!犬の症状からみる病気の緊急性
血尿になった犬は、今どんな状態でしょうか?血尿が出たら飼い主さんはなるべく早く病院へ連れていかなければなりません。また、その時の症状によっては命にかかわる場合もあります。緊急度が高い場合には夜間でも救急病院へ連れていくようにしましょう。
【緊急度高】すぐに病院へ連れていく/救急病院も考える必要のある場合
歯茎や舌の色が白い
重度の貧血が考えられます。貧血というと、人間の女性によく見られる立ちくらみを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、ここでいう貧血はそれとは全く別物。酸素を運ぶ役割をしている赤血球が破壊されることで、体に酸素が行き渡らない状態のことを指します。命にかかわる非常に危険な状態です。貧血の原因としては、玉ねぎを誤って口にしたことで中毒症状を起こしている可能性や、免疫にかかわる病気を患っていることなどが考えられます。
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ぐったりしている
重度の腎孟腎炎や前立腺炎、膀胱腫瘍や前立腺腫瘍が原因となって泌尿器のみならず、全身へ強いダメージを与えている可能性があります。ぐったりしている場合はそれ以外の病気も考えられますは、いずれにしてもすぐ病院へ連れて行ってあげましょう。
避妊をしていない
生理もしくは血尿だと思っていたものが、実は陰部から出血していたり、膿が混ざったりしている場合だと、事は一刻を争います。子宮蓄膿症にかかっている場合があるからです。これは子宮の中に膿がたまる病気で、悪化するとたまった膿で子宮がパンパンになります。子宮が破裂すると、たまった膿が体に流れ出て死に至るので、早期治療が必要となります。また子宮がパンパンになっていない状態でも、全身状態に影響を与える可能性は高いです。避妊していない子で血尿が出た場合は、早急に獣医さんに相談しましょう。
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去勢をしていない
前立腺という、男の子だけにある生殖器が細菌などに感染して起こる「前立腺炎」になると血尿になります。激しい痛みを伴う病気ため、早めに病院につれていってあげましょう。
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尿が出ているかわからない
おしっこの量が非常に少ない場合、結石や腫瘍などが尿道をふさいでしまう尿道閉塞を起こしている可能性があります。完全に尿道が詰まってしまうと体内の毒素を排出できず、数時間で全身状態が悪化する可能性もあり、命に関わります。一刻も早く病院で診てもらう必要があります。
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ぐったりしている
腎盂腎炎や腫瘍、溶血性貧血などが全身へ強い影響を及ぼしている可能性が高いです。最悪、命にかかわる可能性もあるので、すぐに診てもらいましょう。
【緊急度低】緊急性は低いが、早めの治療が必要な場合
元気で食欲があり、血尿・頻尿以外の症状がみられない
軽い膀胱炎や膀胱結石、前立腺肥大などが考えられます。緊急性はありませんが、早めに病院へ行くようにしてください。放置すると悪化したり、合併症を引き起こしたりするだけでなく、最悪の場合、手遅れになったりする可能性もあります。血尿がでている状態で「元気も食欲もあるからいいや」としばらく様子を見るのは絶対にやめましょう。
また、病院へ行く場合には尿を持っていくと診断の助けになることがあります。尿を取るのが難しい時は、床にした尿をスポイトで吸ったり、ペットシーツを絞ることで尿を集めてみてくださいね。
犬の血尿は、必ず受診が必要です。いざというときのために、いつでも対応してくれる救急病院も、事前に調べておくようにしましょう。
☞『うちの子おうちの医療事典』で「血尿」に関連する病気を調べる
膀胱炎
子宮蓄膿症
尿道閉塞
尿石症
貧血
ネギ中毒
中毒
溶血性貧血
前立腺肥大
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