新たに犬を家族に迎えたとき、「去勢」について一度は考えることがあるのではないでしょうか?手術を受けさせたほうがいいのか、それにはどんなリスクがあるのか…飼い主さんは正しい知識を持って、判断する必要があります。

ここでは獣医師監修のもと、去勢手術による影響や具体的な流れについて解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。愛犬にとってどの選択が幸せなのか、飼い主さんが納得できるまでしっかりと考えて決断するようにしましょう。

去勢手術とは

オスは通常8~10ヶ月くらいで大人の体に成長し、子どもを作ることができるようになります。去勢手術とは陰嚢という精巣を包んでいる袋を切開して精巣を摘出することで、子どもを作れない体にするためのものです。

 愛犬に去勢手術を受けさせたらどうなるの?

去勢手術を受けさせると、子どもを作ることができなくなる以外にも、様々な影響が出てきます。飼い主さんはその影響についてきちんと理解した上で、愛犬に去勢手術を受けさせるかどうか、判断する必要があります。

病気の予防につながる

去勢手術をすると、オス特有の病気にかかりにくくなると言われています。代表的な病気をご紹介します。

精巣腫瘍

精巣にできる腫瘍です。特に、潜在精巣といって、精巣が正常な位置まで下りてこないで、おなか付近にとどまっている場合は、腫瘍になりやすいと言われています。高齢犬の潜在精巣では、精巣腫瘍の発生率は10%以上と言われています。高齢になってから発症する事が多く、治療には手術が必要なためリスクを伴います。

前立線肥大

オスの生殖腺である前立線が肥大して、頻尿や便秘などの症状がでます。老犬に多く見られる病気ではありますが、症状が出ない場合もあるので気付かないことも多いのです。隠れた前立腺肥大は、未去勢のオスの75%以上がかかっているという論文もあります。若いうちに去勢手術をする事で高い確率で予防する事ができます。

発情中のストレスが減る

オスはメスと違い、定期的な発情サイクルというものはありません。発情しているメスが近くにいることで発情します。犬の嗅覚は非常に優れていて、オスは遠く離れたところにいる発情したメス犬の存在も嗅ぎわけると言われています。発情したメスが近くにいるのに交尾できない状態はオスにとって大きなストレスとなりますが、去勢手術をすればこのストレスは無くなります。

行動に変化がおこる場合も

テリトリー意識によるマーキングや、他のオスとの争いなどのような攻撃行動が少なくなる場合もあります。ただ一方で、あまりにも幼いうちに手術をすると、オスの性ホルモンの影響を受けず、大胆性に欠けた臆病な犬に育ってしまうという研究も報告されています。臆病な子は自分を守ろうとするために、攻撃的になることもあるので、注意が必要です。

去勢手術を受けることで負わなければならないリスク

去勢手術はいい面ばかりではありません。ここでは、去勢手術を受けさせることで考えなければならないリスクを解説します。

 全身麻酔のリスク

未だに解明されていない全身麻酔のメカニズム

去勢手術は全身麻酔をかけて行われるのですが、この全身麻酔をかけること自体にリスクがあります。

全身麻酔の効き方は人も動物も同じで、麻酔の薬剤が脳に届くことで意識がなくなっていきます。しかし、麻酔薬が脳にどのように作用しているのかは、現代の医療でもまだ解明されていません。詳しいメカニズムはわかっていませんが、麻酔は投与する量が適性量よりも少ないと効果が得られず、反対に多すぎると目覚めることができず、そのまま亡くなってしまうということがわかっています。

麻酔のリスクとは?

犬が麻酔によって死に至るケースは稀ではあるものの、可能性はゼロではありません。動物病院でもきちんと説明をされると思いますが、麻酔によるリスクについて解説している書類に同意のサインを求められます。

特に健康状態が良好ではない場合は、麻酔によるリスクが大きくなるため、事前の検査をきちんと受けさせてあげるといいでしょう。

愛犬に去勢手術を受けさせる判断をしたら

去勢手術に対する考え方は人によって様々です。「去勢手術を受けさせてあげて、発情中のストレスを和らげてあげたい」と思うことも、「リスクを背負って全身麻酔をかけて去勢手術はしたくない」と思うことも、間違いではありません。誰よりもその子の近くにいる飼い主さんが、その子の幸せを考えて出した結論であれば、きっとそれが正しい判断なはず。

ここでは、「去勢手術を受けさせてあげたい」という飼い主さんのために、去勢手術の流れや注意点などを解説します。

去勢手術の流れ

一般的には以下の流れで去勢手術を行います。

予約

かかりつけの獣医さんと相談しながら、適切な時期を決めて手術を行います。

術前検査

手術当日かもしくはその前に、健康体かどうか、全身麻酔をかけても問題がない体かどうかをチェックします。問診・触診・聴診などの身体検査のほか、血液検査・レントゲン検査・超音波検査・尿検査などを行うこともあります。

また、乳歯が残っていないか、精巣がちゃんとおりてきているかなども確認します。

手術当日

全身麻酔をかける前になにか食べてしまうと、食べ物や唾液、胃液などが気管に入ってしまう可能性があるので、基本的に絶食となります。お水を飲んではいけない場合もあるので、獣医さんの話をよく聞いておきましょう。

手術が終わったら・・・

手術後は傷口の消毒をし、麻酔から覚めるのを待ちます。状態が安定すればおうちに帰っても問題ないので、通常であれば半日~1日程度でおうちに帰れるでしょう。なにかあったときにすぐ対処できるよう、帰宅後はできるだけ一緒にいてあげてください。

また、以下のポイントにも注意してください。

傷口が開かないように

帰宅後は激しい運動を避けましょう。また、傷口を舐めさせないようにすることも重要です。エリザベスカラーをしていても傷口に届いてしまったり、傷口が開いたりしている場合は、すぐに獣医さんに相談するようにしましょう。

ごはんの量

全身麻酔をした後に、いきなり大量のごはんを与えてしまうと、吐いたり体調を崩してしまう場合があります。ごはんの量は先生と相談して決めましょう。

抜糸

術後、1週間程度で抜糸となります。

去勢手術の適正時期は?

実は、男の子には発情期が無いので、いつまでに去勢手術を受けるべきかというデータはありません。しかし、性的ストレスを感じさせない様にするためには、発情したメスに会う前に去勢手術をしてあげる事が大切です。生後6か月~7、8ヶ月で手術を推奨しているところが多いでしょう。また、足をあげて排泄をする事が習慣になる前に去勢手術をした場合は、その後も足をあげないで排泄する子になる事が多いです。

去勢手術の費用と時間は?

犬種やその子の状態によって異なりますが、手術時間は30分程で終わります。料金は2~3万円ほどですが、この金額に手術前の検査も含まれているのかどうか、事前に確認することをおすすめします。病院によって異なるので、価格・時間・手術の流れについては事前に確認しましょう。

去勢手術において、飼い主さんが注意すべきこと

手術前

子犬に去勢手術を受けさせる場合は、事前に何度も動物病院に通って、病院の雰囲気に慣らしておくといいでしょう。特に不安を感じやすい子は、去勢手術をきっかけに病院嫌いになってしまうことがあります。子犬の時期にはじめて飼い主さんから引き離されて、病院で痛くて怖い思いをすることになったら、病院嫌いになるのも頷けますよね。

中には病院が嫌いすぎて暴れるために、なかなか治療ができないという子もいます。愛犬を病院嫌いにさせないためにも、手術の前から定期的に通っておくことをオススメします。体重測定や肛門腺絞りなどで動物病院に連れていくのもいいでしょう。獣医さんや病院のスタッフの方から、おやつを与えてもらうのも効果的です。手術前になるべく病院に対する不安を取り除いてあげてください。

 手術後

去勢手術をすると、繁殖のために使うはずのエネルギーが不要になります。そして、基礎代謝も下がるので、手術の後は太りやすくなってしまいます。術後の食事の量は、かかりつけの獣医さんと相談して調節しましょう。

 

 

去勢手術を受けさせるかどうか判断することは、とても難しいことです。その子にとって幸せなのはどのように生きることなのか、また一緒に暮らすうえでどんなカタチが理想なのか。絶対的な正解というのはなく、その子の体質や性格によっても選択は変わってくると思うので、かかりつけの獣医さんとよくよく相談して、判断するようにしてくださいね。

アイペット獣医師

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