概要

犬の乳腺腫瘍は、母乳を作る働きをする乳腺という部分にできる、乳腺由来のしこりのことです。犬の乳首はだいたい左右5個ずつ、計10個あり、わきの近くから足の付け根の近くまで広くあります。直接触れることが出来るものなので、お腹をなでている時などに飼い主が見つけることが多く、犬も長寿化している最近では、どこの動物病院でも見つけられることが非常に多い腫瘍のひとつです。乳腺腫瘍は悪性のもの(がん)と良性のものがあり、その比率はどちらも50%くらいですが、手術でしこりを採って検査しなければどちらかわかりません。良性の場合は手術して取りきれば心配ありませんが、悪性の場合、その半分は転移の可能性もあります。全ての犬種で発生する可能性があり、10歳近くなると増えてきます。転移の多くはリンパ節や肺にできますが、肝臓や骨にできることもあります。

こんな症状が出たら気をつけて

乳腺はお腹側全体にあるので、乳首から離れた位置にできることもよくあります。触ってすぐにわかるので、しこりがないか定期的に触ったり、毛をかき分けてチェックすると良いでしょう。数ミリの小さなしこりを見つけたら、大きくなっていくかどうか数週間様子を見て、大きくなっていくようなら診察を受けて下さい。大きさで悪性か良性かの判断は出来ませんが、2センチ以上のものである場合は悪性の可能性が高くなるので、早めに診察を受けて下さい。しこりがよほど大きくならなければ、痛みが出たり食欲が落ちたりといった他の症状が出ないので、小さいうちに飼い主が気付くことが大切です。

原因

はっきりと断言できる原因はありませんが、性ホルモンが発生率の増加と関係していると言われています。腫瘍は加齢に伴い発生率が上がります。

治療方法

外科手術

比較的若く、血液検査やレントゲン検査で麻酔や手術に耐えられると判断された場合は、

手術でしこりを含め、乳腺を全て取りきることで根治(再発や転移がない)を望めます。小さく腫瘍だけを取ると、目に見えない腫瘍細胞を取り残して再発する可能性があったり、乳腺自体が残っていると後々新たにしこりができてしまい、結局また手術することになる可能性があるので、たとえ数ミリのしこりであっても大きく取ることが一般的です。理想はしこりのできた片側全て取ることですが、数カ月から数年の間ずっと小さいままといった、いかにも良性という場合などは、リンパの流れを考慮して上から3つまたは下から3つといった部分切除をすることも多くあります。取ったしこりは病理検査をし、良性で取り残しがなければ、その後はいつもの生活が送れますが、定期的な健診は受けた方が良いでしょう。もし悪性の場合でも、手術で取りきれていて、血管やリンパに浸潤して(腫瘍細胞が入り込んで)いなければ、定期的な健診を受けるだけで通常の生活が送れます。

化学療法

もし悪性の診断が出て、手術で取りきれていなかった場合や、血管やリンパに浸潤があった場合は、転移(他の組織にがん細胞が移り、増殖すること)の可能性があるため、抗がん剤による化学療法を提案されます。しかし手術ほど良好な効果があるものではないうえ、乳腺腫瘍に対する成績はあまりありません。また、食べなくなったり吐いたり、免疫力が低下したりという様々な副作用もあります。その子の元気や食欲、体力があるかなど総合的に見て、副作用よりメリットが上回りそうであれば実施するということになります。

放射線療法

がんの部分に放射線をあててがん細胞を死滅させる放射線療法という手段もあります。メスを入れる必要がなく、体への負担は少ないのですが、設備投資が大きいため一部の施設でしか受けることは出来ず、あまり一般的とは言えません。

免疫療法

近年注目されているものとして、自己の免疫細胞を利用した免疫療法があります。血液を採取して、その中の免疫細胞を増やしてから体に戻すことで、免疫力を高める効果があります。がんの末期は、痛みやだるさでとてもつらいものです。がんをなくすことはできませんが、副作用がほとんどなく、苦痛をやわらげて生活の質を高め、寿命を延ばすことができると言われています。抗がん剤や放射線療法と合わせて、これまで根治できなかったケースの治療効果を高めることが期待されています。

予防

発生について性ホルモンとの関連が知られているため、将来出産させたいという希望がなければ、早期に子宮と卵巣あるいは卵巣のみを摘出する避妊手術が推奨されています。特に性成熟する1歳になる前に避妊すると、将来乳腺腫瘍が発生する確率はほとんどなくなります。技術的にも難しい手術ではないため、若くて体力のある時期に避妊手術を受けることは、高齢で多くなる子宮蓄膿症など他の病気の予防にもなるため、メリットが大きいと言えます。近年、日本でもオーナーの予防医療の意識の向上もあり、早期に避妊手術を望む人が増えています。

 

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アイペット獣医師

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