ふと気付くと、あちこちで寝ているのが犬。「この子はいつも寝てるけど、大丈夫かな?」と心配したことはありませんか?ここでは犬が長時間眠る理由や、正しい睡眠時間、さらには睡眠時間からわかる症状や病気について説明します。ついつい人と同じように考えがちな犬の睡眠時間ですが、この機会にぜひ正しい知識を身につけましょう!

犬の睡眠時間が長い理由

犬が長い時間、そしていつでも眠っていられることは、もともと狩りをする動物であったという、ルーツが関係しています。以下ではその要因を2つに分けて説明します。

夜行性であったから

狩りにあたっては、気配を隠しやすく獲物を狙いやすい夜に行動することが都合が良いため、犬は人と同じように一晩中寝るという習慣がありませんでした。そのため活動を休める日中に寝る性質がありましたが、やがてペットとして人と一緒に生活するようになると、適応能力が優れている犬は人の生活リズムに合わせて夜に長く眠るようになりました。しかし、前述した活動しない日中に眠る性質が今も根強く残っているため、犬は昼も夜もよく眠るようになったと言われています。

目覚めてすぐに行動する必要があった

犬は狩りをする動物であるために自らも襲撃されることもありました。このようなリスクを回避すべく、気配を感じたらすぐに動き出せるように睡眠時間の多くが、「浅い眠り(=レム睡眠)」であることが求められました。加えて、狩りはエネルギーを大量に消費するので、体力温存のために睡眠時間は多く確保する必要もあります。そのため、活動の合間を見つけてはこまめにどこでも眠るようになったのです。

犬の睡眠時間は浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)の2つのパターンがあります。

  • 浅い眠り(レム睡眠):体は休まっているが、脳が起きている状態。夢を見るときはこの状態の睡眠。
  • 深い眠り(ノンレム睡眠):体も脳も眠っている状態。

人の場合、睡眠時間全体の80%は深い眠りで20%が浅い眠りと言われていますが、犬の場合はその逆で、深い眠りは20%にも満たず、その大半が浅い眠りだと言われています。物音がするたびに犬が目覚めてしまうのはこのためです。

 

犬の睡眠時間の平均は?

成犬の睡眠時間は12~15時間

ワシントン大学の調査によれば、人の平均睡眠時間が8時間であるのに対し、犬は10.6時間とされていました。ただ現在は成犬(1~6才ごろ)は12~15時間が一般的とされています。元気な犬でも一日の半分以上を睡眠に充てなくてはなりません。

 

幼犬の睡眠時間はやや長め

幼犬は多くのことを学習し、好奇心旺盛であちこちを動き回ります。そのため、かなりのエネルギーを消費し、回復のために睡眠時間を多く確保する必要があります。子犬を迎えたとき、たくさん一緒に遊んであげたいと思う方もいらっしゃるでしょうが、きちんと睡眠時間を確保してあげることも飼い主さんの責任です。

 

老犬の睡眠時間もやや長め

老犬も成犬に比べて、睡眠時間が長くなります。老犬は体力が衰えるので、より多くの休息が必要となります。子犬と比べると活発に動くこともないので、ごはんとトイレ以外はほぼ寝ているように感じるかもしれませんね。

 

その他に睡眠時間を左右する要因

このように、睡眠時間を左右するのは主に成長度合いですが、他にも種別、大きさなどが関わってきます。例えば、超大型犬(ニューファンドランド、マスティフ、セントバーナードなど)の睡眠時間は比較的長く、作業犬(シベリアンハスキーボーダーコリー)は長期間かけて活動できるように睡眠時間は短いと言われています。もちろん個体差もあるので、一度飼っている犬の普段の睡眠時間は大よそ把握しておく方がよいでしょう。

 

長すぎる睡眠時間はキケン

犬の睡眠時間はいくら長いと言えども、普段よりも長いと危険な兆候を示しています。睡眠時間を長期化させる危険な要因のうち、主なものは次の4つです。

ストレス

引っ越しなどで環境が劇的に変化した場合など、ストレスを感じやすくなります。これにより、犬はいつも以上に疲労を感じてしまうため、睡眠時間も増加します。上手く適応出来ない場合はうつ病などを引き起こす恐れもあるので注意しましょう。ストレスについて詳しくは「犬のストレスサインとは?どんな行動をするの?【獣医師解説】」をご覧下さい。

 

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症では、“元気ホルモン”とも言われる甲状腺ホルモンの働きが弱くなり、代謝機能が下がることで過剰な眠気を引き起こします。そのため、長く眠るという症状が見られます。

 

関節などに痛みがある

老犬などに多く見られますが、関節に痛みを患っている場合は、痛みを抑えるために動かずじっとしていることがあります。

 

特定の病気を患っている

糖尿病や感染症と言った病気が進行し、重度になると全身状態が悪化するため睡眠時間が長くなる場合があります。これらの病気が進行すると、沈鬱状態や昏睡状態を引き起こし、命に関わる場合があるので注意が必要です。糖尿病について詳しくは「犬の「糖尿病」~症状・メカニズム・治療法【獣医師解説】」もご一読ください。

 

人間とくらべると犬の睡眠時間というのは、とっても長いように感じるかもしれませんが、それにはきちんとした理由があるようです。

 

「シニア犬」に関する獣医師監修記事

うちの子の長生きのためにシニアへの備えに役立つワンペディアの獣医師監修記事をご一読ください。

□ シニアの捉え方:犬は何歳から「シニア」なの?(本稿)

□ シニア犬の健康チェック:シニア犬の病気を早期発見するために!観察ポイントと健康チェック法を紹介

□ 老化のサイン:犬の老化のサインとは?

□ シニア犬のお部屋:シニア犬が安全で快適に過ごせるお部屋とは?

□ シニアへの準備:愛犬がシニアになる前に、準備しておくべきこととは?

□ シニア犬のお散歩:犬はシニアになってもお散歩が必要? 散歩時間の目安は?

□ シニア犬の食事:シニア犬の食事で気をつけることは?どんなフードを選べばいい?

□ シニア犬のトイレ:シニア犬のトイレで気をつけることは? 寝たきりになったらどうすればいい?

□ シニア犬の睡眠:シニア犬にとって快適な睡眠とは?寝床はどうしたらいいの

□ シニア犬のかかりやすい病気:シニア犬がかかりやすい病気とは? 早期発見するためには?

 

 

★「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

 

例えば、下記のような切り口から、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

 

【治療面】■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり

【症状面】■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い

【対象】■ 子犬に多い ■ 高齢犬に多い 男の子に多い   ■女の子に多い ■ 大型犬に多い ■小型犬に多い

【季節性】■春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度】■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつりやすさ】 ■ 他の犬にうつる ■ 人にうつる ■猫にうつる

【命への影響度】 ■ 命にかかわるリスクが高い

【費用面】 ■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防面】 ■ 予防できる ■ワクチンがある

 

★「うちの子おうちの医療事典」でシニア犬のかかりやすい病気を調べてみましょう

□ 高齢犬に多い病気

□ 白内障

□ 緑内障

□ 椎間板ヘルニア

□ 変形性脊椎症

□ 膵炎

□ 気管虚脱

□ ニキビダニ症

□ 糖尿病

□ クッシング症候群

 

 

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アイペット獣医師

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