愛犬が末永く健康に暮らすためには、歯磨きが大切です。愛犬の口を開けて奥歯の裏までよく見てみましょう。歯が黄ばんだり、茶色くなったりしていませんか?歯茎が赤かったり、口が臭かったりしませんか?実はこれ、歯周病になるサインなのです。

実は日本で3歳以上の成犬の約8割が、歯周病もしくは歯周病予備軍と言われています。歯周病を放置してしまうと、歯が抜け落ちたり、歯周病菌が血管に侵入して、心臓や腎臓などに疾患を引き起こしたりする場合もありますし、頬から膿がとび出たり、顎の骨が折れることもあります。(※歯周病について、詳しくはこちらの記事をご覧下さい)

こんな恐ろしいことになってしまう前に、毎日の歯磨きを行って事前に病気のリスクを減らしましょう。ここでは、初心者の方でも上手にできる、愛犬の歯磨きの仕方について解説したいと思います。

口に触れられることに慣らす

犬のマズルはとても敏感な場所なので、たいていのワンちゃんは口の周りを触れられるのをとても嫌がります。普段のブラッシングやスキンシップのついでに、指先や手のひらで口の周りを触れる機会を増やしましょう。

 

■初めは顔や口元をやさしくタッチし、慣れてきたら少しずつ触る時間を長くします。

■口は閉じたまでいいので、そっと口唇をめくり、前歯(切歯)や歯肉、犬歯など、触りやすい場所からタッチします。その時、片手に愛犬のおやつなどを持って行うと効果的です。

■そのあとに、奥の方に指を入れて、奥歯に触られることに慣らしましょう。

 

愛犬がマズルや口元を触らせてくれたら、その度にほめてあげましょう。最初は、短時間で切り上げて、終わったら散歩へ行ったり、おやつを与えたりして『歯のお手入れをすると楽しいことがある』と思わせるのが効果的です。初めの段階で、嫌がっているのにしつこく無理やり触ると、次から触らせてくれなくなってしまうので、短時間×回数で徐々に慣らせていくことが大切です。すぐに慣れる子もいれば、何日(何週間)もかかる場合もあるので、根気よく続けていきましょう。

そもそも口に触らせてくれない場合は?

ジャーキー

鼻から口にかけては、犬にとってとても敏感な部分です。慣れるもなにも、そもそも全く触らせてくれない、という子もいるのではないでしょうか。そんな場合はジャーキーなどのおやつを握りこぶしで握ります。そして、握りこぶしの先端から少しだけ出してあげましょう。ジャーキーに夢中になっている間に口を触れるようになります。口に触られることに慣れてきたら、ジャーキーなしでチャレンジしてみてください。

ガーゼで歯を拭いてみよう

口元を触られることを嫌がらなくなったら、次は指ではなく、ガーゼを使って愛犬の歯をこすり磨きしてみましょう。ガーゼを使ったデンタルケアは、飼い主さんの指の感触が感じられるので、愛犬も比較的受け入れやすいのです。ガーゼの種類ですが、軟らかいガーゼや薄いガーゼでは破けてしまう場合があるので、不織布ガーゼがおすすめです。

ガーゼは、ワンちゃんがくわえて引っ張っても抜けないように、しっかり指に巻きつけて水、もしくはぬるま湯をいっぱいつけるのがコツです。最初は歯に軽くタッチする程度で、あまりゴシゴシこすらないようにして前歯から奥歯へと磨き進めていきます。慣れてしっかり磨けるようになると、ガーゼに歯垢が付いてくるようになります。汚れたガーゼは何度も使わず、キレイなガーゼを再度指に巻き直して水をつけて磨いていきます。口が小さい小型犬なら、綿棒にガーゼを巻きつけて磨くのもオススメです。

まずは前歯から

慣れてきたら徐々に奥へ

歯ブラシに慣らせて歯を磨こう

ガーゼにも慣れてきたら、いよいよ歯ブラシを使って歯を磨かせることに慣らしましょう。まずは、歯ブラシの臭いをかがせたり、なめさせたりして、歯ブラシそのものに慣れさせます。最初は動かさず、口に入れただけでほめてあげましょう。歯ブラシをかじってしまっても怒らないようにしましょう。

歯磨きの仕方

はみがき手順1

まずは前歯の外側から、ゆっくりやさしく動かします。

 

はみがき手順2

前歯を磨くのに慣れたらすこしずつ奥の方へ移動して、奥歯を磨いていきます。

 

はみがき手順3

奥歯まで磨けるようになったら、歯の裏側を磨きます。

※歯ブラシを嫌がるようなら、市販の歯磨きペーストやジェルをつけて慣らすことも効果的です。

歯磨きをする時間帯

お散歩前に、簡単に手入れするのがいい時間帯です。楽しいことを前にして、ワンちゃんの気持ちが高揚しているので、少しぐらい嫌なことも我慢してくれるからです。くり返し行っているうちに、歯磨きをしないとお散歩に行けないと思うようになり、歯磨きからお散歩までが一連の行為となるので、受け入れやすくなります。また、夜、寝る前など、愛犬がリラックスしているときに、飼い主さんとのコミュニケーションとして習慣にするのもお勧めです。毎食後の歯磨きが理想的ですが、最低でも寝る前の歯磨きを1回するだけで、夜中に歯周病菌が増殖するのを防げます。

歯ブラシが苦手な子にオススメ

歯磨き専用ガム

■ガーゼや歯ブラシを嫌がる犬には歯磨き専用ガムがお勧めです。

■噛んで歯垢を落とす設計と味わいで、愛犬が喜びながらしっかり歯磨きができます。

■ガムを選ぶ際には効果が証明されていること、愛犬が喜んで食べるおいしさがあることを確認しましょう。

■注意点としては誤飲や、ガムの効果を高めるために、犬にガムを与えている間は、出来るだけ目を離さないようにしてください。歯磨きガムは犬の大きさに合ったものを選ぶようにして、一日に1~2本と決めて与えるようにして下さい。

歯磨きおもちゃ

ペットショップには色々な犬用のおもちゃがあります。その中にはかじって遊んでいるだけで歯磨きになる歯磨きおもちゃがあります。例えば、犬の大好きなビーフの香りがついた骨型おもちゃ、歯垢取りや歯茎強化に効果的なおもちゃなど。毎日の歯磨き習慣は続けながら、安全で犬が喜ぶものを取り入れてもいいでしょう。ただし、ヒヅメや骨などのおもちゃは歯が欠ける原因となるので大型犬種以外では絶対に与えないようにして下さい。

 

ガムやおもちゃなどでマウスケアをすることはできますが、やはり歯と歯の間の細かい部分などは歯ブラシでないと行き届かない場合があります。そういったものをうまく併用しながら、歯ブラシに慣らす練習を続けられるといいですね。愛犬の健康を守るためにも、根気強く続けてあげてください。

 

 

「歯」に関するワンペディア関連記事は、こちらをご覧ください。

■ヒトとの違い:「犬の歯と、人間の歯との違いは?知っておくべきこととは?

■歯垢と歯石:「犬の歯に、歯垢や歯石が付いたらどうやって取るの?歯磨きは必要なの?

■無麻酔NG:「犬の歯石除去、無麻酔は絶対にダメ!思わぬ事故につながることも

■歯石除去:「犬の歯石除去。実際にはどんな手順や方法で行われるの?

■歯磨きのコツ:「犬の歯磨きのコツとは?どうやったら上手く歯ブラシを使える?

■歯磨き嫌い:「歯磨き嫌いな愛犬に、歯磨き上手になってもらうには

■歯磨き粉:「犬の歯磨きに、「歯磨き粉」は必要なの?

■歯磨きガム:「の歯磨きに「歯磨きガム」は効果があるの?上手な使い方とは?

■噛む歯周病予防:「犬は「噛む」ことで歯周病予防ができるって、本当?

■歯周病とは:「放置すると恐ろしいことに!犬の歯周病とは

■治療法:「犬の歯周病、症状や治療法とは?放置すると、重大な病気を引き起こす!?

■高齢犬:「高齢犬は要注意!歯が抜ける原因は歯周病

■歯が黒い:「愛犬の歯が黒い!これって虫歯?犬の歯が黒い原因と対処法とは

■口臭:「愛犬の口がにおう!口臭の原因と対策とは

■歯ぎしり:「犬も歯ぎしりをするの?その原因と対処法とは?

■乳歯遺残:「犬の歯は抜けるの?折れることもあるの?その理由と対処法を紹介

 

 

うちの子おうちの医療事典で「口・歯・顎」に関連する病気を調べる

「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典『うちの子おうちの医療事典』をご利用ください。

例えば、下記のような切り口で、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

よだれが多い

口を気にしている

口の中にできものがある

食べづらそうにする

歯石がついている

歯肉が赤い

口が臭い

口の中から出血している

 

 

★歯みがきの仕方の参考に

●歯みがきの仕方がよくわからない飼い主様が、ペットの歯みがきができるよう、一般社団法人「日本ペット歯みがき普及協会による、歯みがき教室が開催されています。歯みがき教室の開催予定は、こちらをご覧ください。

●同協会による「口腔ケアのための唾液腺マッサージ」動画(監修:かまくら元気動物病院 院長  石野 孝先生)は、こちらをご覧ください。

 

高田 傑
牧の原どうぶつ病院 院長

高田 傑

詳細はこちら

関連記事

related article