口の形も歯の形状も、人間とは異なる犬の歯。じつは、愛犬が健康で長生きするためには、歯はとても大事なものなのです。まずは飼い主さんが、犬の歯について正しい知識を身につけておきましょう。

犬の歯や口腔内は、人間とどう違うの?

 

人間と犬とで明らかに違うのは口の形ですが、それ以外にも口腔内の環境や歯の形状など、大きく異なっていることがあります。

犬の唾液はアルカリ性

人間の唾液は、中性〜弱酸性(PH6.8〜7)ですが、犬の唾液はアルカリ性(PH8〜8.5)です。そのため、犬には虫歯がほとんど発生しません。ただし口腔内がアルカリ性であるということは、食事をしたときに歯に付着する歯垢(プラーク)が、石灰化しやすいデメリットがあります。歯垢の石灰化が進めば歯石となり、それが歯周病の原因になる可能性があるのです。

 

犬の歯は引き裂き、噛み砕くためのもの

人間は、口に入れた食べ物を上下の歯で細かくなるまで噛み砕き、唾液と混じり合わせてから飲み込みます。一方、犬は、軟らかくて大きなものは犬歯で引き裂き、臼歯で硬いものを噛み砕き、ある程度の大きさのまま飲み込んでしまいます。つまり人間のように、歯は咀嚼するためのものではないのです。

 

犬種によっても歯の生え方は違う

人間の歯は、人によって歯の大きさに違いはあっても、同じように生えています。それに対して、犬は犬種(長頭種、中頭種、短頭種)によって、口の大きさや長さが異なり、それにともない生え方にも違いがあります。大型犬でも小型犬でも歯の数は同じなので、大型犬は歯と歯の間に隙間がありますが、小型犬は顎が小さいため歯と歯が密集して生えているのです。

 

犬の歯は何本?乳歯と永久歯はあるの?

 

人間は幼児の頃に、乳歯から永久歯へと生え変わりますよね。犬も人間同様、成長する過程で子犬の歯から成犬の歯に生え変わります。時期や乳歯と永久歯の本数、歯並びについて説明します。

犬の乳歯は28本、永久歯は42本

人間は、乳歯が32本、生え変わった後の永久歯は32本(親知らず上下4本を除けば28本)です。それに対して犬は、だいたい生後8週目までに乳歯28本が生えそろいます。乳歯には、犬歯、切歯、前臼歯がありますが、後臼歯はありません。 

乳歯から永久歯に生え変わる時期には個体差がありますが、生後12週くらいに切歯から抜け始め、28週齢くらいまでに完全に永久歯に生え変わります。上顎20本、下顎は後臼歯が2本多く22本、上下合わせて42本です。

犬の歯は尖っていて噛み合わない

人間の歯は、穀類などの食べ物を細かくすりつぶせるよう奥歯の上面が平らで、口を閉じれば上下の歯が合わさるようになっています。それに対して犬の歯は、肉を引き裂くのに適する尖った形で、ハサミ状の噛み合わせになっています。

犬の歯にまつわる病気とは?見つけるサインは?

 

犬の歯にまつわる病気、口の中の病気には、次のようなものがあります。

歯周病

歯垢(プラーク)に含まれる細菌によって、歯肉が炎症を起こした状態を「歯肉炎」と言います。歯肉炎が進行すると、歯肉以外の歯周組織にも炎症が広がります。この状態を「歯周炎」と言い、「歯肉炎」「歯周炎」を合わせて「歯周病」と言います。

歯が汚れている、歯茎が赤く腫れる、歯茎から出血する、歯が抜ける、口臭がするなどの症状がみられたら、歯周病が進行しているかもしれません。

 

*詳しくは『【獣医師監修】犬の歯周病、症状や治療法とは?放置すると、重大な病気を引き起こす!?』をご覧ください。

 

乳歯遺残

歯が生え変わる時期になると、自然と乳歯が抜けて、永久歯が生えるスペースができます。しかし、生え変わりの時期になっても乳歯が残ってしまい、その結果、永久歯が密集して生え、歯並びが悪くなってしまうことがあります。これは、顎の小さな小型犬に多くみられます。

 

歯が折れる、歯が欠ける

「犬は硬いものを噛んでも大丈夫」と思っている飼い主さんが多いようですが、じつは犬の歯は硬いものが苦手です。とくに、後臼歯は割れたり折れたりしやすいものです。

 

*詳しくは『【獣医師監修】犬の歯は抜けるの?折れることもあるの?その理由と対処法を紹介』をご覧ください。

 

虫歯

犬には、虫歯はほとんどみられません。犬の口腔内がアルカリ性であること、歯の形状的に虫歯菌が付着しにくいことなどが要因として考えられます。
まれに虫歯が発生するケースもあるのですが、発生率が低いために、虫歯の診断と治療は非常に難しいものがあります。診断が遅れると抜歯することになってしまいますが、初期で発見できれば歯を残した治療が可能です。ちなみに、猫の虫歯はありません。

歯の病気を予防するためには?

 

犬の歯の病気で一番多いのは歯周病で、その原因となるのが歯にこびりついた歯石です。歯石の表面に付着した歯垢が歯肉への細菌感染を引き起こし、歯肉炎、歯周炎という歯周病を進行させてしまうのです。

毎日の歯磨きが大事

そもそも犬の歯は、捕らえた獲物の生肉を切り裂いて噛むのに適した形になっています。けれども今はドッグフードが主流なので、歯に汚れが溜まりすい食生活になっています。
そこで愛犬にも必要なのが、毎日の歯磨きです。食べ物のカスが歯の表面や歯と歯の間に残っていると、細菌が繁殖して歯垢(プラーク)となり、歯垢(プラーク)が石灰化すると歯石になって歯に付いてしまいます。歯石になると歯磨きで取ることはできないため、歯石になる前にきちんと歯を磨くことが大事です。

 

*詳しくは『【獣医師監修】犬の歯磨きのコツとは?どうやったら上手く歯ブラシを使える?』をご覧ください。

 

病院での定期的な歯石取りも 必要

歯垢(プラーク)や歯石の除去は、歯の表面のケアだけでは不十分です。歯と歯肉の間の歯周ポケットの汚れを取ることが、歯周病予防には肝心なのです。そのため年に1回は、動物病院で歯科検診を受けることをおすすめします。
なお歯石の除去は、獣医師が全身麻酔のもとで行う専門的な治療です。最近は、無麻酔で歯石取りを行っている病院や、獣医師のいないトリミングサロンなどで行っているところがあるようですが、表面の汚れは取れても歯周ポケットのクリーニングまで行うことはできません。ですから、犬の歯科治療を専門に行っている動物病院で受診する必要があります。

 

*詳しくは『【獣医師監修】犬の歯に、歯垢や歯石が付いたらどうやって取るの?歯磨きは必要なの?』をご覧ください。

歯のトラブルが起こりやすい犬種はある?

 

犬の歯の病気でもっとも多い歯周病は、どんな犬種にも起こる可能性があります。大型犬は歯と歯の間に隙間があるので、歯と歯の間に食べ物が残りにくく歯も磨きやすいのですが、小型犬は歯が密集しているので、歯垢(プラーク)が残りやすいことから歯周病にかかりやすいと言えます。

 

「愛犬の食欲がない」「最近、元気に遊ばなくなった」というとき、歯のトラブルが原因だった、というケースもあります。愛犬の口の中をよく観察して、歯や歯茎の色などをチェックしてみましょう。

 

荻窪ツイン動物病院 院長

町田 健吾

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