夏になると楽しみなイベントの一つに花火があります。

かわいい愛犬と一緒に花火大会に行きたい!おうちで一緒に花火をしたい!と考える方もいるかもしれません。しかし、人間にとっては楽しい花火も犬にとっては危険がいっぱいなんです…!

この記事では花火大会やおうち花火に伴う危険、花火の音を怖がってしまう犬への対策等についてご紹介します。

 

人間にとっては楽しい花火…犬にとっての花火とは?怖いの?

実は犬にとっての花火は怖いものなのです。
人間には花火というものがエンターテインメントで大きな音が鳴ってピカッと光ってもそれが安全であるという事がわかっています。しかし、犬はその事を理解していないので突然の出来事にとても驚く上に、嗅覚や聴覚も犬の方が人より優れているので、中には恐ろしさのあまり花火恐怖症になってしまう子もいるのです。

人でも予期せぬ閃光や、大きな音が自分のすぐ近くで急に鳴り響いたらどうでしょう?一体何が起きたのかと不安に思い、恐怖を感じたり命の危険を感じてパニックになる人もいるかもしれません。犬にとっての花火はそのぐらい恐ろしいものなのです。

 

犬にとっての花火大会の危険性

 

世界各国の動物福祉団体からも花火大会についての危険性は訴えられています。イギリスの代表的な動物福祉団体RSPCAでも花火大会が動物たちに与える危険性について警鐘を鳴らしています。毎年花火大会に関しての問い合わせが数百件寄せられ、2018年には411件もの問い合わせがあったそうです。また、60%以上の犬が花火に対して恐怖を感じていると発表しています。

花火を怖がっている状態は?花火恐怖症ってどんな症状?

犬が恐怖を感じている状態として、

 

 その場から逃げようとする、隠れる

 震えている

 心臓がいつもよりドキドキしている

 呼吸がいつもより早い、口を開けてハーハーと呼吸している

 ウロウロと落ち着き無く動き回る

 

という行動が見られることが知られています。

 

 

また、このような恐怖によるストレスで、

 

 下痢や嘔吐、食欲不振・異常食欲などの消化器症状

 よだれを垂らす

 自分で足先や尾を噛んでしまうような自傷行為をする

 自傷行為の結果脱毛や出血が起こる

 

という症状も起こり得ます。

 

南アフリカにある動物保護施設では花火大会の日に、花火に驚いた保護犬がパニックを起こし、柵に挟まり死亡した事例があったといいます。他にもパニックが原因になり、リードに絡まって死亡してしまったり、脱走して交通事故にあってしまった事例も報告されています。

 

以上のような症状を参考にし、愛犬が恐怖を感じていないかを気をつけてあげましょう。

花火大会での危険はどのようなものがあるの?

逃走

…あまりの恐怖にパニックになりその場から首輪を外して逃げ出してしまう子もいます。逃げ出して、迷子になってしまったり、交通事故にあってしまう可能性も考えられます。

 

拾い食い

…花火大会の会場では焼き鳥の串など美味しい匂いのついたゴミや、人間が落としてしまった食べ物など、犬にとっては魅力的な物がたくさん落ちています。これらの物を食べてしまうと、中毒を起こしたり、串やゴミなどであれば消化管を傷つけてしまったり、ゴミの大きさによっては詰まってしまう可能性があり、全身麻酔をかけて取り出さなくてはいけない事もあります。

 

他者とのトラブル

…混雑する会場では他の動物や、人と接する可能性が高く、中には犬とのふれあいに慣れていない方もいますし、犬自身もいつもと違う環境で思いも寄らない行動をとってしまう可能性もあります。小さな子供が手を出してきてパニックになっているいる犬が噛んでしまうという危険もあります。

 

花火が怖い!対策は?

最も重要なのは恐怖の原因である花火を避けることです。なので、花火大会に犬を連れて行かないようにするというのがもっとも効果的な対策といえるでしょう。ただ、自宅近くで花火大会が行われるなど、どうしても避けられない状況も考えられます。
その場合の対策についてお話します。

 

安全な避難場所を花火シーズンの前に作っておく。

家の中で最も静かな部屋に、体がしっかりと入り横になれるサイズのケージに目隠し用の毛布などをかけて洞穴のような状態にします。そこに大好きなおもちゃや、おやつを詰めたおもちゃなどをいれて、そのケージの中で楽しい経験をさせてあげます。

重要なことは、このケージにいる時は絶対に犬に干渉してはいけないということです。そうすることで犬はケージの中が最も安全で、自分だけの楽しい場所だという事を学習します。ケージにはいつでもアクセスできるようにしておいてください。
また、おもちゃは同じ物をいれっぱなしにしていると飽きてしまうので、日常的に数種類をローテーションするようにしましょう。ただし、犬が遊んでいない時に交換するように気をつけてくださいね。

 

窓を閉めてカーテンをし、花火の音と光を遮るようにしましょう。

花火の音や光を遮り、犬が安心できる場所で一緒におもちゃなどで遊んであげましょう。大事な事は飼い主さんが落ち着いて犬と過ごす事です。飼い主さんが必要以上に犬をなだめたり、緊張していると犬にも普段との様子の違いが伝わってしまい、不安が大きくなってしまいます。

 

花火が始まる前に部屋に音楽を流しておきましょう。

音楽を流すことで、花火の音を隠す事が出来ます。始まる前から流しておく事で、犬に恐怖を感じさせないようにしましょう。

 

花火シーズンの前に音にならす。

まずは犬に『おすわり』をさせて、録音した花火の音をできるだけ小さい音量で流します。大人しく座っていられたらご褒美をあげましょう。次は少しだけ音を大きくし、静かに座っていられたらご褒美をあげます。このように、少しづつ音を大きくして、ならしていきましょう。もし、犬が立ち上がってしまったり、震えてしまうなど不安兆候を示すようなら、前段階の音量に戻して再び行います。

重要な事は犬に不安を感じさせないようにトレーニングする事なので、いきなり音を大きくする事はしないようにしましょう。
このトレーニング中に大きい花火の音を聞き不安を感じてしまうと、最初からやり直しになってしまいますので、花火シーズン以外の時期に行いましょう。

 

あまりに症状がひどく自傷行為を行ってしまったり、パニックを起こす場合は動物行動学(動物の精神科)の診察ができる獣医さんの受診をおすすめします。
環境の改善と、恐怖を克服するトレーニング、抗不安薬などを併用する事で症状の改善が期待できます。

 

おうち花火にひそむ危険!

 

気軽に庭でできるおうち花火、愛犬と一緒に楽しみたいと思う方もいるかと思います。しかし、おうち花火には花火への恐怖以外にも、様々な危険があるのです。

花火を食べてしまった!中毒症状を起こす?

花火を食べてしまうと中毒症状を起こします。過去には海外で花火を食べてしまってから数時間後に死亡してしまった犬の事例も報告されています。

 

花火には様々な種類の中毒物質が含まれています。

食べた量や花火の種類によっては痙攣発作や、急性腎不全、黄疸、嘔吐下痢(吐血、血便)などを引き起こします。誤食を防ぐ為にも花火の後片付けはきちんとしましょう。使用前の花火の危険性も高いので保管する場合も犬にいたずらされない所にしましょう。

 

花火に噛みつきに行く

犬の中には燃焼している花火に噛みつきに行くような行動をとる子もいます。顔や口のやけどの原因になり大変危険です。やけど以外にも煙や、火花が目への刺激になり結膜炎になる危険性もあるといわれています。

 

万が一そのような事が起こったら?

飲み込んでから一時間以内なら吐かせる処置が適応になる可能性が高いですので、すぐに獣医さんに連絡し受診しましょう。受診の際は食べてしまった花火の残りや、成分の書いてある外袋があれば持参する事をおすすめします。
また、時間が経過してしまっていても中毒症状を和らげる為の投薬や点滴を行う必要がある可能性も考えられるので受診しましょう。
やけども程度によっては、緊急受診が必要ですし、目に関しても違和感により自分で状態を更に悪くしてしまう事もあるので、気にする症状が見られるならば早めの受診がおすすめです。

 

最後に

犬にとっての様々な花火の危険性についてお伝えしました。
世界各国でも夏の時期、祝日の打ち上げ花火の前には大々的な対策キャンペーンを行うほど花火が動物に与えるストレスやそれに伴う事故は件数も多く、重要視されています。
花火大会に犬は連れて行かない、おうち花火の時も犬はお部屋で待っていてもらう、など危険を避けるようにしましょう。自宅近くで花火大会があり、どうしても避けられない方は夏に入る前に少しでも愛犬のストレスを取り除き恐怖を和らげてあげられるように早めからトレーニングや対策を行っておくと安心です。

 

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☞例えば、下記のような切り口で、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

再発しやすい

長期の治療が必要

初期は無症状が多い

命にかかわるリスクが高い

生涯かかる治療費が高額

高齢犬に多い

病気の進行が早い

緊急治療が必要

入院が必要になることが多い

かかりやすい病気

他の犬にうつる

人にうつる

予防できる

子犬に多い

 

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獣医師

西川 身和

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