散歩中やお家の中で、落ちているものを素早く食べられてしまったことはないでしょうか。ちょっとくらいなら大丈夫かな、と思ってしまうかもしれませんが、拾い食いはとっても怖いんです。ここでは、食べた異物が物理的に体のどこかに詰まってしまうケースと、食べること自体が危険な食べ物を食べてしまって、中毒を引き起こしてしまっているケースについて、それぞれ解説します。

物理的に異物が体のどこかに詰まってしまうケース

おもちゃを誤って飲み込んだり、クッションから綿を出して食べてしまったりして、物理的に異物が体の中のどこかに詰まることがあります。異物を誤飲した場合に、ものが詰まる部位は主に「食道」「胃」「腸」の3か所となります。動物病院では、まずレントゲン検査を行い、体のどこに異物が詰まっているのかを確認します。それぞれに異常がある場合、どのような症状が出るかみてみましょう。

食道に異常がある場合

飲み込む途中で食道に詰まってしまうことは少なくありません。リンゴ、果物の種、ジャーキー、おもちゃなど詰まらせるものは様々です。食道に物が詰まると、食道のすぐ隣にある気管(肺と空気をやりとりする通路)を圧迫してしまい、うまく息ができず呼吸困難を起こすこともあります。また、吐きたそうにしたり、咳き込んだり、普段聞き慣れないような「グゥグゥ」という音が喉から聞こえることもあります。

食道の診療方法

詰まっているものを自力で吐き出させるのは困難なので、全身麻酔をかけて口から取り出すか、逆に胃に押し込んで自然な消化を待ちます(詰まっているものが安全な食品の場合のみ)。一方、消化できないような物の場合には、胃に押し込んだあとに内視鏡もしくは胃切開にて取り出します。

胃に異常がある場合

無事に胃までたどり着いたとしても、大きな塊は胃の粘膜を傷つけて胃を荒らしてしまいます。また、胃の出口(腸の入口)は狭いので、今度はそこで詰まってしまうこともあります。胃が荒れたり胃の出口(腸の入口)で詰まったりすると、嘔吐が引き起こされます。

胃の診療方法

消化できるものや、とても小さいものの場合には経過観察で様子をみますが、それ以外のものはやはり麻酔をかけて内視鏡で取り出すか、胃切開をして取り出すしかありません。

腸に異常がある場合

食道・胃をうまく通り抜けてこられても、最大の難関である腸が待っています。腸は非常にデリケートな組織なので、物がつまったまま放置すればその箇所から壊死を起こしてしまいます。また、腸が捻じれたり全く動かなくなったりするかもしれません。こうなると犬は何も食べられなくなり、頻繁に嘔吐を繰り返すばかりではなく、生死に関わる問題になってきます。

腸の診療方法

腸の場合は、麻酔をかけて腸切開をして取り出すしかありません。異物誤飲で動物病院にかかった場合、まずはレントゲンや超音波で画像診断を行います。レントゲン検査ではバリウムなどの造影剤を使用することもあります。内視鏡で取り出せるケース(食道・胃)では体を傷つけることがないため、当日もしくは翌日には退院できることがほとんどですが、胃や腸を切っている時は数日の絶食と点滴入院が必要になります。また、腸閉塞や腸捻転を併発してしまっていると、その分手術のリスクも高くなります。

治療・診療費はいくらぐらい?

空気の抜けたテニスボールをかじって飲み込んでしまった場合の診療例です。内視鏡では取りきれないため、開腹手術となりました。
診療項目 単価 数量 金額
初診料 1,000円 1 1,000円
レントゲン 4,000円 2 8,000円
血液検査 9,000円 1 9,000円
注射料 1,000円 1 1,000円
静脈内注射 1,000円 2 2,000円
切開手術料 80,000円 1 80,000円
点滴治療 3,000円 2 6,000円
内服薬 1,000円 1 1,000円
入院 4,000円 2 8,000円
    合計 116,000円
この診療明細書はアイペット損保の支払いデータから作成した診療費の参考例となります。したがって、診療費用・内容の平均・水準を示すものではありません。 

犬が食べることで中毒症状を引き起こすケース

物理的に詰まるようなことはなくても、食べることそのものが危険なものがあります。人間にとっては何気なく摂取しているようなものでも、犬が口にしてしまうと強烈な中毒症状を引き起こし、死に至ることもあるのです。

犬が誤って口にすることがないようにしっかり管理することがなにより大切ですが、万が一犬が食べてしまった場合は、すぐにお医者さんに相談しましょう。対応が早ければ早いほど、助かる可能性は高くなるので、もし夜遅い時間に発覚した場合でも、すぐに夜間病院等に連絡するといいでしょう。

食べると危険なものの一例

・タマネギ

・カカオ(チョコレート、ココア等)

・ブドウやレーズン

・アボガド

・人間の常備薬など

‘獣医師監修!絶対に犬が食べてはいけないものとは’

 

中毒を引き起こすものを食べてしまったら

犬が異物を飲み込んでしまったときに気をつけなければならないのは、決して自分で処理をしようとしてはいけないということです。 時間があまり経っていなければ、胃の中に残っている時点で吐かせる処置を行うことがあります。これを催吐処置といいます。

「吐かせる」とだけ聞くと、自宅で簡単にできそうに聞こえるかもしれませんが、自分の判断で催吐処置を行うのは非常に危険です。まず、この催吐処置は、薬を使って犬を気持ち悪くさせ、嘔吐を促すというものです。人間のように指を口の奥に突っ込むのとは全く違います。

さらに、意識が朦朧としている犬に催吐処置をしてしまうと、吐しゃ物が喉につまって呼吸困難に陥り、催吐処置が原因で死に至る場合だってあるのです。単に「危険物を飲み込んだから吐かせればいい」という単純な問題ではありません。

獣医師は飼い主さんから集めた情報をもとに、色々なリスクを検討して、催吐処置や胃洗浄、その他様々な処置の中から最適な治療法を選択しています。自己判断で治療をするようなことは絶対にやめてください。少しでも不安を感じたら、すぐにかかりつけの獣医さんに相談して指示を仰ぎましょう。

 

愛犬が拾い食いしないよう、しつけがきちんとされていることが理想ですが、食欲旺盛な犬のトレーニングははなかなか難しいですよね。まだトレーニングがきちんと終わっていない場合は、飼い主さんが常に注意してあげて、もしものときはスグに動物病院に連れていってあげてください。

アイペット獣医師

ワンペディアの運営会社であるアイペットに在籍している獣医師チーム。臨床経験...

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