子どもは天からの授かり物です。赤ちゃんが生まれるとなったら、とても楽しみですよね。ただ、おうちで犬を飼っている場合、赤ちゃんを迎えることに不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。もし、愛犬が赤ちゃんと仲良くできなかったら?もし、愛犬が赤ちゃんを傷つけるようなことがあったら?心配ごとは尽きませんよね。
ここでは、動物行動学の専門家監修のもと、犬がいるおうちで赤ちゃんを迎えるときのポイントについて解説します。
赤ちゃんが生まれる前にしておくこと
おなかの上は跳び乗ってはいけない場所
飼い主さんのおなかの上でウトウトするのが大好きな子もいますよね。妊娠する前はそういった仕草も可愛くて、受け入れている飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、妊娠した後はおなかの上は飛び乗ってはいけない場所だということを、きちんと教えてあげなければなりません。 このとき、飛び乗った子に罰を与えることは絶対にやめましょう。また、愛犬が「拒否された」と感じないように、おなかの上以外の場所で十分にスキンシップを取ってあげてくださいね。
トレーニング方法
おうちの中で、愛犬が飼い主さんの膝の上に跳び乗らないためのトレーニングをご紹介します。 まず、愛犬にリードをつけて自由にさせ、飼い主さんはソファに座ります。リードは、愛犬が足元でフセをしたときに少したるむくらいの長さで持ちます。愛犬が遊んでほしくて膝の上に跳び乗ったり、吠えたりしても無視します。落ち着いて、足元でオスワリかフセをするまで、じっと待ちます。 愛犬が落ち着いたら、褒め言葉と一緒にご褒美のおやつをあげましょう。このとき、愛犬を興奮させてしまわぬよう、落ち着いた声で褒めることを心がけてください。
愛犬が落ち着ける、専用のスペースを確保しておく
赤ちゃんがおうちにきて慣れるまでは、赤ちゃんと愛犬の部屋を分けたり、サークルなどの柵でふたりのスペースを仕切ってあげると安心です。しかし、今まで家の中を自由に行き来していたのに、急にスペースを仕切られてしまったら、愛犬はびっくりしてしまいますよね。赤ちゃんが生まれる前から少しずつ愛犬のスペースを狭めていく、愛犬がお気に入りの場所は残してあげるなどの工夫が必要です。
また、赤ちゃんがよちよち歩きできるようになると、サークルの中に手を入れて噛まれる可能性もありますので、赤ちゃんが歩けるようになったら柵を二重にするとより安心だと思います。
赤ちゃんを迎えるときの犬のきもち
なにも知らない犬にとって、赤ちゃんは完全によそ者です。今まで飼い主さんの愛情をたっぷり受けて暮らしてきたはずが、ある日突然、よそ者に飼い主さんの愛情も時間も奪われるわけですから、混乱して当然ですよね。人間の子どもも弟や妹が生まれるとき、すねたり、赤ちゃん返りしたりすることがありますが、それと似たような状況だと考えてください。 では、そんな愛犬に対して、飼い主さんはどのように接したらいいのでしょうか?
とにかく、あせらないことが大事
焦ったしつけが攻撃行動に
愛犬が元気な子だったら、赤ちゃんが生まれてくるまでになんとかしなければ!と思ってしまいますよね。しかし、その焦りのせいで愛犬に厳しくなっていませんか? 犬は今まで許されていた行動を急に制限されるようになるわけですから、トレーニングに時間がかかるのは当然なのですが、なかなか変わらない愛犬と出産までの時間とを考えて、ついイライラしてしまう飼い主さんは多いのではないでしょうか。
飼い主さんの気持ちは必ず犬に伝わります。犬からしたら、今まで優しかった飼い主さんが豹変したかのように感じるかもしれませんね。こうなると犬も不安な気持ちでいっぱいなはず。自分を守ろうとして、攻撃的になってもおかしくありません。このような状態で赤ちゃんを迎えてしまうと、非常に危険ですよね。
しつけが完了していなくても大丈夫
もし愛犬のトレーニングが完了していなくても、きちんと気をつけて生活をしていれば、赤ちゃんが愛犬に傷つけられるようなことなんて起こりません。ここではトレーニングが完了していない犬と赤ちゃんとの生活のしかた、そして引き合わせ方を解説しますので、飼い主さんはなによりもまず、ゆったりとした気持ちを大切にしてください。
高さのあるベビーベッドを用意する
愛犬が赤ちゃんに飛びかかってしまうことが心配なら、犬が飛び越えることのできない、高さのあるベビーベッドを選びましょう。ベビーベッドを設置するタイミングは、妊娠が分かったらなるべく早めがよいでしょう。
今までなかったものが急におうちの中に増えたら、愛犬はびっくりしてしまいますよね。赤ちゃんがおうちにくるのと同時にベビーベッドまで増えたら、愛犬の頭の中は大混乱。早いうちからベッドの存在に慣れることで、混乱を軽減させてあげましょう。
赤ちゃん専用の部屋を用意する
可能であれば、赤ちゃん専用の部屋を作ってあげるとよいでしょう。そうすれば愛犬が赤ちゃんに飛びついてしまう心配はなくなりますし、愛犬が落ち着ける場所を作ってあげることもできます。
ただ、このとき気をつけなければならないのは、飼い主さんが赤ちゃんのお世話をしているときに、愛犬が疎外感を感じてしまう可能性があるということ。家族が集まるリビングなどに愛犬が落ち着ける場所を作ってあげて、手が空いている時間はできるだけ愛犬に声をかけてあげるといいでしょう。
興奮要因を取り除く
愛犬がなにかのきっかけで興奮して、赤ちゃんにぶつかってどちらかが怪我をしてしまったり、吠えた声に驚いた赤ちゃんが泣き出したりしないように、できるだけ愛犬が興奮しない環境を作ってあげる工夫は大切です。通行人に吠えてしまうなら、人通りのある道路に面した場所だけカーテンを閉めてあげるなどして、落ち着ける状況を作ってあげてください。
とはいえ、全ての興奮要因を取り除くことは難しいと思います。もしも愛犬の興奮スイッチが入ってしまっても、心配する必要はありません。すぐに赤ちゃんを抱き上げ、愛犬から距離を取ってあげればなんの問題もないのです。大切なのは、まだお互いに慣れていない愛犬と赤ちゃんを二人っきりにさせないことです。
愛犬と赤ちゃんの引き合わせ方
まず、愛犬が赤ちゃんに飛びつかないよう、リードをつけておきます。そして、夫婦のどちらかが愛犬、どちらかが赤ちゃんを抱っこします。
少しずつ、様子を見ながら引き合わせていきます。このとき、おやつをあげることで、「この子といると良いことが起こる」と思わせてあげるのも効果的。
※リードは張りすぎないように気をつけてください。愛犬をより緊張させてしまいます。
愛犬にもたっぷり愛情を注いであげて!
産後の疲労と赤ちゃんのお世話で大変な時期だと思いますが、できる限り、愛犬にも愛情を伝えてあげましょう。もし愛犬が問題行動を起こしてしまっても、それは混乱や寂しさからきています。ただ飼い主さんにかまってもらいたい、それだけなのです。決して怒らないであげてくださいね。 赤ちゃんが寝ているときに、愛犬だけを見てあげられる時間をつくってあげると良いでしょう。そして、スキンシップをとって、愛情を伝えてあげてください。
赤ちゃんが大きくなったら・・・
赤ちゃんが歩けるようになると、興味本位から犬を追いかけ回したり、おもちゃを取り合うようになるかもしれません。すると、今まで赤ちゃんに対して平気だった子が、突如ストレスを感じるようになる場合もあります。強いストレスを受けて、赤ちゃんに対して唸ったり、最悪噛みついたりするようなこともあるでしょう。
しかし、もしそうなったとしても、決して愛犬のことを怒らないであげてください。犬はただ、自分の身を守ろうとしただけなのです。 愛犬が少しでもストレスを感じているようなそぶりを見せたら、すぐに赤ちゃんを引き離すようにしてあげましょう。 『犬のストレスサインとは?どんな行動をするの?【獣医師が解説】』 も合わせてご確認ください。
愛犬も赤ちゃんも、大事な家族であることには変わりません。もし最初はうまくいかなくても、あきらめずに慣れさせればきっと仲良くなれるはず。ふたりを本物の兄弟だと思って、大切にしてあげてくださいね。
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【獣医師が解説】
★「うちの子」の長生きのために、年齢や季節、犬種など、
☞例えば、下記のような切り口で、