短い足に長い胴、床につきそうな長い垂れ耳が特徴のバセット・ハウンドは、かつてはイギリス王妃やマリリンモンローにも愛された犬種です。たるんだ皮膚や長い耳を揺らして歩くその様は、「のっそりのっそり」という効果音がつきそうなほどですが、実はこう見えてれっきとした狩猟犬であることをご存知でしょうか。また、コミカルな独特の見た目はとても愛らしく、世界中に根強いファンも多くいバセット・ハウンドですが、独特な見た目ゆえに飼育する上では気をつけてもらいたい点もあります。
ここではそんなバセット・ハウンドの歴史、特徴、性格、飼育上の注意点、かかりやすい病気について詳しく解説します。

歴史

バセットハウンドは1500年代にフランスで誕生した中型犬です。野ウサギやアナグマの狩猟犬として、ブラッド・ハウンドやその祖先犬であるセント・ヒューバートを基礎に、フランスの修道僧らが生み出した犬種であると言われています。バセット(Basset)はフランス語で「低い」を意味する「bas」に由来し、体高の低い独特なフォルムはフランス国内の王族や貴族たちから愛されてきました。19世紀になると、フランス以外の国々でも狩猟犬として活躍するようになり、1870年代にはイギリスでのドッグショーにも参加するようになりました。そんな中、当時のアレクサンドラ女王に大変気に入られ、イギリス王室の犬舎に迎え入れられたことで、一躍人気を博していきます。1880年代後半にはアメリカにも輸出されるようになり、コミカルな風貌から、CMやテレビドラマでも活躍するようになりました。また、1952年創業のハッシュパピーという靴ブランドのブランドキャラクターにも採用され、世界中で有名な犬種となっていきました。

特徴

俊敏に獲物を走って追いかける「サイトハウンド(視覚ハウンド)」とは異なり、優れた嗅覚を武器にゆっくりした歩様で獲物を追う「嗅覚ハウンド」に分類されます。
特徴的な見た目は、「臭いをたどるとき地面に鼻を近づけやすくするために足が短くなり、臭い以外の情報を遮断し嗅覚に集中できるよう長い垂れ耳になった」と言われています。顔や全身の皮膚が垂れ下がっているのも特徴です。

大きさ

JKC(ジャパン・ケネル・クラブ)では、体高は33〜38cmが標準であると規定しています。
体重は20kg前後と体の大きさの割に重く、ガッチリとした体格をしています。

被毛

毛色は一般的なハウンドカラーであれば良いとされています。
中でもよく見られるのは以下のパターンです。

トライカラー(3色)

ブラック・ホワイト・タンの混ざったトライカラーが最も一般的です。

バイカラー(2色)

レモン&ホワイト、ブラウン&ホワイト、レッド&ホワイトなど、明るめの茶色とホワイトの組み合わせも主流です。

寿命

バセット・ハウンドの平均寿命は10〜12年歳と言われており、一般的な中型犬と比べるとやや短めです。

バセットバウンドの性格

バセットハウンドは大変マイペースな性格をしています。その分温厚で、子どもや飼い主以外の人にもフレンドリーに接することができます。
ただし、マイペースさの中には自分の意思を曲げない頑固さがあります。散歩の途中で動かなくなってしまったり、トレーニングに応じなくなることもしばしば。そして何と言っても体重が重いので、動かすのには一苦労するでしょう。そんな時には、得意の嗅覚を生かせるようないい香りのするフードやおやつで上手く誘導してあげましょう。

バセットバウンドを家族に迎えたら

耳の観察は日常的に

バセットハウンドの特徴でもある長い垂れ耳は、とても蒸れやすく、外耳炎を起こしやすいため、耳のケアはこまめにしてあげましょう。1日1回は長い耳をめくり、耳垢がないか・臭いがきつくないか・赤みがないかなどを観察しましょう。ただし、耳掃除のしすぎは禁物です!耳垢が付いている場合には、イヤークリーナーをコットンなどに浸して、優しく拭ってあげましょう。

 

シワのケアもこまめに

顔や四肢の皮膚にあるシワは、汚れが溜まりやすく、皮膚炎や臭いの原因にもなります。汚れが溜まる前に、濡らしたガーゼなどで汚れを取り除き、そのあとは十分乾かしてあげるようにしましょう。よだれも多く、皮脂も出やすい犬種なので、月に1〜2回は全身をシャンプーしてあげることで、体臭や皮膚病の予防に繋がります。

 

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肥満に注意

食欲旺盛なバセット・ハウンドですが、運動はあまり好きではありません。クンクン臭いを嗅ぎながらの「探索行動」は大好きなので、30分以上のお散歩を好みますが、進む距離はわずかです。そのため、日頃から太らせないように注意することが大切です。おやつは極力控え、規定量を守ってフードを与えることを心がけて、体重管理をしっかりしてあげましょう。

 

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かかりやすい病気

心室中隔欠損症

心臓の中の右心室と左心室を隔てている心室中隔という筋肉の壁に、生まれつき穴(欠損孔)が開いてしまう病気です。バセット・ハウンドは遺伝的にこの病気にかかりやすいことが知られています。

心室中隔欠損症は、穴の大きさによって症状が異なります。穴が小さい場合には無症状なことも多く、健康診断などで心雑音が聴取され偶然発見されるケースも少なくありません。重度になると、発育が悪い・疲れやすい・咳が出る・呼吸が苦しそう・食欲がないなどの症状が現れます。穴が小さく症状がない場合には、定期的に全身や心臓の状態を検査しながら経過観察をします。まれではありますが自然に穴が閉じるケースもあります。何かしらの症状が見られる場合には、薬で心臓の負担を軽減するなどの内科治療を行う場合もありますが、外科手術で穴を塞ぐことが唯一の根治治療です。

外耳炎

床につくほどの長い垂れ耳が特徴のバセット・ハウンドは、ご想像通り、外耳炎になりやすい犬種です。細菌や真菌、耳ダニなどが耳の中で繁殖して炎症を起こす「感染性外耳炎」が一般的で、
垂れ耳の犬種は耳の中が蒸れやすいことや、普段耳の中を観察しにくいことから、外耳炎が悪化しやすいと言われています。耳を掻く、頭を振る、耳のあたりを触ると怒る、耳が臭うなどの症状が見られた場合には、早めに動物病院を受診しましょう。耳洗浄や点耳薬、飲み薬などの内科治療で改善することが多いですが、重度なものでは中耳や内耳に炎症が及び、外科手術が必要になる場合もあります。日頃から耳をめくって通気性を良くしたり、耳の中に変化がないか観察してあげるようにしてください。

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脂漏性皮膚炎

犬の皮膚は、皮脂腺というところから分泌される皮脂によって、刺激や乾燥から皮膚守る役割をしています。何らかの原因で過剰に皮脂が出てしまったり、反対に皮脂が減りすぎてしまうことで様々な皮膚トラブルを起こす慢性の皮膚病を、脂漏性皮膚炎と言います。
脂漏性皮膚炎では、皮膚がベタつく・体臭がきつくなる・毛が抜ける・フケが出るなどの症状が見られます。症状が長期になると、炎症を起こしている部分の皮膚が分厚くなったり、黒ずんだりする苔癬化を起こします。脂漏性皮膚炎は、真菌(カビ)の一種であるマラセチアの感染を助長したり、細菌感染による膿皮症などの二次的な感染症を起こしやすく、外耳炎の原因にもなるため、日頃の皮脂の管理が重要になります。獣医師と相談の上、適切な頻度でシャンプーをし、余分な皮脂を落としてあげましょう。シャンプーの後にはしっかり乾かすこと、また、保湿剤を使い皮膚を乾燥させないようにすることも重要です。

 

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皮膚病

 

 

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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