犬が人間よりはるかに優れた嗅覚の持ち主だということは、よく知られていますね。では、なぜ犬は人間では感じることができない微かなニオイでも嗅ぎ取ることができるのでしょうか?犬の鼻の構造から機能、鼻の病気までを解説します。
まずは犬の鼻の構造を確認してみましょう
人間の鼻は、高さに差はあるものの、見た目に極端な違いはありません。けれども犬の鼻は、犬種や個体によって長さや形、色など見た目にも分かる違いがあります。
犬の鼻の形とは?犬種による違いは?
犬の鼻とは、鼻先から目元にかけての口吻部(こうふんぶ=マズル)のことを指します。口吻部は、犬種によって長さや大きさなどが異なりますが、口吻部の長さの違いにより「長頭種」「短頭種」に区別されます。
□長頭種(口吻部が長い)の代表例
グレイハウンド、ボルゾイ、ジャーマン・シェパード・ドッグ、コリー、ポインター、ドーベルマン・ピンシャーなど
□短頭種(口吻部が短い)の代表例
パグ、ボストンテリア、ブルドッグ、フレンチブルドッグ、ペキニーズ、ボクサー、シーズーなど
鼻の形による嗅覚の違いはあるの?
ニオイを嗅ぎ取る能力、つまり嗅覚は、口吻部が長くて大きい犬のほうが、短くて小さい犬より優れています。
その理由は、ニオイを感じ取る嗅細胞(きゅうさいぼう)が、鼻腔(びくう)の奥にあるからです。鼻腔とは、鼻の穴の奥に広がっている空気の溜まり場で、その奥にある嗅上皮(きゅうじょうひ)という粘膜に、ニオイの物質を感知する嗅細胞(きゅうさいぼう)があります。そこでキャッチされた情報が脳の中にある嗅球(きゅうきゅう)に運ばれ、ニオイとして認識されるので、鼻腔の表面積が広いほうが、ニオイを感知する嗅上皮、つまり嗅細胞が多いことになり、ニオイに対する感度が高くなるのです。
なお、鼻の穴(鼻孔)のある鼻先の色は、黒や茶色など犬種や個体によって違いがありますが、色による嗅覚の違いはありません。猫は鼻の頭が白いと、日光過敏症になる可能性が考えられますが、犬の場合は心配する必要はないでしょう。
犬の嗅覚は人間の何倍あるの?
犬の嗅覚を人間と比較した場合、犬のほうが1000倍から1億倍も優れていると言われています。警察犬として多く活躍しているシェパードは、人間の約4000倍の嗅覚を持っているとか。ニオイの種類によって感知する度合いには違いがあり、また犬種や個体によっても違いがあるので、一概に「犬の嗅覚は人間の何倍」とは言えません。ですが、犬は脳の中にある嗅球の大きさが人間より約4倍と大きいので、犬種を問わず人間よりかなり優れた嗅覚の持ち主であることは確かです。
湿った鼻のほうがニオイを嗅ぎやすいの?
鼻が湿っているほうが、ニオイの物質が鼻の粘膜に吸着しやすく、それだけ嗅覚の感度が高まるため、鼻孔まわりも、鼻腔内も湿っているほうが、ニオイを嗅ぎやすくなるのです。ちなみに、犬の鼻の中には、基本的には毛が生えていません。鼻毛がないと、空気中から埃や細菌などを体内に吸い込みやすいのではと心配されるかもしれませんが、犬の鼻は人間よりウェットな状態なので、異物が吸着されて体内に入りにくい仕組みになっています。
犬の鼻にはニオイ以外の機能もあるの?
犬の鼻はニオイを嗅ぎ取る以外にも、生きていくうえで大切な役割を果たしています。
発汗による体温の調整
犬の鼻は、汗を外に出して体温を下げる汗腺の役割も果たしています。犬にも全身に汗腺がありますが、汗腺の数は人間に比べると少なく、体内の水分を蒸発させているのは、主に鼻と肉球になります。
フェロモンの感知
犬の鼻には、フェロモンを嗅ぎ取る特別な機能が備わっています。鼻腔と上顎の間に、鋤鼻器(じょびき/ヤコブソン器官)と言われるのが、フェロモンを感知する器官で、犬にも猫にもあります。この鋤鼻器は、発情期の雌犬が発する性フェロモンや母犬が乳の周辺から発する鎮静フェロモンなどを感知することができ、不妊治療をしてもその機能は衰えることはありません。
犬の鼻の病気、心配な症状は?原因は?
犬の鼻に次のような症状が見られたら、病気のサインかもしれません。よく観察したうえで、症状が続くようであれば獣医師の診察を受けましょう。
鼻水がよく出る
鼻炎、副鼻腔炎、感染症(犬ジステンパー、パラインフルエンザ、伝染性咽頭気管支炎など)やアレルギー、腫瘍、歯周病の悪化などの原因が考えられます。
*詳しくは「【獣医師監修】犬が鼻水を垂らしているけど大丈夫?その症状や原因は?」をご覧ください。
鼻血が出る
異物の混入、外傷、鼻炎、副鼻腔炎、腫瘍、血小板の減少を引き起こす免疫介在性の病気、歯周病の悪化、農薬の中毒(クマリン中毒)などの可能性が考えられます。
*詳しくは「【獣医師監修】犬の鼻から血が!今すぐ病院に行くべき?鼻血の原因と対処法とは?」をご覧ください。
鼻が乾燥する
犬の鼻が乾いているか、濡れているかは、健康には直接の関係はありません。寝起きは乾燥気味の犬も多く、また老化によって皮膚の保水力や弾力性が失われて、鼻が乾燥することがあります。しかし、日中、活動しているときに鼻が乾燥している場合は、病気のサインかもしれません。考えられる病気は、アレルギーや角化症、自己免疫性皮膚炎(犬の天疱瘡)、ジステンパーなどです。
*詳しくは「【獣医師監修】犬の鼻の乾燥は病気のサイン?ひび割れ、角化症の原因や対処法とは?」をご覧ください。
いびきをかくように鼻をグーグー鳴らす
息をするときに鼻の奥からグーグーと音をさせたり、眠っているときにいびきのような音を鳴らしたりする場合があります。主な原因としては、鼻腔狭窄、腫瘍が考えられます。また肥満によって気道が狭くなると、同じように息をするときにグーグーと音を鳴らすことがあります。
*詳しくは「【獣医師監修】犬もいびきをかくの?もしかして病気のサイン?いびきの原因と治療法とは?」をご覧ください。
犬の鼻は、息をするだけでなく、多様な働きをする大切な器官です。愛犬の健康と健やかな成長を守るために、飼い主として犬の鼻の健康には、いつも気を配ってあげたいものですね。
★「うちの子」の長生きのために、年齢や季節、犬種など、
▼「うちの子おうちの医療事典」で本記事に関連する病気を調べる
□ 鼻炎
□ 外鼻孔狭窄症
□ 歯周病
□ 腫瘍
□ 天疱瘡
★「ワンペディア編集部」では、愛犬との暮らしに役立つお勧め記事や、アイペット損保からの最新情報を、ワンペディア編集部からのメールマガジン(月1回第3木曜日夕方配信予定)でお知らせしています。ご希望の方はこちらからご登録ください。