独特なのっぺり顔に小さな瞳が印象的なイギリス原産の犬種ですが、実はもともとは闘犬だったことをご存知でしょうか?現在では家庭犬として人気を集め、賢く穏やかな性格になっていますが、小さなお子さんや他の動物との同居には少し注意が必要な犬種でもあります。
ここでは、そんなブルテリアの歴史や特徴、性格、一緒に暮らす上での注意点、かかりやすい病気について詳しく解説します。

ブルテリアの歴史

ブルテリアは闘犬として作り出されたイギリス原産の犬種です。
1700年代のイギリスでは、犬を牛と闘わせる「ブル・ベイティング」や、クマと闘わせる「ベア・ベイティング」が流行していました。これらの見世物では、ブルドッグが闘犬界の中心として活躍しておりましたが、ブルドッグの勇敢性にテリアの敏捷性を備えさせるために作り出されたのがブルテリアだと言われています。1835年には動物愛護の観点から、これらの見世物は禁止されるようになりますが、犬同士を闘わせる「闘犬」は継続され、その中でフェアプレー精神を持ったブルテリアは次第に人気を博していったと言われています。

 

そんな歴史的背景の中で、現在のブルテリアの基礎固めに大きく貢献した犬がいます。1860年代、バーミンガムの畜犬商が、現在は絶滅しているホワイト・イングリッシュ・テリアとダルメシアンを掛け合わせて作り出したホワイトのブルテリアは、「The White Cavarier(白い騎士)」と呼ばれたちまち大人気となりました。

その後、闘犬自体も禁止されるようになると、ブルテリアはドッグショーへと活躍の場を移すようになります。見栄えがするよう、体型はよりスマートに、特徴的な卵型の頭はより発達し、すっと伸びた鼻先はよりシャープになるよう品種改良され、1936年に正式に犬種として登録されました。

ブルテリアの特徴

ブルテリアの最大の特徴は、「のっぺり」という言葉がぴったりの卵型の頭部です。他の犬種で一般的に見られる、マズルと額の境目にある「ストップ」と呼ばれるくぼみが、ブルテリアにはほとんどありません。

大きさ・体重

JKC(ジャパン・ケネル・クラブ)では特に体重等の規定は設けていませんが、体高50cm前後、体重20kg前後が一般的で、中型犬に分類されます。

寿命

ブルテリアの平均寿命は11〜14歳と言われています。

毛並み・毛色

ブルテリアは艶のある短い被毛を持っています。
毛色はホワイトを基本に、様々なバリエーションがあります。

ホワイト

フォーン&ホワイト

白を基調に薄い茶色が入っているカラーです。

ホワイト&ブリンドル

ホワイト&ブラック・ブリンドル

レッド&ホワイト

ミニチュアブルテリアとの違い

ミニチュアブルテリアは、ブルテリアと同じルーツを持ち、その中で小型のものだけが独立して犬種認定されたものです。JKCでは、体高35.5cmを超えないものをミニチュアブルテリアとし、体重の制限は設けられていませんが体のバランスが取れたものが望ましいとしています。

ブルテリアの性格

ブルテリアはとても活発な犬種です。闘犬の名残を感じさせる忠誠心と警戒心を持ち合わせますが、飼い主には愛情深く接します。しかし、元来の闘争本能が時折顔を見せることもあり、小さな子どもや小型犬・猫・うさぎなどの小動物たちには攻撃的になってしまうこともあるので、同居には注意が必要です。

多頭飼育は可能?

ブルテリアを初めて飼育する方には多頭飼育はおすすめしません。闘争心が強く、パワーがある犬種なので、他の動物との同居は思わぬ事故を招きかねません。ブルテリアの多頭飼育をお考えの場合には、先住犬の性格を見極め、きちんとトレーニングをした上で、よく検討するようにしてください。

一緒に暮らす上での注意点

屋外飼育は可能?

一見鼻先の長そうに見えるブルテリアですが、実はブルドッグなどと同じ「短頭種」に分類されます。短頭種は、呼吸による体温調節が苦手なため、屋外飼育には向いていません。エアコンの効いた室内で飼育してあげましょう。また、皮膚もとても敏感で紫外線にも弱いので、軒先や日当たりの良すぎる場所での飼育も避けましょう。

散歩の時間は?

ブルテリアは筋肉量が豊富な中型犬なので、1日1時間程度の十分な散歩を必要とします。特に注意が必要なのは真夏の散歩です。短頭種のため熱中症にかかるリスクが高いので、暑い時期には散歩の時間帯に注意しましょう。また、短毛でシングルコートの被毛のため、紫外線などの刺激にとても弱いです。特にホワイトが基調のブルテリアは、紫外線による皮膚炎を起こしやすいので、長時間の散歩の際はUVカットの服などを着せてあげると良いでしょう。

しつけのポイント

ブルテリアは賢く、活発な犬種ですが、トレーニングには根気が必要です。テンションが上がってしまうと暴走しやすいので、ダメな時には「ノー」が迅速に伝わるよう、日頃から叱り方を統一させましょう。

また、ひょうきんな見た目とは裏腹に、闘犬のバックグラウンドを持つ犬種だということを忘れてはいけません。一旦噛みつくとその強い顎はなかなか離してくれません。噛み癖などがつかないよう、幼いうちから信頼関係を構築しましょう。ストレスを溜めさせないために、日頃から散歩などで十分に運動させることも重要です。

お手入れの頻度

短毛種のため、抜け毛はさほど目立ちませんが、換毛期にはそれなりの量が抜けます。ブラッシングは週に1〜2回を目安に行い、家の隅々に入り込んだ細かい毛はこまめにお掃除するようにしましょう。また、比較的体臭が出やすい犬種なので、月1〜2回程度、全身を優しくシャンプーしてあげましょう。

 

★「トリミング」に関するワンペディア獣医師監修記事は、こちらをご覧ください。

 

ブルテリアのかかりやすい病気

膝蓋骨脱臼(通称パテラ)

膝蓋骨脱臼は、後ろ足にある「膝蓋骨」という膝のお皿が、ずれたり外れたりしてしまう病気です。膝蓋骨がはまっている滑車溝という溝が生まれつき浅い小型犬などで多いことが知られていますが、動きが激しく体重も重いブルテリアでも多く発症します。
膝蓋骨が脱臼を起こすと痛みが生じ、脚を引きずりながら歩いていたり、3本足で歩くような症状がみられます。軽度なものでは自然に症状が消失したり、内科治療で改善しますが、進行すると外科手術が必要となります。
予防には、フローリングなどの滑りやすい床にはカーペットを敷くなどして、膝の負担を減らしたり、過度な運動をさせないことが有効です。肥満も足腰への大きな負担となるので、日々の体重管理にも気をつけましょう。また、グルコサミンなどの関節ケア用サプリメントも、予防や維持に一定の効果があることが知られています。

 

*詳しくは「小型犬に多い「膝蓋骨脱臼」とは?治療法と予防法【獣医師が解説】」をご覧ください。

水晶体脱臼

水晶体脱臼は、目の中のレンズの役割をしている「水晶体」が、正常な位置からずれてしまう病気です。水晶体は毛様体小体という繊維によって支えられ、常に正しい位置に保持されていますが、この毛様体小帯が伸びたり切れたりしてしまうことで、水晶体脱臼が起こります。テリア系の犬種全般で遺伝的によくみられる他、怪我や事故など外傷的に起こる場合もあります。「愛犬の瞳の見え方がいつもと違う」と気づかれて来院するケースが多く、水晶体脱臼によって「緑内障」や「ぶどう膜炎」など他の目の病気が二次的に起こることがあるため、早期発見が重要です。

聴覚障害(難聴)

ブルテリアの遺伝性疾患の中でよく知られているのが「聴覚障害」です。ホワイトのブルテリアで特に多く、これはかつてホワイトを作出するために交配に使われたのが、聴覚障害の遺伝子を持つダルメシアンであったことが原因だと言われています。
聴覚障害の程度はさまざまで、左右どちらかが聞こえないものから、両耳全く聞こえないものまであり、聴覚を復活させる治療法は残念ながらありません。その子に応じたコミュニケーションの取り方やトレーニングの仕方を習得することで、日常生活にあまり支障を来さず過ごせる場合もあります。

皮膚疾患

ブルテリアは短毛で皮膚が敏感なため、皮膚疾患が非常に多い犬種です。特にホワイトのブルテリアは、紫外線などの日光刺激によって発生する「体幹性日光皮膚炎」が多いことが知られています。また、肉球が赤く腫れたり足先に炎症を起こす「肢端皮膚炎」や、口や肛門の周りに慢性的なかゆみや炎症が起こる「フルンケル症」、ノミ食べ物に関連したアレルギーなども起こしやすいので、日頃から皮膚の状態をよくチェックしてあげるようにしましょう。

 

★犬種別病気ガイド『ブル・テリア』も合わせてご覧ください。

 

★「うちの子」の長生きのために、年齢や季節、犬種など、かかりやすい病気や、症状や病名で調べることができる『うちの子おうちの医療事典』をご利用ください。  

☞『うちの子おうちの医療事典』で本記事に関連する病気を調べる

膝蓋骨脱臼

緑内障

皮膚病

ノミの寄生

食物アレルギー

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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