私たち人間と違う能力を持っている犬は、どのような世界を見ているのでしょうか。

視覚、嗅覚、聴覚ともに人間より敏感な器官を持っていますが、実は人間より視力は低いと言われています。愛犬の目にうつっている世界は、私たちが見ている世界と全く別物。今回はそんな犬の視力、そして犬から見た世界についてご紹介します。

 

犬の視力は0.3未満

犬の視力は平均して0.2~0.3程度で、焦点を合わせる能力が弱く視界がぼやけて見えています。私たち人間の目は正面を向いていますが、犬の目は外側40°あたりを向いているため焦点を合わせにくいとも言われています。

しかし犬に見えている世界は確かにぼやけているものの、人間より優れた機能がたくさん備わっており、嗅覚や聴覚などの器官を使い、距離感を測ったり、物体を認識しているので、私生活に差し支えはありません。

 

優れた動体視力と広い視野を持っている!

ビーグル ボール

犬は狩りをしてきた生き物なので広い「視野」を持っています。

私たち人間が見渡せる視野が180度なのに対し、犬の視野は250~270度と広範囲の視野を見渡すことができます。また、優れた動体視力を持っているので、静止している物体よりも「動きのある物体」を捉えることが得意です。シェパードは「静止した物体なら500m以上、動きのある物体ならば、800m先まで認識することができた」という実験結果もありますし、羊を追いかける牧羊犬だと1500mにいる人の合図まで認識することができます。

犬は視力0.3未満でありながら「狩りをする本能」があるので「動きのある遠くの物体」を認識する能力を持っており、視覚以外の器官や能力を使って物体を認識しているので、人間の視力0.3未満で見える世界とは異なるのです。

 

犬は近視なの?遠視なの?

犬は「遠視または近視である」と言われていますが、実際はどちらなのでしょうか?アメリカの大学の獣医学部が240頭の犬を集めて行った研究では、ほとんどの犬が近視でもなく遠視でもない「正視」だということがわかりました。犬種によっては、決定的な特徴も見られ、ジャーマンシェパードやロットワイラーは大半の犬が近視の傾向があり、グレーハウンドは遠視の傾向にあったそうです。

近年では人為選択により様々な犬種と繁殖させ、新しい犬種が生まれているので、遺伝子や環境の変化によりこの正視、または近視、遠視傾向、の割合も変わってくるのではないかと憶測されます。動体視力が優れているので「動きのある物体」であればかなりな広範囲で認識する能力はありますが、だからと言って「近視」という訳でもないようです。

暗い場所では人間より優れた認識力を発揮する

犬も人間も、目はいくつかの層にわかれているのですが、犬には人間にはない「タぺタム層」と呼ばれている鏡のような層を持っています。このタぺタム層が光を反射してくれるので、少ない光しかない暗闇の中でも、物体を認識することができます。そもそも犬はもともと夜行性の動物なので、暗闇の中での認識力は高く、人間の約5倍は見えていると言われています。しかしこのタぺタム層の働きが光を拡散してしまうため、人間より視力が低く、ぼやけて見えていると言われている原因でもあるのです。

ちなみに、すべての犬がこのタぺタム層をもっている訳ではなく、シベリアンハスキーなどの瞳が青い犬種は実はタぺタム層を持っていません。1年中雪が降り積もる山岳地帯で暮らしてきたシベリアンハスキーは、雪が光を反射している環境で暮らしてきたので、タぺタム層を持たなくても充分に光を取り入れることができたからだと言われています。

犬には色がどう見えているの?犬の色彩について

ここまで、犬の視力、そして特性、私たちにはないタぺタム層についてご紹介しましたが、「人間と犬の見える世界の違いがたくさんあるなら、色の見え方も違うのでは?」と思われた方もいると思います。そう、私たち人間と犬では色の見え方も違います。

人間と犬の目の構造は似ているものの、網膜の構造が異なります。そのため、私たちが見ている世界と犬が見ている世界に違いがあるのです。犬の網膜には色を認識する力がほとんどなく、青~黄にしか反応しないので、青色と黄色、そしてその2色の中間色しか認識することができません。カリフォルニア大学の犬の視覚実験では、私たちに見える赤は「暗いグレー」。緑、黄色、オレンジは「黄色っぽい色」。紫、青については「青っぽい色」に見えているという結果が発表されています。この結果から、人間と犬の色別認識力が大きく異なることがわかりますよね。例えば、私たちから見ると赤と緑が色鮮やかなチューリップ畑は、犬から見ると赤と緑がほぼ同じ色に見え、全体的に黄色くくすんでいるように見えているのです。

特に赤と緑の色別を苦手なので、芝生の上でのボール遊びも「赤いボール」を選んでしまうと、緑と赤の区別がつかない犬にとっては難しい遊びになってしまうのです。犬の色別認識力の性質を考えると、青が濃いボールか、黄が濃いボールを選んであげるといいでしょう。

視力以外の感覚で物体を認識している

犬は視力が悪いけれど、視覚以外の感覚や能力を使って物体を認識しています。視力こそ人間より劣っているものの、聴覚は人間が感じとれる音の範囲の約4倍、人間が聞こえる音の6分の1程度の音も聴きとることができます。また犬の五感の中で一番優れている嗅覚は、人間の1000倍~1億倍も優れており、生まれたときから高齢になるまで機能を維持することができます。

嗅覚のメカニズムについてはまだ解明されていないことが多いものの、犬は視力が悪くても、聴覚、嗅覚、そして触覚で、距離感や障害物を察知することができ、動体視力も優れているので日常生活を難なく送ることができるのです。

 

「犬の目」に関するワンペディアの獣医師監修記事をご覧ください。

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アイペット獣医師

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