犬と生活をしていると、時には人間の食べ物を与えたり、テーブルの上にあったチョコレートを勝手に食べられてしまうなんてことも起こりますよね。でも、人間の食べ物が犬にとって必ずしも安全なわけではないことをご存知でしたか?毒性のあるもの、もしくは毒性がなくても過剰摂取することで「中毒」を引き起こしてしまう場合があるのです。犬との生活が始まったら、犬に与えてはいけない食べ物を知っておくことが重要です。
中毒を引き起こす食べ物とは?
毒物によって体に有害な作用を及ぼすことを「中毒」といいますが、犬が中毒になると、嘔吐や下痢、食欲不振、最悪の場合には死亡する場合も。では、どんな食べ物に注意すべきなのでしょうか?中毒になってしまった場合の症状もあわせて紹介します。
チョコレート
チョコレートに含まれる「テオブロミン」という物質に毒性があります。
症状が出る摂取量
チョコレートに含まれるテオブロミンの量は、チョコレートによって異なります。
以下はあくまで参考値としてください。
・ダークチョコレート/体重1kgあたり5g
・ミルクチョコレート/体重1kgあたり10g
・ホワイトチョコレート/体重1kgあたり500g
【例】3kgの小型犬の場合:
板チョコ1枚を50gとすると…
ミルクチョコレートを約3/5枚
ホワイトチョコレートを約30枚
ダークチョコレートを約3/10枚食べると症状がでます。
チョコレート中毒の症状
摂取したチョコレートの量により、中毒症状の重症度は変わってきます。また、チョコレート摂取後、早くて1~2時間、通常6~12時間以内に以下の症状が出るといわれています。
初期症状:落ち着きがなくなる・吐く・尿失禁(おもらし)・下痢・筋肉の震え・脱水・体温が高くなる
症状が進行すると:筋肉の硬直・痙攣・昏睡・死亡する可能性もある
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タマネギ
タマネギに含まれる「アリルプロピルジスルフィド」という物質が体内に吸収され赤血球を壊すことで、貧血症状が出ます。赤血球は体中の組織に酸素を送り届け、代わりに不要物を受け取っています。そのため、赤血球が壊れてしまうと、呼吸困難などに陥ることもあります。
症状が出る摂取量
・タマネギ/体重1kgあたり15g
【例】3kgの小型犬の場合:
タマネギ1個を200gとすると…
タマネギを約1/4個食べると症状がでます。
タマネギ中毒の症状
発症までには1~5日ほどの時間がかかります。
初期症状:貧血(粘膜が白くなる)・黄疸(粘膜が黄色くなる)・食欲不振・元気がない・尿が赤い(血色素尿)
症状が進行すると:呼吸困難に陥り、ひどいときには死に至る
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キシリトール
体内に吸収されたキシリトールによって膵臓からインスリンが急激に放出され、低血糖症を引き起こします。犬がキシリトールを摂取することは想像がしにくいと思いますが、実は一部のガムの中にキシリトールが含まれている場合があるのです。飼い主さんが注意して選ぶようにしましょう。
症状が出る摂取量
・キシリトール/体重1kgあたり0.1gで低血糖症を引き起こします。
・キシリトール/体重1kgあたり0.5gで肝臓に対して毒性を示します。
【例】3kgの小型犬の場合:
ガム1粒にキシリトールが0.6g含まれているとすると…
ガムを約1/2個食べると低血糖症を引き起こし、約1粒食べると肝臓に対して毒性を示します。
キシリトールの含有量はガムによって大きく異なりますので、目安としてご覧ください。
キシリトール中毒の症状
キシリトールの場合も、摂取量によって症状が異なります。
初期症状:摂取後30~60分以内に、 吐く・脱力感・よだれを流す・発作
症状が進行すると:摂取後2~72時間以内に、急性肝不全の兆候
ナッツ
原因物質はまだわかっておらず、中毒を引き起こすメカニズムも不明です。
症状が出る摂取量
・マカダミアナッツ/体重1kgあたり2.2g
【例】3kgの小型犬の場合:
マカダミアナッツ1粒を2.2gとすると…
マカダミアナッツを約3粒食べると症状がでます。
ナッツの中毒の症状
早くて摂取後60分、通常6~12時間以内に、吐く・脱力感・震え・腹痛・ぐったりと横たわるなどの症状が見られます。
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アボカド
アボカドの果実と種に含まれる「ペルシン」が原因で起こります。中毒量はまだわかっていません。
アボカド中毒の症状
吐く・下痢・呼吸困難
ぶどう/レーズン
原因物質はまだわかっていません。中毒を起こすメカニズムも不明です。
症状が出る摂取量
・ぶどう/体重1kgあたり19.6g
・レーズン/体重1kgあたり2.8g
【例】3kgの小型犬の場合:
巨峰1粒を17g、デラウェア1粒2g、レーズン1粒0.6gとすると…
巨峰を約3.5粒、デラウェアを約29粒、レーズンを約14粒食べると症状がでます。
ぶどう/レーズン中毒の症状
摂取後24時間以内に、吐く・食欲不振・下痢
全ての犬に起こるわけではありませんが、急性腎不全を起こすこともあります。急性腎不全が重症化した場合には死に至る場合もあります。
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アルコール
アルコール飲料に含まれる「エタノール」が原因です。また、焼く前のパン生地(ある特定の酵母が原因)や、腐敗したりんごを摂取した後にアルコール中毒を起こしたという事例もあります。
症状が出る摂取量
・100%濃度のエタノール/体重1kgあたり5.5mlで命を落とします。中毒を起こす量は分かっていません。
【例】3kgの小型犬の場合:
アルコール度数5のビールとすると…
ビールを約1缶摂取すると命を落とすことになります。
アルコール中毒の症状
初期症状:尿失禁(おもらし)・吐く・下痢・嗜眠(眠り過ぎる)
症状が進行すると:呼吸制御・昏睡・発作・死亡する可能性も出てきます
もし食べてはいけないものを食べてしまったら?
「飼い主さんの目を盗んでチョコレートを食べた」「ご飯を食べてからなんだか様子がおかしい」もしこんな風に中毒を疑う場合には、飼い主さんはどのような対処をすべきなのでしょうか?
何を、どのくらい、いつ食べたのか。獣医さんに正しく伝える
中毒を引き起こした場合、家庭で出来る治療法はありません。必ず動物病院で診察を受けてください。その際、獣医さんへ伝える内容は全部で3つ
何を食べたか
犬にとって毒性のある食品を食べているかどうかの判断ができます。
どのくらい食べたか
犬の体重と摂取した分量によって、症状がどのレベルなのかが分かります。また、毒性のない食べ物でも過剰摂取することで中毒を引き起こす場合があります。
いつ食べたか
摂取してからどのくらい経過しているかによって、症状のレベルが分かります。もし時間が分からなければ、いつまで元気だったか、あるいは元気がないことに気付いたのはいつ頃かを獣医さんに伝えましょう。
これらの情報を出来るだけ細かく、正確に伝えるようにしてください。
動物病院での治療方法
犬が毒物となるような食べ物を摂取した場合に、飼い主さんが一番気をつけなければならないのは、絶対に自分の判断で対処しようとしてはいけないということです。動物病院で行う治療法は主に4つありますが、獣医さんは様々な状況から判断して、その子にとって最適な処置を行います。愛犬が苦しそうにしていたら、速やかに動物病院に連絡をしましょう。
深夜などでかかりつけの獣医さんと連絡が取れない場合でも、夜間病院があります。夜間病院が遠方にあってすぐに診察を受けさせてあげられない場合は、まず電話をするといいでしょう。緊急対応が必要な場合であっても、最適な指示をしてくれるはずです。
毒物がまだ胃の中に残っている場合
吐かせる(催吐処置)
危険な食べ物を食べてしまってから時間があまり経っていないときは、胃の中に毒物が残っている可能性があるため、吐かせることがあります。人間のように指を喉の奥に入れて無理やり吐かせるのではなく、薬を使って嘔吐を促します。
「吐かせる処置」と聞くと、自宅で簡単にできそうに聞こえるかもしれませんが、自宅で吐かせようとする行為は非常に危険ですので、絶対にやめてください。症状がひどくて意識が朦朧としている場合などは、吐いたものが詰まってしまう可能性もあり、そのようなときに催吐処置は行いません。必ず獣医さんの指示に従いましょう。
胃洗浄
催吐処置を施したものの嘔吐してくれなかった場合や、意識が朦朧としていたり、逆に暴れすぎたりして催吐処置を行えない場合、また催吐処置で使用する薬が、持病などで使えない場合に胃洗浄を行います。胃洗浄も催吐処置と同様に、胃に毒物が残っていなければ意味がない処置になるので、中毒を引き起こすようなものを食べてから数時間しか経過していない場合に行います。
また、胃では消化されず、腸に詰まってしまう可能性があるアボガドの種などは、内視鏡を使って取り除く場合もあります。
便と一緒に出させる
危険な食べ物を摂取してからある程度時間が経過してしまっている場合は、毒物が胃から腸へ送られ、からだ中に回ってしまっています。その場合は胃洗浄をしても意味がないので、便と一緒に毒素を排出させるという処置をとることがあります。
また、摂取した毒物の量が少ない場合などは、催吐処置のための薬や麻酔などで体に負担をかけずに自然排泄を促すケースもあります。下剤または毒物を吸着する働きがある動物用の活性炭を飲ませることで、体外に毒素を排出させます。
毒物が既に消化されてしまった場合
点滴によって体内の毒物濃度を薄める
危険な食べ物を摂取してから時間が経過してしまうと、毒素が血液に流れ出て、体中をめぐります。このような場合は点滴をして、体内の水分量を増やすことで毒素の濃度を極力薄める処置をとります。中毒症状を引き起こした場合は、とにかく早めの対処が大切です。飼い主さんは犬の状況を正確に伝えることと、動物病院への搬送を急ぐようにしてください。
特に気をつけなければならない食べ物についてまとめてきましたが、愛犬を中毒から守ることはなかなか大変です。ここで挙げたのは人間の食べ物ですが、他にも犬が食べると危険な植物もあります。もっとも効果的なのは、拾い食いをしないトレーニング。危険な食べ物はなるべく排除しつつ、同時にトレーニングも行っていくといいでしょう。
*拾い食いをしないためのトレーニングについては、『拾い食いをさせないためのトレーニング【獣医師が解説】』をご覧下さい。
犬に与えても大丈夫な食べ物
ここでは犬に与えても大丈夫な食べ物をご紹介しますが、これらはあくまで与えすぎないことが大前提です。水分量の多いものを与えすぎると下痢をしたり、野菜と果物ばかり与えていると、腎臓へ負担がかかったり、結石ができやすくなります。どんなものでも食べ過ぎれば体に害を与えてしまうので、「おやつとして少量与えても大丈夫な食べ物」として、認識しておいてください。基本的に、あくの強い野菜や匂いが強いものは避けましょう。
キャベツ
生で与えると下痢をする可能性があるので、一度茹でたキャベツを冷まして与えてあげるといいでしょう。芯の部分は避けて、やわらかい葉の部分をあげてください。
もやし
ほとんどが水分でできているもやしは、食物繊維が豊富で低カロリーなのに、カルシウムやビタミンも含んでいるので、ダイエットには最適です。一度茹でてから与えてください。ただし、あまり消化のいい食べ物ではないということと、腎結石や腎臓への負担になる可能性があるカリウムを含んでいるので、与えすぎは禁物です。
トマト
同じく多くの水分を含むトマトもオススメです。生のまま与えても問題はありませんが、きちんと加熱してあげたほうがお腹には優しいでしょう。ただ、トマトを加熱すると非常に熱くなるので、十分に冷ましてから与えるようにしてください。
きゅうり・レタス
きゅうりとレタスも、与えて大丈夫な食べ物です。そのまま食べさせても大丈夫ですが、おなかの弱い子には湯通ししてあげれば完璧。加熱した際はきちんと冷ましてからあげてください。
こんにゃく
あまり消化がいい食べ物ではないので与えすぎはNGですが、カロリーが非常に低いので、ダイエットフードとしてはオススメです。みじん切りにした糸こんにゃくを茹でてからフードに混ぜてあげると、かさましをすることができます。こちらも食道に詰まらせないよう、大きさには気をつけて。
バナナ・リンゴ・梨・スイカ
果物はカロリーが高いので、与えすぎには注意が必要ですが、ご褒美として少量与えたいような場合は、「バナナ」「リンゴ」「梨」「スイカ」などがオススメです。
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サツマイモ、ジャガイモ、かぼちゃ
少量与えても問題はありませんが、おいも類は糖質もカロリーも高いため、与えすぎないように注意しなければなりません。
無糖ヨーグルト
犬に与えてはいけない食べ物の中に牛乳がありましたが、牛乳から作られたヨーグルトは与えても問題ありません。甘いヨーグルトは肥満の原因になりますので、無糖のものを選んであげるといいでしょう。
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★うちの子の長生きのために、気になる病気について簡単に調べることができる、「うちの子おうちの医療事典」もご活用ください。
☞「うちの子おうちの医療事典」で本記事に関連する病気を調べてみる
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血便が出ている
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