チワワ

家族として大切にしてきた愛犬とのお別れは、本当につらいですよね。中でも、誰よりも長い時間愛犬と一緒に過ごし、ずーっと愛犬を見守り続けた人の悲しみは非常に深く、通常の生活に戻れるようになるまで、時間がかかることも少なくありません。

 

悲しいのは家族みんな同じですが、家族の中でも最も辛い思いをするのは、お母さんであるケースが多いと言われています。もしもお母さんがなにかしらの不調をきたしていたら、周りの家族のサポートが必要になります。ここでは、多くの犬の死とそれに向き合う家族を見てきた獣医師が、深い悲しみによってなかなか立ち直れないお母さんに対して、家族がどのように向き合えばいいのか解説します。

愛犬と過ごす時間が一番長かった人の苦しみを理解してあげる。

家族みんなで飼っている場合でも、愛犬の面倒を見ている時間が一番長いのは、家族の中でもお母さんであるケースが多いですよね。お父さんが仕事に行っている間、子供たちが学校に行っている間、家でずっと愛犬のそばにいてあげるのはお母さんです。

 

愛犬が歳を重ね、今までのような自由な生活ができなくなっていく様子も、徐々に体が細くなって衰弱していく様子も、家族の誰よりもお母さんは愛犬の苦しみを目の当たりにしています。愛犬のためにできる限りのことをしてあげたいと思いつつ、つらそうにしている愛犬の苦しみを和らげてあげることはできない。代わってあげたいと思っても、もちろん代わってあげることはできない。自分にできるのは、つらそうな身体をさすったり、やさしい言葉をかけてあげることくらいです。

お母さんは家族が見てないところでも不安と闘い続けています

お父さんや子どもたちは、家に帰ってくると「ただいま!」の挨拶と一緒に愛犬のもとに駆け寄り、「大丈夫!?」と声をかけるでしょう。その声に応じて、愛犬がうれしそうに挨拶を返すでしょう。そんな様子を見て、もしかしたらお母さんは、せめてお父さんや子どもたちがずっと家にいてくれたらいいのに、と思うこともあるかもしれません。

 

でもお父さんには仕事があります。子供たちには学校があります。お母さんはそんな願いを押し殺して、いつ犬の体調が悪化するかも分からないという不安な気持ちと、ひとりで闘い続けているのです。そんな言葉にならない不安は、日々積み重なっていきます。

愛犬の全てを知っているからこそ生まれる感情

不安はどんどん大きくなり、やがてそれは「自分がちょっと買い物に出かけたとき、一気に体調が悪化したらどうしよう?」「自分しかこの子のそばにいてあげられる人はいないのに…」といった、半ば恐怖に近い感情へと変化していきます。自分が不在の間にもしものことがあることを考えると、愛犬のそばを離れることが怖くなるのです。

 

どんなに社交的な人であっても、こうした気持ちからどんどん自分の時間を削るようになっていき、愛犬に付きっ切りな生活を送るようになります。犬が生活の中心になり、“愛犬がすべて”という状況に陥らざるを得なくなるのです。

後悔が残りやすいのもお母さん

Human pet the Sleepy Puppy Pug Dog with the soft hand to take ca

 

そういった状況に陥ってしまうと、愛犬の最期に責任を感じてしまうことが多くなります。自分のお世話が不十分だったのではないか。一番そばにいてあげられた自分が、もっとしてあげられたことがあったのではないか…。どんなに一生懸命お世話をしていても、“あのとき、私がこうしていれば…”と後悔を残してしまう場合は少なくありません。

 

そして”愛犬がすべて”という生活を送っていたお母さんは、急にその愛犬がいなくなってしまうことで、壮絶な喪失感に襲われます。心にぽっかり穴があいてしまうのです。旦那さんや子供たちには仕事や学校があります。どんなにつらくても、学校で友達と話したり、仕事が忙しかったりすれば、多少心の痛みはまぎれるでしょう。しかしお母さんは、それまでずーっと付きっきりだった犬が突然いなくなったひっそりとした家に、一人ぽつんと取り残されるのです。その喪失感は、ちょっとやそっとでは埋められません。

 

一人取り残されたような苦しみに苛まれながら、かつて愛犬がいたはずの家を見渡して、まだ愛犬が家にいるような気持ちがしたり、なにもないのに急に涙が溢れ出してきて、情緒不安定になってしまうこともあるでしょう。

涙が出るのは自然なこと

もしかしたら、お母さんの悲しみ方があまりにも深刻で、体調不良に陥ったり、幻聴が聞こえたりすることもあるかもしれません。そんなお母さんの様子を見ていて、周りの家族は、このままではお母さんが精神病になってしまうのではないかと不安を覚えることもあるかもしれません。

 

しかし、実際は多くの飼い主さんがそのような体験をしているのです。愛犬を失った飼い主さんのうち、60%以上が食欲不振になったり、めまいをおこしたり、体調に不調をきたしているのです。(アイペット調べ)

お母さん、普通のことだから、いっぱい泣いていいんです

この深い悲しみは、精神病でもなんでもなく、至って普通のことなのです。お母さんの悲しみが他の家族と比べて深いのは、きちんと理由があるのです。お母さんが置かれていた状況を正しく理解してあげることで、お母さんの悲しみの深さもきっと理解できるはずです。そうすればその悲しみ方を、当然のこととして受け入れられるようになるでしょう。ずーっと一緒にいたのですから、愛犬の声が聞こえる気がすることも、体調に変化が起こることも当然のことなのです。

周りの家族ができる心のサポート

周りの家族にできることは、そんなお母さんの状況を理解し、寄り添ってあげること。

「○○ちゃんが苦しんでるのをずっと見続けるのは、つらかったよね。」

「○○ちゃんもがんばったけど、お母さんも本当にがんばったよ。」

など、声をかけてあげましょう。もしかしたらお母さんは、自分からその苦しみを口にすることはないかもしれません。だからこそ家族がお母さんの苦しみに寄り添い、できる限り話を聞いてあげることが大切なのです。

心の痛みを和らげるには

深い悲しみに襲われているお母さんの心を癒すのに、一番必要なのは時間です。いつか時間が傷を癒してくれます。その間、周りの家族はどのように接したらいいのでしょうか?

 

犬を見たり、犬の話題になると泣き出してしまうお母さん。そんなお母さんにできるだけ悲しい思いをさせたくないからといって、あえて愛犬の話を避けていませんか?無理に悲しみに蓋をするのは逆効果になる場合もあります。泣くことには一種のデトックス効果があると言われていますので、たくさん泣いたっていいのです。

ちょっとずつ心のアルバムに刻んで、見返してあげて

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そしてたくさん泣いた後は、もしも可能であるなら、気分転換に家族でお出かけするのもいいかもしれません。強引に理由をつけて、お母さんを家の中から連れ出してあげましょう。もしお母さんの外出が厳しければ、愛犬との思い出の写真でスクラップブックやアルバムを作成するのも、気持ちの整理がつきやすくなるかもしれません。

 

アルバムを作っていると、楽しかった思い出や幸せだった愛犬との生活を思い出して、またつらくなることがあるでしょう。しかし一方で、愛犬がもたらしてくれた幸せ、出会えてよかったという気持ちを思い出すきっかけにもなる可能性はあります。なにもすることがなくなってしまった日中に、アルバムを作るという目的が生まれ、動けるようになる可能性だってあります。外出することすらお母さんが拒むようになってしまったら、お母さんの様子を見つつ、現像した愛犬の写真を渡してあげてみるのもいいかもしれません。

その子は、永遠に家族の幸せの象徴です

そして精一杯愛犬のお世話をしてくれていたお母さんに、できるだけポジティブな言葉をかけてあげましょう。

「お母さんは一生懸命面倒を見てあげていたから、○○ちゃんもそのことは絶対にわかっているはずだよ」

「うちの子になれて、○○ちゃんは幸せだったと思う。」

「○○ちゃんはお母さんのこと、大好きだったもんね。」

悲しみの象徴としてではなく、家族全員を幸せにしてくれた感謝すべき存在として、愛犬との暮らしのよかった面に光をあてるようなイメージで会話してみてください。

Friends enjoying park

 

くれぐれも、お母さんの悲しみ方が異常だとか、みんな辛いんだから、というような発言はやめましょう。いつかお母さんが愛犬の不在を消化できるようになるまで、家族みんなで支えてあげてください。それが家族の宝物だった愛犬をずーっと見守り続けてくれた、お母さんのためにできることなのではないでしょうか。

アイペット獣医師

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