「普段は薄っぺらい耳の表面(耳介)が、パンパンに赤く膨れ上がっている」。それは耳血腫(じけっしゅ)と呼ばれ、簡単に言うと耳に血が溜まる病気です。原因は外傷や耳の振りすぎなどですが、事前のケアで防げることも多いので、原因と対策をしっかり知っておきましょう。
犬の耳血腫ってどんな病気なの?
耳血腫の症状
耳血腫とは、耳のいちばん外側、外に張り出している部分である耳介(じかい)に血腫ができる病気です。血腫は、耳介の皮膚と軟骨のあいだに血が混じった体液が溜まることでできます。耳介がパンパンに腫れ上がり、ひどい時はかなり分厚い状態に。内部に体液が溜まっているため触るとぶよぶよと柔らかく、熱を持っていることも。重みで耳が垂れてくるので、素人目にも異常が分かりやすいのが特徴です。
<原因①>物理的刺激
耳血腫の直接的な原因は、耳介の中の血管が切れることです。では、なぜ血管が切れるのでしょうか。その大元は外耳炎にあります。外耳炎が悪化したり慢性化したりして、耳を掻きすぎる、頭を振り続けるなどした結果、物理的刺激で血管が切れることがあるのです。アトピー性外耳炎、真菌性外耳炎など、痒みが強いタイプの外耳炎は特に要注意。外耳炎のほかにも、耳ダニの感染による掻きすぎや、事故などの強い打撲が原因で、耳血腫になることもあります。
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<原因②>免疫の問題
物理的刺激以外に耳血腫になった場合は、免疫の問題が疑われます。自己免疫疾患による突発性血小板減少症のため、血管が破れやすくなることから起きるケースです。まだ明らかになっていない部分もありますが、腎臓に不調がある場合に症状が現れることがあるようです。
耳血腫になりやすいのは大きな垂れ耳を持つ犬種
ビーグル、レトリバー、コッカー・スパニエル、バセット・ハウンドなどの大きな垂れ耳を持つ犬は耳血腫になりやすい犬種です。これらの犬種は、耳血腫にかぎらず外耳炎や中耳炎など耳のトラブル全体にかかりやすいと言えます。耳が垂れ、耳自体が耳の蓋のように閉じているせいで、内部に湿気がたまりやすく菌が繁殖しやすいのが原因です。垂れ耳の飼い犬さんは、日常的に耳をめくって中を見る習慣をつけましょう。
耳血腫がひどくなると切開手術が必要に?
耳血腫の治療法
耳血腫の治療法は、内科的・外科的の2つの方法があります。内科的治療は抗生剤や消炎剤、血管強化剤、ステロイド剤などを投薬。免疫系から発生している場合は、インターフェロンを用いる治療法などもあります。
外科的な治療では、レーザー治療や注射で体液を排出させる方法があります。注射では足りない場合、体液が溜まっているところを切開することも。大元の原因が外耳炎の場合は、この治療も同時に行います。
耳血腫は、長時間放置した場合や、術後の経過が良くない場合は、完治した後も耳が変形する可能性があります。そのため1日も早く治療を始めることが重要です。
耳血腫の予防法
最も大事なことは、外耳炎がひどくならないようにすることです。外耳炎が悪化すると、耳血腫のほかにも中耳炎や内耳炎などほかの耳の病気につながりやすいため、軽症のうちに治療しておきましょう。
予防として、関節に良いとされるグルコサミンやコンドロイチンのサプリが有効だという説もあります。サプリ単体で治療というよりは、薬や外科治療との併用というのが一般的です。
外耳炎が原因の耳血腫は、早めに治療をすることで短期間で治すことができます。逆に言えば、外耳炎を放置しておくと手術が必要になるほど病変する恐れがあるということです。また耳血腫は痛みや痒みだけでなく、耳の変形という残念な結果をもたらすことも。そうならないためにも、早期発見、早期治療が大事ですね。
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