愛犬と一緒に旅行を楽しんだり、帰省や引越しで移動する場合、距離によって飛行機利用になりますが、電車や車と違い愛犬のそばにいられない移動に不安を抱く方は多いと思います。ここでは犬を飛行機に乗せるリスク、飼い主さんが気をつけるべきこと、搭乗までの流れをご紹介します。

 

飛行機搭乗で考えられるリスク

航空会社側では、犬は荷物と別にして丁寧に扱ってくれます。しかし飛行機という特殊な環境が犬に与えるストレスのこと、場合によっては愛犬が命を落とす可能性もあることを、飼い主さんはきちんと把握しておく必要があります。

 

■ 空調管理や温度差

チェックインカウンターで愛犬を預けた後、愛犬は空調のきいた部屋で待機することになります。しかしその後は荷物と同じ経路を行くことになるので、当然人間が歩くような快適な通路ではありません。機内に運ぶときと降ろすときは外気にさらされることになり、季節によっては急激な温度差が生じることがあります。また、貨物室は客室と同じように空調管理が整えられているものの、外気の影響を受けやすく、温度を一定に保てない場合もあるようです。季節によっては高温・零下になることもあるので、保冷剤や毛布、水分などの備品準備をしっかりしておく必要があります。

■ 飛行中の暗室・雑音によるストレス

貨物室は客室と違って、常に暗い状態が続きます。その上、離陸時や着陸時には機械の操作音が、飛行中も風切り音が、客室よりも大きく響く可能性があります。機内へ運ばれる時も、航空機や車両の音が聞こえるので、音に敏感な犬にとっては大きなストレスがかかる環境です。

■ 貨物室は下見不可

ペットの乗せられる貨物室には搭乗員はいません。そのため、飛行中になにかトラブルがおきても、着陸するまでトラブルを発見することはできませんし、対応することもできません。また、基本的に貨物室の下見はできないので、なにか疑問点があれば、航空会社に事前に問い合わせて確認しておくようにしましょう。

 

過去にあった飛行機での犬の死亡事故

飛行機に乗せたことで犬がケガをしたり死亡したという事故は、現実に起きています。

熱中症で死亡(2006年・2013年)

・国内線を利用したフレンチブルドックが熱中症にかかり、到着後すぐに病院で治療をするも間に合わず、死亡する事件がおきました(2006年)。この事件をきっかけに、多くの航空会社がフレンチブルドックやパグなどの短頭種の搭乗を停止するようになりました。ただし、死亡している犬は短頭種だけではありません。その事件の約1週間後、1歳のシェパードが熱中症にかかって死亡しています。

・1時間のフライト中にチワワが熱中症にかかり、死亡する事故が発生しています(2013年)。預ける直前まで水分をとらせていたにも関わらず、死亡時は体温が47°Cを超えていたそうです。

 

輸送中のケガ(2007年、2008年)

2007年、ケージが老朽化のために破損し、柴犬が血まみれで飼い主さんの元へ返された事件がありました。さらに翌年の2008年にはチワワが足の爪を負傷し、血まみれの状態で引き渡されるという事件もありました。2匹とも命に別状はなかったそうですが、熱中症以外のリスクがあることも理解しておく必要があります。

 

 

ペットの死傷に関する同意書も

飛行機を使って犬を移動させる場合、航空会社から渡される同意書へのサインが必要になります。同意書には「運送時にペットが死傷した場合、航空会社に一切の責任を問わない」という内容が記載されています。もちろん、多くの犬がケガすることなく安全に移動をしていることも事実です。しかし、このような事故に発展する可能性があるということを、飼い主さんはしっかり理解をしておく必要があります。

 

飛行機に乗せてはいけない犬の特徴

飛行機での移動を行う前に、愛犬を飛行機に乗せても大丈夫かどうか確認しましょう。

□ 病気中の犬

持病がある犬を乗せることはやめましょう。飛行機によるストレスで体調を崩す可能性も大きくなりますし、仮にフライト中に容体が悪化しても、処置するどころか気付いてあげることすらできません。

□子犬や老犬 

生後4カ月までの子犬や、7歳以上の老犬を飛行機に乗せる場合には、健康だとしてもやはりかかる負担が大きくなります。そのため、一度かかりつけの獣医さんに相談し、判断しましょう。

□ 環境に対応できない犬(ケージに長時間入っていられない、音に敏感、環境の変化が苦手な犬)

音に敏感な子や、ケージに長時間入っていられない子、環境の変化に敏感な子は、無理せずペットホテルなどを活用するようにしましょう。それでも飛行機に乗らなければならない場合には、事前に獣医さんに相談すれば安定剤を処方してくれる場合もあります。

□ 予防接種を受けていない、受けて間もない

航空会社のチェック項目にも書かれていますが、予防接種を受けていることが前提です。受けていない場合のフライトは認められませんので事前に確認しましょう。

 

※海外渡航の場合

■ 渡航先の受入条件を調べる

ペット受け入れに関する条件は、各国により様々あるため、各国の大使館に確認をしておきましょう。

‘外務省駐日外国公館リスト’

国によって必要なワクチンやマイクロチップ、寄生虫の駆除、健康診断書の提出の有無など細やかな条件手続きが異なります。これらを抜かりなくしておかないと、1ヶ月以上空港で留置されたり、帰国できなくなる場合があります。国によっては出国までの準備に3ヶ月程度かかる場合もあるので、半年くらい前には準備を始めておくべきです。

■ 輸出検疫を受ける

日本からペットを持ちだすには、出国当日に農林水産省動物検疫所にて輸出検疫を受け、輸出検疫証明書の交付を受け取る必要があります。事前に、該当する出発空港の検疫所に連絡しましょう。国によっては手続きに数週間かかる場合があるため、この事前準備は、出発する半年前には始めておくことをお勧めします。

‘農林水産省動物検疫所検索ページ’

■ 帰国時に必要なもの

日本に帰国する際に必要なものとして、ペットの個体識別番号が記録されている埋め込み型のマイクロチップを装着することが義務化されたため、出国前に必ず動物病院で装着しましょう。

 

 

出かける前の「備品の準備」

 

●ケージやクレートに慣れる練習

ケージやクレートに慣れさせておきましょう。給水器(ノズル)からお水を飲む練習もしておきましょう。

 

●備品の準備

愛犬を飛行機に乗せる場合、飼い主さんが入念に行わなければならないのが備品の準備です。貨物室には当然、愛犬を見守ってくれる管理人さんはいません。機内の環境を調べた上で、飼い主さんが最善の準備をする必要があります。

フライトの季節や温度に合わせて、ケージ内に、

給水器(航空会社で用意がない場合)

気温対策のために保冷剤、マットや毛布

を入れておきましょう。※ただし、ストレスで毛布を噛む癖がある犬には、あまりおすすめできません。

普段使っている毛布やおもちゃを持ち込んで、少しでも安心できる環境を用意

してあげましょう。

 

飛行機に乗せることは、犬にとって大きな負担をかけることになります。飛行機の環境にその子が耐えられるかどうか、よくよく検討してから決めましょう。また、もし飛行機に乗せることになったら、一度かかりつけの獣医さんに相談してから手配を進めることをおすすめします。

 

 

愛犬が飛行機に乗るまでの流れ

犬の場合、人間のように快適な客室でフライトを楽しむという訳にはいきません。手続きの方法から、機内に乗るまでの手順を確認しておきましょう。

手続き方法

航空会社によっては、インターネットで事前に手続きができるところもあります。オンライン予約以外でも搭乗前に空港で手続きできる場合があるので、事前に確認しておきましょう。費用や規定などは各航空会社によって異なるので、ホームページから確認しておきましょう。

 

ANA ペット連れ(国内線)

JAL  ペット連れ(国内線)

スカイマークペットのお預かり (国内線)

スターフライヤー国内線(国内唯一のペット同伴搭乗サービス「FLY WITH PET!」)

 

搭乗可能な動物の種類・犬種・健康状態が細かく記載されています。日中の暑い時間帯のフライトは避けるような呼びかけや、航空会社によってはフレンチブルドッグ・ブルドックの搭乗不可、もしくは季節により搭乗不可などルールが異なるので注意が必要です。航空会社によって、荷物の重量制限にペットが含まれることもあります。事前に確認してみてくださいね。

愛犬を預ける

チェックインのタイミングで、愛犬とはしばしのお別れ。カウンターで手荷物と一緒に愛犬を預けます。搭乗までは空調のある部屋やチェックインカウンターで待機し、その後は車両などで貨物室に運ばれます。貨物室は荷物を入れる場所になりますが、ペット預かりスペースと荷物スペースは分けられている場合がほとんどなので、移動中の揺れで荷物が落ちてくるといった心配はありません。

愛犬を受け取る

航空機が到着後は、係員が機内の貨物室より愛犬を運び出し、直接飼い主さんの手元に渡してくれます。

 

各社国内線のペットサービスとは?

●ANA

事前予約の受付期間は、搭乗日前日まで。規定に適合したペットケージに入れたペットに限り、「受託手荷物」として預けることができます。ペットのチェックインは、搭乗便出発時刻の30分前までに手荷物受託カウンター(ペットお預かりカウンター)へ。ケージは無料でレンタル(LLサイズは予約が必須)できますが数に限りがあるため、事前予約が確実。国内線は、一部の路線を除き、定額の6,500円。ケージ込みで32kg以上の犬は、別途「貨物」での申し込みに。夏季期間(6月1日~9月30日)は、ケージに熱中症予防のための保冷剤・給水器を取り付けるサービスもあります。

※他犬種に比べ、高温に弱い短頭犬種(ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、シーズー、ボストン・テリア、ブル・テリア、キングチャールズ・スパニエル、チベタン・スパニエル、ブリュッセル・グリフォン、チャウチャウ、パグ、チン、ペキニーズ)は毎年5月1日~10月31日の夏季期間はお預かりを中止。

ANA ペット連れ(国内線)はこちら

 

●JAL

受付まではほぼANAと同じですが、国内線は3,000円~6,000円で路線によって金額が違います。ペットのチェックインは、出発予定時刻の40分前まで。ケージおよびクレート込みで20kgを超える場合は超過料金がかかり、ペットとクレートの合計重量が32kg以上の場合は別途「貨物扱い」での申し込みに。持参した給水器をケージやクレートに装着することができ、出発空港で事前に申し出をすれば、長い時間の乗り継ぎの場合に限り、エサやりなども可能です。

※通年で、短頭犬種(フレンチ・ブルドッグ、ブルドッグ)は不可。

JAL ペット連れ(国内線)はこちら

 

 

●スカイマーク

スカイマークは、国内全路線一律5,000円で、ケージ込32kgまでOK(ケージは無料レンタルもあり)。ペットのサイズは、51cm×69cm×48cmのケージに全身が入る大きさまでとし、このサイズに入らない大型犬などはお預かりできません。ペットのチェックインは、搭乗便出発時刻の30分前まで。

※通年で、パグ、シーズ-、ボストン・テリア、ペキニーズ、チン、ボクサー、ブルドッグ、チベタン・スパニエルなどの短吻種犬の預かりは不可。

スカイマーク ペットのお預かりはこちら

 

●スターフライヤー

スターフライヤー国内線国内唯一のペット同伴搭乗サービス「FLY WITH PET!」

持込可能動物:指定サイズのケージ(50㎝x40㎝x40㎝程度)に入る小型の犬及び猫

対象便:<羽田空港発> SFJ77便 SFJ89便 <北九州空港発> SFJ78便 SFJ90便の1日計4便

料金:料金 50,000円/匹

条件:持ち込み可能なペットは、飼い慣らされ、鳴き声など他のお客様のご迷惑にならないようトレーニングされ、手入れが行き届いていること(におい対策等を施していること)、混合ワクチン(3種以上)および犬の場合は狂犬病予防ワクチンを摂取したことが接種証明等で確認できること等。

*詳細はこちら。

 

飛行機に乗った後は…

飛行機を利用した後は、目に見える症状が出ていなくても、帰宅後は十分に休養させ、犬を注意深く観察しましょう。少しでもいつもと違う変化があれば、すぐに獣医師の診察を受けることをおすすめします。人間にとってもストレスが高い空の旅。あなたの犬が本当に耐えられるかどうか…よく検討してから、搭乗準備を始めましょう。

 

 

「熱中症」に関する獣医師監修記事

■ 対策:熱中症は命を落とす危険も!犬の熱中症対策や予防法とは?

■ 初期症状:人間よりも暑さに弱い犬。熱中症になると命を落とす危険も!その症状とは?

■ スポーツドリンク:犬の熱中症対策にスポーツドリンクは効果があるの?

■ 応急処置:犬が熱中症になったときの応急処置の方法は?まずは、どこを冷やせばいい?

■ 車対策:犬と車でお出かけする場合の、車内や車外での熱中症対策は?

■夏の散歩:夏は犬の散歩に要注意!熱中症にならないための対策とは?

■ 要注意な犬種:犬の熱中症は命の危険も!初期症状を見逃さないで!

■ 適温:暑すぎ?寒すぎ?犬のサインから読み解く最適な室温

■ 家づくり:愛犬と暮らす家づくり~夏の暑さ対策編

■ 調査結果:愛犬・愛猫の熱中症対策どうしてますか?

■ 危険温度:危険温度!気温が何度以上になると犬は熱中症になる?

 

 

●「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典『うちの子おうちの医療事典』をご利用ください。

 

うちの子おうちの医療事典

 

☞例えば、下記のような切り口から、さまざまな病気やケガを知ることができます。  健康な毎日を過ごすため、知識を得ておきましょう。

【治療】■ 再発しやすい ■ 長期の治療が必要 ■治療期間が短い ■ 緊急治療が必要 ■ 入院が必要になることが多い  ■手術での治療が多い ■専門の病院へ紹介されることがある ■生涯つきあっていく可能性あり 

【症状】■ 初期は無症状が多い ■ 病気の進行が早い

【対象】■ 子犬に多い ■ 高齢犬に多い ■男の子に多い   ■女の子に多い ■ 大型犬に多い ■小型犬に多い 

【季節性】■春・秋にかかりやすい ■夏にかかりやすい

【発生頻度】■ かかりやすい病気 ■めずらしい病気

【うつる】 ■ 他の犬にうつる ■ 人にうつる ■猫にうつる

【命への影響】 ■ 命にかかわるリスクが高い

【費用】 ■ 生涯かかる治療費が高額 ■手術費用が高額

【予防】 ■ 予防できる ■ワクチンがある

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ワンペディア編集部

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