人間であれ動物であれ、歳を取って次第に衰えていくことは、避けられない運命です。犬も、年齢を重ねるにつれ、それまでできていたことができなくなります。
加齢によって起こりやすいもののひとつに、排泄の問題があります。今回は、代表的なトイレ・トラブルを見てみましょう。
老化のトイレトラブルって?
7歳を超えてトラブルが増えたら要注意
一般的に、犬のトイレの失敗・原因としては、
- しつけ不足
- 病気/怪我
- トイレに不満がある
- 服従行動の一環
- 強い恐怖心や分離不安、過剰な興奮など
- マーキング
- 老化
などがあります。今回はこの中で、老化によるトイレの失敗について考えます。
犬が老齢になると、トイレを失敗することがよくあります。これは、人間でも同じですね。目安としては、犬の年齢が7歳を超えており、急にトイレの失敗の回数が増えてきた、という場合は、老化によるトイレの失敗の可能性が高いです。
また、いつもと便の様子が変わったり、頻度が増えたり減ったり、あるいはトイレが間に合わなくて失敗してしまったり、そのことを気にしてさらに次の失敗をしてしまったりすることもあります。
具体的にどんな変化があるの?
ここで、老化によるトイレの変化として、押さえておきたいポイントを見ておきましょう。
- トイレの時間まで我慢ができなくなる
- トイレの回数が増える
- トイレのルールを間違える
- トイレ以外で、無意識に排便や排尿を行う
- 興奮したり吠えたりすると、おしっこを漏らすことがある
- 排便姿勢をとってから、排便まで時間がかかる
- おしっこに時間がかかる
- 便の状態が硬かったり柔かったり、下痢っぽかったりと不安定になる
以前と比べ、上記のような状況が増えているようでしたら、これらは老化によるものの可能性があります。主な原因は泌尿器官の筋力の低下ですが、視力が低下することでトイレの位置がわからなくなっていることもあります。また、老化による記憶力の低下や、痴呆なども考えられます。
さらに、排泄の変化には、腎臓や膀胱、前立腺の病気や糖尿病の可能性が潜んでいることもあります。まずは獣医師に相談するなどして、これらのトイレの失敗の原因が何であるのかを見極めましょう。トイレの失敗の原因が、腎臓病や糖尿病など特定の疾患によるものであれば、その治療を行います。
トイレの失敗、けっして叱ってはいけません
トイレの失敗が老化によるものであることが判明したら、まず飼い主さんが心がけることは、「けっして叱らない」ことです。犬に悪意があるわけではありませんので、叱ることで却って萎縮してしまい、ますます失敗してしまうという悪循環に陥ります。
トイレの失敗の頻度が増えてきたら、トイレの場所を増やすことで排泄の機会を増やしてあげます。毎食後、就寝前など、犬のトイレのパターンが決まっている場合には、気配を察してトイレの場所まで連れて行くなどのサポートをします。睡眠中の粗相が見られるようでしたら、寝床にペットシーツを敷くなどし、対応しましょう。
運動能力が衰えていないのにトイレを失敗してしまう場合には、犬がトイレの場所をわからなくなっている可能性もあります。犬は嗅覚が発達していますので、トイレのシートにあらかじめ犬の尿のにおいを付けておくことで、認識できるようになるケースもあります。
老化により動きが緩慢になっている場合には、排泄後にトイレから動けず、体を汚してしまうことがあります。トイレ後は、犬をなるべく早くその場から離し、排泄物の処理を速やかに行うようにしてください。
老化による腎臓機能の衰えからおしっこの回数や量が増えている場合には、飲み水を減らすことは厳禁です。むしろ不足なく飲めるよう、飲み水はふんだんに用意してあげましょう。便の状態が不安定な場合には、高齢犬用、シニア犬用のフードを与えることで、一定の硬さを保てるよう食事を工夫します。
犬用のおむつも検討しましょう
トイレの失敗で部屋を汚してしまうことが増えてきたら、犬用のおむつを用意します。おむつはこまめにチェックし、汚れたらすぐに交換します。毛が長い犬の場合は、お尻のまわりの毛をあらかじめ短くカットしておくと、清潔に保てます。
そのほか、できれば部屋の床やマットは、掃除や洗濯をしやすいものに変えると良いでしょう。飼い主さんの服装は、介護で汚れても良いものを選びましょう。
トイレの失敗は、あくまでも自然に受け入れましょう
老化によるトイレの失敗は、若い頃にかかった病気やケガ、しつけの不足とは異なり、加齢によって引き起こされるものです。ですので、根本的に「治す」、あるいはしつけを「し直す」ことは困難ですし、それらは犬にとっても大きな負担となります。
トイレの失敗にはあくまでも、自然の老化だからそういうものなんだ、と受け入れる姿勢が重要です。飼い主さんの落胆や失望を、犬はとても敏感に感じ取り、ますます落ち込んでしまいます。もし粗相をしてしまったとしてもおおらかに、「(ちょっと失敗しちゃったけど、でも)大丈夫、とってもいい子だよ」と声を掛けてあげてください。
元気だった愛犬がだんだんと衰え、弱っていく姿を見るのは辛いものです。ですが、老犬になっても最期まで看取り、幸せな一生を終えさせてあげることも飼い主さんの大きな責任のひとつです。愛犬に最期、「ああ、とっても幸せな一生だったな」と思ってもらえるよう、最大限のケアをしてあげたいものですね。
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