小さな子どもや赤ちゃんと仲良くしている犬の姿というのは、なんとも微笑ましいですよね。SNSでは、赤ちゃんと愛犬の素敵なエピソードがいくつも投稿され、大人気なコンテンツとなっています。しかし、赤ちゃんとワンコってすぐに仲良くなれるものなのでしょうか?あんなに仲良しになるまでには、特にお母さんにとっては、なかなか大変な苦労があったはず・・・。ここでは、飼い犬と赤ちゃんの間で悩むお母さんたちのエピソードをご紹介します。
愛犬が吠えていた原因
里帰り出産だったため、2ヶ月ほど家を空け、生まれた娘を連れて家に帰りました。愛犬との久々の再会を楽しみに、喜びいっぱいでドアを開けると、愛犬もいつも以上に大喜び。チラッと娘を気にするものの特に興味もない様子でした。ところがそれから1週間ほど経ち、いつものように娘に授乳していると、いきなり私に向かって吠えはじめたのです。今まで家族に向かって吠えたことは一度もない子だったのに、大きな声で吠え続けます。それからというもの、私に向かってよく吠えるようになってまいました。少し離れている間に、私のことが嫌いになってしまったのかと、ものすごく気分が落ち込みました。もともと、赤ちゃんのお世話で体力的にきつかった時期だったので、愛犬の豹変振りは私にとって大打撃だったのです。
それからしばらくその状態が続き、本当に辛くなって、我慢できなくなりそうになったとき、夫がポツリとこうこぼしました。「やっぱり、嫉妬じゃないかな。俺もそうだったけど、弟ができた時、はじめは正直嬉しくなかったもん。」
ハッとしました。冷静に振り返ってみると、初めての育児で赤ちゃんにつきっきりになってしまっていて、愛犬のことをあまりかまってあげていなかったのです。
かかりつけの獣医さんに聞いてみても、「犬だって嫉妬するんですよ」と言われました。「犬にとって赤ちゃんは、何の挨拶もなしに急に家に入ってきた見知らぬ生き物でしょ?気に食わなくて当たり前。しかも、飼い主さんが育児で大変な時はどうしても自分のことを二の次にされちゃうから、何が起こっているのか混乱してるんですよ。赤ちゃんが大きくなるにつれて解消されていくものだから、今は無理に仲良くさせようとせず、できるだけお母さんの愛情を犬に伝えられるように、抱きしめてあげたり、遊んであげてたりしてみてください。大丈夫、そんなに心配いらないから。」と言われました。
それからしばらくは同じ状態が続きましたが、できる限り愛犬に寂しい思いをさせないよう工夫するうちに、だんだん愛犬の様子が落ち着いていきました。少しずつ状況を理解したのか、最近は娘のそばで寝ることもあります。二人の絆も少しずつ深まってくれたらいいなと思っています。
宇宙人がやってきた
出産を無事に終え、赤ちゃんと一緒におうちに帰ってきた日のこと。久々の再会にも関わらず、赤ちゃんを抱いているせいか、愛犬は私にも近寄らず、ちょっと警戒したように遠くから眺めていました。赤ちゃんをベビーベッドに寝かせると、中を覗き込み赤ちゃんの顔をチラッ。まるで宇宙人でも見たかのような愛犬の表情が面白くて、何枚も写真を撮ったのを覚えています。
しかし、そのあと見るからにしょんぼりしている愛犬の様子を見ていると、心が痛くなりました。愛犬が寂しい思いをしないよう積極的に声をかけたり、子どもが寝ている時などに遊んだりしていましたが、あまりめぼしい効果はなく、ずーっと落ち込んでいるように見えました。一人ぼっちにしないように気をつけていても、どうしても主人と私の両方が赤ちゃんにつきっきりになることもあります。そんなとき、ふと気がつくと愛犬は置物のようにたたずんで、少し離れたところから、じーっとこちらを見ていることもありました。
そうして、2~3ヶ月くらいたったある日のこと。私が用事をしている真っ最中に赤ちゃんが泣きはじめました。私はそのときどうしても手が離せず、しばらく赤ちゃんが泣いたままになっていたのです。
するとなんと!愛犬が心配そうにベビーベッドのそばに寄っていくではありませんか!そして「ほっといて大丈夫なの?」とばかりにこちらを伺うのです。
うちの場合は、すぐに仲良しというわけにはいきませんでしたが、成長とともに心がほどけていったのか、子どもが5歳になった今は大の仲良しです。二人が一緒にお昼寝をしている写真は私の宝物になっています。
別々の部屋にすることで解決
うちの愛犬は娘が生まれる前、ひとりでも平気な子でした。お留守番も平気だし、かまわれるのもそんなに好きではない性格だったので、きっと娘が生まれても、変わらずマイペースなんだろうな、くらいにしか思っていなかったのです。
しかし、実際は大違いでした。娘と一緒にお家で過ごすようになると、狭い物影から出てこなくなり、ごはんも食べず、トイレも粗相するように…。心の準備がなかった分、それはもう主人とあたふたして、インターネットや本などで調べてみると、愛犬の行動がまさに犬のストレス行動と一致します。原因は、娘が生まれたことによる生活環境の変化だと分かっていても、何をしてあげれば愛犬の負担が減るのか、全くわかりませんでした。
困り果てた私はかかりつけの獣医さんに相談することにしました。獣医さんからは、「もし可能なら、赤ちゃんの気配を感じない、わんちゃん専用の部屋をつくってあげてください。ごはんもトイレもそこに用意してあげて、赤ちゃんが寝ている時などに飼い主さんとわんちゃんだけの時間をたっぷりとってあげてください」というアドバイスをもらいました。
この時気がついたのですが、赤ちゃん用のベッドを置いた場所は、もともと愛犬のお気に入りの座布団があったところでした。何気なく移動させたのですが、きっとあの子にとっては、その場所が居心地よくて、特別な場所だったのだと思います。それを無神経に取り上げるようなことをしてしまっていたことに気付き、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
愛犬専用のお部屋を作ってあげてからは、ごはんもしっかり食べてくれるようになり、徐々にいつもの様子に戻っていきました。今のところはとっても仲良し、というわけではないけれど、赤ちゃんとの距離も少しずつ縮まっているように思います。これからもあまり焦らず、暖かく見守ろうと思っています。
うまくいったケース
友だち夫婦の体験談を聞いていたので、私は妊娠が分かった時から毎日赤ちゃんのことやこれからのことを愛犬に話していました。言葉が通じるかどうかは問題ではなく、「どんな時でもパパとママはあなたのことが大切なんだよ」ということを心から伝えることが大切だと思っていたからです。だんだん大きくなるお腹を指さしながら、「ここにはあなたの弟がいるよ」「生まれてきたら一緒にねんねしようね」「だいじだいじ」と話していると、お腹のあたりをペロペロしてくれたり、寝ていても不思議とお腹の上には乗らなくなりました。
臨月になり、里帰り出産のために準備をはじめると、愛犬もソワソワしはじめました。主人に預けて自分だけ帰るつもりでしたが、連れていくほうがよい気がして一緒に帰りました。陣痛が来て病院に向かう際にも「今からママ頑張って、弟を生んでくるね!」と話しかけてから行きました。その後無事出産。退院後ドキドキしながら実家に帰るとすでにドアの前で待っていました。抱える赤ちゃんを一番に見せて「弟だよー、よろしくね!」と声をかけました。するとクンクンと匂いをかいでシッポをフリフリ。ベビーベッドに寝かせたあとも、ずっと中を気にしてク~ンク~ンと愛おしそうに鳴いていました。その様子はまるでお母さん。息子が3歳になった今ではよき遊び相手になってくれています。
人間にも赤ちゃん返りといった行動があるように、新しくおうちで赤ちゃんが生まれたときに、愛犬に変化があることは自然なことです。しかし、その変化によって深刻に悩んでいる人たちがたくさんいることも事実。そんな時は一人で抱えず、かかりつけの獣医さんやドッグトレーナーさんに相談してみるといいでしょう。
★ 愛犬の「ストレス」に関連するワンペディア獣医師監修記事もあわせてご覧ください。
★「うちの子」の長生きのために、年齢や季節、犬種など、かかりやすい病気や、症状や病名で調べることができる『うちの子おうちの医療事典 』をご利用ください。
☞例えば、愛犬の「行動」から、
■ 足をあげる
■ 歩かない
■ 頭を振っている
■ ふらつく
■ ぐるぐる回る
■ 遠吠えをする
■ 性格が変わる