プードルマルチーズチワワなど、トリミングが必要な犬種をお飼いの方は、定期的にトリミングサロンを利用されていることと思います。しかし昨今、トリミング代もばかになりません。出費をもう少し節約できないかなとお考えでしたら、自力でのトリミングに挑戦してみてはいかがでしょうか。

もちろん、プロのように完璧なトリミングができるはずもありませんが、伸び気味、からまり気味になったコート(被毛)を整える程度でしたら何とかなってしまうものです。

今回はお家でできる毛のカット、すなわちトリミングについてご紹介します。

カットを始めるその前に

トリミングはコートをカットする作業だとお考えの方は多いでしょうが、実はトリミングはプラッキング(死毛抜き)、クリッピング(バリカンなどによる毛刈り)、カッティング(ハサミなどによるコートカット)による被毛のお手入れの総称です。

さらに、トリミングはグルーミング(コートのお手入れ全般)の一部として位置付けられています。ですから、セルフトリミングをキレイに仕上げたいなら、まずシャンプーやブラッシング、耳掃除、肛門腺絞りなどを行い、コートの調子を整えてから作業に取りかかりましょう。とくにプラッキングは重要です。ダブルコートの犬種では、アンダーコートの死毛を取り除いてからでないと作業がしづらいですし、サラサラした美しいコートに仕上がりません。

何を買えば良いのか?

「弘法筆を選ばず」などと言いますが、素人の私たちにとって道具は大変重要です。これから何年も使い続けていくものですから、質の高い道具を揃えましょう。

カットハサミ

セルフトリミングをするなら必ず揃えておきたい、細長いハサミです。ご自宅にあるハサミを使うとたいてい失敗します。なぜかというと、動かさない”静刃(受け刃)”と動かす”動刃(切り刃)”の使い分けがうまくできないからです。

コームなどでコートを押さえて切る長さを決め、ハサミの静刃を当てて固定し、親指で動刃側だけを動かしてカットすると、虎刈りにならずに仕上がります。人間の美容師さんや理容師さんも、ペットのカットハサミと同様に、静刃側に小指をかけるフックがついたハサミを使っていますね。

梳きバサミ

長毛種やコートが厚い犬種をセルフトリミングするために役立つのが梳き(すき)バサミです。コートの長さを変えずに余分なコートを梳けますから、バランスを崩さずスッキリと仕上がりますし、夏の暑さ対策にも重宝します。使い方のコツは、同じ場所を何度も梳かないこと。梳きムラができると、耕した後の畑のような凸凹の仕上がりになってしまいます。

ミニハサミ

顔の周りや手足の先、肛門の周りなど細かな部分をカットし、形を整えるためのハサミです。先が丸くなっているものを選びましょう。

バリカン

身体に対して滑らせるように使うことで、滑らかな仕上がりが手早く実現できます。ただし、力を入れて使うと皮膚を傷付けてしまうこともありますから、皮膚から一定の間隔を保ったまま空中を動かす感覚で使いましょう。歯先を身体のほうに向けてはいけません。

ミニ(ペンシル)バリカン

足の裏や耳の周りなど、細かい部分を整える際に役立つバリカンです。トリマーなどとも呼ばれます。

セルフカット入門は足裏から!

いきなり全身をトリミングするのは不安があるという方には、足裏のトリミングをお勧めします。犬の足には肉球があり、滑り止めやクッションに役目を担っていますが、この肉球の間の毛が伸びると足が滑りやすく、また湿気などによる皮膚病を起こしやすくなります。

トリミングテーブルがあれば理想的ですが、ない場合は机の上などに滑り止めを敷いて犬を乗せ、犬の身体を脇で抱え込むようにして脚先を取り上げると犬は落ち着きます。犬にとって脚先は急所ですから、いきなりつかもうとせず、ヒジやスネあたりを持ち上げてから滑らせるように脚先を固定しましょう。抱っこできる犬なら、ヒザの上に乗せるなどして抱くように作業してもいいでしょう。

犬の指を1本ずつ広げながらゆっくり毛をカットしていきます。急ぐと肉球を傷付けますからていねいに。肛門周辺の毛をカットする際にも犬の身体を傷付けないように注意を払いましょう。足裏のカットが終ったら、地面に立つ足の指先全体が丸く見えるように、飛びだした毛を整えていきます。

胴体回りはハサミ→バリカン→ハサミの順で

胴体回りのトリミングは、少々バランスが崩れても目立ちませんし、広い面をカットするので顔周りよりも比較的簡単です。ただし、いきなりバリカンで刈りこもうとすると、毛が絡まって失敗することも多くなります。

まず、コームなどでコートを整えながら、希望するコートの長さになるまでハサミで切っていきます。その後、バリカンで表面を滑らかになぞるようにすると、凸凹なく仕上がります。刈り残した部分を再びハサミで整え、切った毛をブラッシングしましょう。

バリカンは身体の前方から後方に向かってかけるのがスムーズですが、直毛種の場合は毛の流れに逆らう方向で、縮毛種の場合は毛の流れに沿う方向で歯先を一方向に動かすほうがいい場合もあります。

なお、バリカンの動作音を怖がる犬は珍しくありません。無理に作業をするとトリミングが嫌いになってしまいますから、最初はバリカンを動かさずに犬の脇に置いて慣れてもらいましょう。最初は背中の回りだけ、など気になる部分だけ短時間でトリミングし、回を重ねるごとに時間を延ばしていくと早期に慣れてくれます。おやつを与えながら作業する方法も効果的です。

顔周りのカットは、安全性を徹底重視しましょう

顔周りのカットを嫌がる犬は多いですし、嫌がって動いたときに目や鼻を傷付けるなどの事故も発生しがちです。うるさい音がするバリカンは使わず、ハサミで慎重に形を整えていきましょう。

歯先は絶対に犬のほうに向けず、ハサミ全体を寝かせながらカットしていきます。顔にシワがある犬はしわを伸ばしながら、垂れ耳の犬は耳全体を手でホールドしながら毛をカットします。短く切りすぎると失敗がとても目立ちますから、長めにまとめるのがいいでしょう。

 

 

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