犬のトイレ

膀胱は、腎臓で作られた尿を溜め、ある程度の量になったらまとめて体の外へ出すはたらきをもつ臓器です。細菌の感染や尿結石、ストレスなどが原因で膀胱に炎症が起きると、頻尿血尿などの症状がみられるようになり、時には痛みを伴うこともあります。わんちゃんのおしっこに異変を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。

ここでは、わんちゃんの膀胱炎の中でも特に多い「細菌性膀胱炎」の薬について解説します。

 

 

膀胱炎の「原因」「症状」「診断」

膀胱炎の「薬」の解説の前に、「原因」「症状」「診断」と、診断に必要な「採尿」の仕方について、解説します。

 

◆ 膀胱炎の「原因」

犬では、細菌感染による膀胱炎(細菌性膀胱炎)が最も多いとされています。これは、便の中や陰部の周りの皮膚に存在する細菌が、尿道に入って膀胱内に侵入してしまうことで起こります。

この他にも、尿結石やストレス、膀胱の腫瘍などが原因となることもあります。

 

◆ 膀胱炎の「症状」

膀胱炎を起こすと、何度もトイレに行く(頻尿)、排尿の時に痛がる(排尿痛)、尿が出にくい、尿漏れなどの症状がみられます。また、尿が濁ったり、赤くなったり(血尿)、においがきつくなったりするなど、尿自体にも異変がみられます。

 

◆ 膀胱炎の「診断」

症状や飼育環境を確認し、尿検査を行います。

尿検査では、細菌や尿結石がないかを調べたり、尿のpHなどを測定したりします。細菌がみられた場合には、さらに詳しい検査で細菌の種類を特定し、効果のある抗生物質を選択する必要があります。

この他に、レントゲンやエコーなどの画像検査や、再発を繰り返すときには全身の状態を調べるために血液検査を行う場合もあります。

 

素朴な疑問 Q&A 動物病院で「おしっこを採ってきてください」と言われたら…

Q.「おしっこ」はどうやって採取するの?

A.  最近では採尿専用のキットを使用している病院も多いですが、それが手元にない場合には、わんちゃんの排尿時に清潔な

トレイなどを使って尿を採り、スポイトなどに入れて持参

するとよいでしょう。

室内ではペットシートを裏返しにしておく

と尿が吸収されないので、採尿がしやすくなります。

採尿ができたら、なるべく早めに動物病院で検査

してもらうことが大切です。

 

自宅での採尿が難しい場合や、持参した尿に異常がみられた場合、さらに詳しく尿を調べたい場合には、

動物病院内でお腹の皮膚に針を刺して、膀胱から直接尿を採ります。

膀胱に針を刺すことは一見わんちゃんにとって負担がかかるように思えますが、短時間で採尿ができ、新鮮な尿を検査することで正確な検査結果を得ることができるのが大きなメリットです。

 

 

参考動画  <尿検査のおしっこの採り方> 出典:宮田動物病院

 

 

このようにして採られた尿で「薬剤感受性検査」をすることにより、膀胱炎を引き起こしている細菌にどの種類の抗生物質が効くのかを調べることができます。

 

 

膀胱炎でよく処方される「薬」

細菌性膀胱炎と診断されたら、抗生物質の飲み薬によって治療します。薬剤感受性試験の結果をもとに処方された抗生物質は、通常1〜2週間程度飲ませ続け、その後再び尿検査を受けることが大切です。

 

◆よく処方される抗生物質

 

●アモキシシリン(製品名:アモキクリア(共立製薬))

 

アモキクリア

 

「ペニシリン系」呼ばれるタイプの抗生物質です。

青色の円形をした錠剤で、真ん中がくぼんでいるため分割もしやすい形をしています。

かまぼこ風味で嗜好性が高く、1日2回投与します。

 

【使用上の注意】

一過性の嘔吐や軟便、下痢、食欲不振などがみられることがあります。

 

 

●セファレキシン(製品名:リレキシペットA(ビルバックジャパン))

 

「セフェム系」と呼ばれるタイプの抗生物質です。

幅広い体重の犬に与えやすいよう、3種類の大きさがあり、1日2回投与します。

茶色の楕円形をした錠剤で、チキンフレーバーがついているため好んで食べてくれる子も多いお薬です。

 

【使用上の注意】

一過性の嘔吐や軟便、下痢、食欲不振などがみられることがあります。

 

 

●エンロフロキサシン(製品名:バイトリル(エランコジャパン))

 

「ニューキノロン系」と呼ばれるタイプの抗生物質です。

円形の錠剤で、1日1回の投与で効果を発揮します。

同じ形状のものにビーフ風味を加えたフレーバー錠もあります。

 

【使用上の注意】

12カ月齢未満の成長期の犬には使用できません。

テオフィリンや一部の消炎鎮痛剤などで、飲み合わせに注意が必要な場合があります。

嘔吐、食欲不振、流涎(よだれ)がみられる場合があります。

 

 

最後に

この他にも、犬の細菌性膀胱炎に処方される薬は多岐にわたりますが、原因となっている細菌に対して「効果のある」抗生物質を、「指示された期間」しっかり飲ませてあげることが重要です。

同時に尿結石がみられる場合には、食事療法が必要となるケースもあります。

 

 

症状が治まり、尿検査で細菌がいなくなっていることが確認できたら治療終了です。

薬が効きにくい細菌(薬剤耐性菌)に感染していたり、膀胱炎の他になんらかの病気が隠れている場合などには、追加の検査や長期間の治療が必要になることもあります。

 

 

<うちの子おうちの医療事典>

膀胱炎と似た症状が出る病気を、獣医師監修のオンライン医療事典で調べてみましょう。

尿の色がおかしい

尿の回数や量が多い

トイレを失敗する

 

 

 

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フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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