運動や睡眠といった、何気ない日常の活動を確認することも、実は命に関わるような食事や排泄の状態を把握することと同じように重要です。睡眠時間が長くなる、運動を嫌がるなど、1日のちょっとした変化に気づくことが、病気を早期発見するポイントとなります。ここでは、1日の活動の変化が教えてくれる、病気のサインについて解説します。
犬はなぜそんなに睡眠時間が長いの?
成犬の睡眠時間は人よりもずっと長く、1日12~15時間とされており、子犬やシニア犬はさらに長い傾向にあります。しかし、人のように熟睡している時間は短く、全体の8割は浅い眠りとされています。
犬がこのように長い時間眠るようになったのは、もともと夜行性のハンターだったためと考えられます。かつては夜に活動するために日中は寝るという生活スタイルでした。しかし、人と暮らすようになってから人の生活パターンに合わせたため、夜も眠るようになりました。一方で、日中に眠る習慣も残ったため、夜も昼も眠るようになったとされています。
長い睡眠時間は注意が必要
睡眠時間が15時間よりもずっと長くなるということは、病気や痛みで休みたいのかもしれません。子犬だから、老犬だから、と見過ごされがちですが、食事以外は動かず、元気が消失しているときは獣医師に相談しましょう。このような場合、循環器や呼吸器に異常があったり、甲状腺機能低下症など内分泌の病気があったりすると考えられます。子犬では低血糖、老犬では白内障だったというケースもあります。
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睡眠時間が減ったときも気をつけましょう
反対に夜の睡眠時間が減る場合は、関節炎などで痛みがあるのかもしれません。その場合、日中の活動量も減っている可能性もありますので、足を引きずったりしていないか注意して観察しましょう。このような状態が続くようであれば病院を受診するようにしてください。
日常の活動時間や活動量を知っておくことが大切
寝る時間が長くなったということは、反対に活発に活動している時間が少なくなったということでもあります。食事の時間、散歩の時間、遊んでいる時間が毎日どのくらいあるのか、減ってきてはいないかをよく確認することが大切です。
犬の活動時間の特徴とは?
犬は飼い主の生活スタイルに合わせて活動するため、行動パターンは日々異なることがありますが、特別な事情がない限り、犬の1日の合計活動量は基本的に変わりありません。活動時間とは、ご飯の時間や散歩の時間、遊びの時間であり、特に犬は散歩や遊びの時間と量を人が意識的に調整することができます。
以下の図①は、犬の1日の活動時間を記録したものです。夜と昼間は寝ていて、散歩をする午前中と15時から19時ごろにかけて活発に活動しています。4歳と12歳の犬とを比べると、2匹の活動パターンは似ていても、高齢犬は全体の活動量がかなり少ないことがわかります。ただし、年齢差だけでなく、個体差や、多頭飼いによって活動時間が増えるなど、飼育環境による差もあるため、愛犬の日々の状態を継続して把握していくことが重要となります。
図①
※データ出典:日本動物高度医療センター JARMeC
活動時間の減少は病気のサイン?
活動時間が減る(多くの場合、睡眠時間も同時に減少します)原因はいろいろありますが、発熱、下痢、貧血などを起こしていたり、痛みがあったりする可能性が考えられます。活発さがなくなったと感じたときは、これらの症状がないか確かめ、動物病院に連れて行きましょう。
毎日の様子の変化で気づける病気のサイン
活動量の変化に気づくことも大切ですが、活動の質の変化、つまり様子の変化に気づくことも、病気のサインを見逃さないカギとなります。犬の様子がいつもと違うと思ったら、注意が必要です。特にコーギーやダックスフントなど胴の長い犬種や大型犬は背骨や股関節、足関節に異常が出ることがありますので、歩き方を日々よく観察しましょう。
【観察ポイント】
□ 歩くときにふらついたり、びっこを引いたりする
□ やたらと体を掻く、舐める
□ しょっちゅう頭を振る
□ 動きたがらない、動きがぎこちない
□ 鳴き方がいつもと違う
□ 呼んでも無反応
実は病気だった事例
<例1:最近急に散歩にいきたがらなくなった>
あまり散歩に行きたがらなくなり、出てもすぐ疲れて帰りたがるようになったと感じたら、それは単に外が寒かったり暑かったりすることだけが原因ではないかもしれません。呼吸器や循環器の異常や甲状腺の疾患かもしれません。また、関節が痛いということも考えられます。ほかに症状がないかよく確認し、一度獣医師に相談してみましょう。
<例2:暗い所や階段を嫌がって動かなくなった>
暗い場所や段差のある所に行くとじっと動かなかったり、壁際を好んで歩くようになったりしたと感じたら、それは犬のわがままや好みではなく、白内障なのかもしれません。白内障は一般的に7歳を過ぎたころから発症しやすくなりますが、犬種によっては若くても発症する場合があります。目(水晶体)が白くなってきていないか確認し、獣医師に相談するようにしましょう。
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