犬のてんかんは、全身のけいれんなどの発作を起こす病気です。突然発作が起こってしまったとき、何をしてあげたら良いのかわからなくなってしまう飼い主さんは多いはず。体をなでてあげたりした方がいいのでしょうか?それともすぐに病院へ連れて行った方がいいのでしょうか?

ここではてんかんの起こる仕組みや治療法、いざ発作が起きてしまったときの対処法などをわかりやすく解説しています。愛犬がてんかんと診断された場合には、病気とうまく付き合っていくことがとても大切ですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

てんかんとはどんな病気?

てんかんは、全身のけいれんなどの発作が繰り返し起こる病気です。人間も含め、多くの種に見られる病気ですが、特に犬は発症しやすい動物と言われており、日本では100頭に1〜2頭の犬がてんかんを発症しています。

普段はいつもどおりの生活が送れているにもかかわらず、突然脳の大脳という部分から異常に強い電気信号が出されることによって発作が起こります。

犬のてんかんは、脳の病気に伴って発作が起こる「症候性てんかん」と、脳に何も病気は見つからないのに発作を繰り返す「特発性てんかん」に分類されます。

症候性てんかん

脳の異常(脳炎、脳腫瘍、水頭症などの脳の病気や、事故による後遺症など)によって引き起こされるてんかんで、1歳未満の子犬や6歳以上の犬に多く見られます。パグ、チワワ、ヨークシャーテリア、シーズーなどの犬種がなりやすいと言われています。

特発性てんかん

「特発性」とは、原因がよく分からないときに使われる言葉です。特発性てんかんは、脳に異常がないにも関わらず発作を繰り返すのが特徴で、1〜5歳の犬で多く見られます。ビーグル、ダックスフント、プードル、シェットランドシープドッグ、レトリーバーなどの犬種がなりやすいと言われています。

 

この他に、発作が起こる数ヶ月〜数年前に、脳に異常が起こる可能性のある怪我や病気にかかったことがあるにもかかわらず、発作後に検査をしても脳に何も異常が見つからない「潜因性てんかん」もあります。

てんかんはどうして起こるの?

犬の体は人間と同じように神経が張りめぐらされ、その神経の中を弱い電気信号が通ることによってさまざまな情報が伝達されます。中でも、体の司令塔である脳には多くの神経細胞(ニューロン)が集合していて、規則正しいリズムで微量の電気信号を伝達しています。この穏やかなリズムを持った電気信号が、何らかの原因により突然激しくショートしてしまうことによって起こるのがてんかん発作です。

脳の神経は興奮と抑制がバランスよく働くようになっています。車のアクセルとブレーキのように、興奮が強くなりすぎると抑制系の神経がはたらいて興奮を抑える、というようにバランスを取るのです。

しかし発作が起こる時には、興奮系の神経が強く働きすぎたり、抑制系の神経の力が弱まることで、激しい電気的な乱れ(過剰興奮)が生じます。これがてんかん発作の起こる仕組みです。また、てんかん発作は繰り返し起こることが特徴です。そのため、1回かぎりの発作ではてんかんと診断することはできません。

てんかんになるとどうなるの?

てんかんの代表的な症状に、全身がピーンとつっぱるようなけいれんをする「強直発作」と、全身をガクガク震わせるようなけいれんをする「間代発作」があります。通常、これらの発作が起きている最中は犬の意識はありません。

意識がある状態で、部分的な発作を起こすこともあります。

体の一部分だけがつっぱる、口をパクパクさせる(ハエ咬み行動)、大量のよだれを垂らすなど、さまざまなタイプの発作があります。

 

いずれの発作も、その犬ごとに決まった発作のパターンがみられることが多いです。多くは、口をもぐもぐさせる・一点をじっと見つめるなどの前兆が見られた後に数秒〜数分間(2分以内)の発作が続き、少しの間もうろうとした状態になります。それが落ち着くと、何事もなかったかのように普段の状態に戻ります。

発作がいつもより長く続く場合は要注意

通常のてんかん発作は、数秒〜2分以内におさまります。しかし、発作が10分以上おさまらなかったり、落ち着きかけたところで再び発作が起きる状態を繰り返してしまう場合(てんかん重責状態)や、24時間のうちに2回以上発作を起こす場合(群発発作)には、気をつけなければなりません。

てんかん発作から呼吸困難に陥り、脳に十分な酸素が行き届かなくなると重い後遺症や命にかかわる危険があるのです。このような時は、直ちに発作を抑える処置が必要です。

獣医師はてんかんをこうやって診断している

てんかんを直接診断するための検査はありません。てんかん以外の病気を除外するためにさまざまな検査を行い、慎重に診断をする必要があります。まずは起こった発作が「てんかん発作であるかどうか」を判断することが重要です。

問診により、初めて発作を起こした時の年齢や、発作が起きた時間・回数・その時の状況などを詳しく確認します。スマートフォンなどで撮影した発作の動画などがあると、診断の大きな手がかりとなるので、可能であれば撮影して病院に持っていきましょう。

そして血液検査や尿検査により、てんかん以外の病気がないかを調べます。肝臓病や甲状腺機能低下症、中毒など、脳以外の病気が原因で発作を起こしている可能性もあるので、慎重に検討します。脳以外で考えられる病気が見つからない場合には、てんかんを疑います。

神経の検査により、神経の反射や知覚に異常がないかを調べます。この検査は「脳に異常がないか」を調べるために重要となります。脳の異常が原因で引き起こされている症候性てんかんでは異常が見つかりますが、特発性てんかんでは異常は見られません。

 

ここまでは麻酔をかけずに行うことができる検査です。さらに詳しく検査をする場合は、MRIなどの画像検査や脳脊髄液検査、脳波の検査などを行います。ただし、これらの検査は特定の施設でしか受けられなかったり、全身麻酔が必要であったり、麻酔をかけて検査をしても何も異常が見つからなかったりする可能性があるので、詳しい検査を受けるかどうかは、かかりつけの獣医師とよく相談をしてから決めましょう。

これらの検査で、脳に明らかな異常(脳炎・脳腫瘍など)が見つかった場合は「症候性てんかん」、何も異常が見つからなかった場合には「特発性てんかん」

と診断することができます。

てんかんの治療と予後

てんかんの治療は、「抗てんかん薬」という薬による治療が中心です。これはてんかんそのものを治す薬ではなく、発作の回数を減らしたり、発作の症状を軽くすることが目的の薬で、一生涯飲み続けなければいけないことも多いです。

てんかん発作が一旦おさまったからといって放置してしまうと、脳自体が発作を起こしやすい脳に変わってしまうことがあります。さらに、発作を繰り返すことで脳の組織が傷つけられたり、発作が止まらなくなってしまう危険性があります。そのため、ある程度の頻度(目安としては月に1回以上)で発作が起こる場合や、1日に2回以上の発作が起こった場合は、抗てんかん薬が必要となります。抗てんかん薬を飲み始めた後に、いつもより眠りがちになったり(傾眠)、歩き方がいつもと変わったり(運動失調)する症状がみられることがありますが、これらのほとんどは一過性のものです。獣医師と相談しながら、薬を続けるようにしましょう。

 

症候性てんかんでは、抗てんかん薬に加え、発作の原因となる病気に対する治療も重要になります。これは病気の種類により治療法も異なるので、獣医師とよく相談するようにしましょう。

 

特発性てんかんでは、発作をきちんとコントロールすることができれば、ほとんどの犬で健康な犬と同じくらいの寿命を全うできることが明らかになっています。しかし、薬で発作をうまく抑えることができない場合や、てんかん重責状態を繰り返す場合には、そのまま死に至ることもあるので注意が必要です。

抗てんかん薬を安全に飲み続けるために

抗てんかん薬の種類や量は犬によって異なるので、最適な量を見つけるためには少し時間がかかることがあります。薬の効果が発揮される量が血液中にきちんとあるのか、もしくは薬が多すぎて副作用が出る危険性はないのかを調べるためには、薬の「血中濃度」を測ることも大切です。検査の頻度はその犬によりますが、3ヶ月〜半年に1回程度の検査をオススメします。

また、発作がほとんど起こらなくなっていても、突然薬をやめてしまうと悪化することがあるので、必ず獣医師の指示を守るようにしてください。

愛犬がてんかんと診断された飼い主さんへ

愛犬が特発性てんかんと診断された場合、きちんと薬を与えていれば、今までの生活を大きく変える必要はありません。

そのかわり、てんかんの発作の症状は犬によってそれぞれ異なるので、飼い主さんの日頃からの観察がとても大切です。診断をする上でも大きな手がかりになりますし、治療においても、薬の効果や副作用のチェックのために必要なのです。そのため、愛犬の日頃の様子や気がついたこと、発作の起きた日時や回数などを日々ノートなどに記録しておくといいでしょう。

愛犬が症候性てんかんと診断された場合は、その原因によって治療法や予後はさまざまです。発作の原因となっている病気を手術や薬で治すことはできるのか、それは愛犬にどのくらいの負担がかかるのか、また治療にはどのくらいの費用や時間を要するのか、などを獣医師とよく相談した上で治療に進まれることをおすすめします。

発作が起きたときには…

愛犬に発作が起きてしまったときには、まずは落ち着いて犬の様子を確認することが重要です。あわてて抱き上げたりせず、ぶつかりそうなまわりの物をどけたり、柔らかいタオルやクッションなどを近くにおいて体を保護してあげると良いでしょう。全身的な発作が起きている間は、犬は意識がないことがほとんどです。普段はおとなしい犬でも咬まれることがあるので、触るときには十分注意してください。

可能であれば発作が起きたときに、スマートフォンなどでその様子を撮影し、診察の際に獣医師に確認してもらうことをオススメします。

また、いつもより発作の時間が長くなかなかおさまらない場合や、1日に何回も発作を起こす場合には、かかりつけの動物病院に連絡して指示をあおぎましょう。

 

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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