尿検査は、尿の中のタンパクや糖、pHなどを調べ、さまざまな病気やその兆候を見つけることができる検査です。
特に、腎臓や泌尿器系の病気を発見する上でとても有用で、人と同様に、ワンちゃんの健康診断でも重要な検査項目のひとつとなっています。
ここでは、尿検査の項目や結果の見方、採尿方法などについて解説します。
尿検査を受けるときには
動物病院で尿検査を受ける際には、おうちでの尿の様子を伝えましょう。
おうちでの尿の回数や量、色、排尿の仕方などは診断の重要な手がかりとなります。
日頃から、尿の様子をチェックするようにしましょう。
尿検査でどんな病気がわかるの?
尿検査で発見されやすい病気や症状には、以下のようなものがあります。
・腎臓病
・蛋白尿
・尿路結石
・尿路感染症
・膀胱炎
・糖尿病
など
主な検査項目
① 尿の色・濁り
尿の色や濁り(混濁度)に異常がみられたときは、
腎臓や体内の変化を示している可能性
があります。
・正常像
色調:淡黄色〜黄色
混濁度:混濁なし
・異常像の例
無色:糖尿病
尿崩症 暗黄色・オレンジ色:脱水、肝・胆道系の病気
赤色:出血、溶血
混濁あり:赤血球や白血球などの細胞、結晶、細菌、脂肪などの異常な成分の増加
※尿の色や濁りは、採尿の方法や、検査までにかかった時間によっても左右されることがあります。そのため、異常があったからといって、一概に病気というわけではありませんが、病気を発見する重要な手がかりとなる場合もあります。
② 尿比重
尿比重とは、
腎臓における尿を濃縮したり希釈したりする能力
を数値で表したものです。
腎臓は、必要に応じて濃い尿や薄い尿をつくり、それを排泄することで体内の水分量を一定に保つ役割をしています。
しかし、腎臓のはたらきに異常があると、尿比重を調節することができなくなります。
☑ 犬の基準値:1.030以上
尿比重が異常に低い場合には、慢性腎臓病や内分泌疾患、尿崩症、薬の副作用などの可能性が考えられますが、尿比重は健康な犬でも条件によって変動します。
そのため、基準値を外れていた場合には、複数回の検査を行なったり、血液検査など他の検査結果とあわせて判断します。
③ 尿pH
尿pHは、
尿路感染症の可能性や、結石が作られやすい環境である可能性
を示したり、体内の酸性とアルカリ性のバランスがきちんと保たれているかどうかの指標となります。 食事や尿の保管方法により、結果に影響を与えやすい項目です。
☑ 犬の基準値:5.5〜7.5
尿pHが高い(アルカリ尿)と、リン酸アンモニウムマグネシウムや炭酸カルシウムなどの結石が作られやすくなり、
尿pHが低い(酸性尿)と、シュウ酸カルシウムや尿酸アンモニウムなどの結石が作られやすくなるとされています。
④ 尿蛋白
尿蛋白は、尿の中に含まれるタンパク成分のことで、この成分を含む尿を蛋白尿といいます。
腎機能不全が疑われる場合や、慢性腎臓病の経過観察、低タンパク血症が疑われる場合などに評価されます。
☑ 犬の基準値:陰性(〜1+)
尿蛋白が陽性だった場合、他の尿検査項目や血液検査、画像検査等の結果から、蛋白尿の原因により、生理的/腎前性/腎性/腎後性蛋白尿 に分類されます。
⑤ 尿糖・ケトン体
尿糖とは、尿中にみられる糖(グルコース)のことを指します。
糖は本来、腎臓の近位尿細管というところで完全に再吸収されるため、通常は尿中には現れません。
しかし、血液中の糖の量(血糖値)が、尿細管で再吸収できる量を上回ってしまった時(糖尿病)や、尿細管に異常がある時に、尿中に出現します。
☑ 犬の基準値:陰性
また、重度の糖尿病により糖尿病性ケトアシドーシスを発症している場合には、尿中のケトン体が陽性になります。この場合、緊急的な治療が必要となります。
⑥ 尿潜血
尿潜血は、尿に含まれるわずかな赤血球やヘモグロビン、ミオグロビンの存在を示す指標です。
■ 犬の基準値:陰性
尿潜血が陽性となった場合、その原因として、
腎・泌尿器の疾患(炎症、感染、結石、腫瘍など)、腎・泌尿器以外の疾患(子宮、膣、前立腺、陰茎、包皮の病気)、溶血性の疾患、筋肉の細胞の損傷などの可能性
が考えられます。
⑦ 尿中ビリルビン
☑ 犬の基準値:陰性(〜1+)
尿中ビリルビンが陽性の場合には、
肝臓や胆道系の疾患による黄疸や、溶血性の疾患の可能性
が考えられます。
⑧ 尿沈渣
尿沈渣(にょうちんさ)は、
尿を遠心して沈渣(細胞などの成分)と上澄みに分離させ、その沈渣の部分を顕微鏡で観察
します。
採尿方法に影響されることもありますが、尿沈渣には以下のようなものが見られる場合があります。
・赤血球:尿路や生殖器からの出血の可能性
・白血球:尿路や生殖器の感染・炎症・腫瘍などの可能性
・上皮細胞:尿路の炎症・腫瘍、カテーテルによる採尿の影響などの可能性
・結晶:結晶の種類により、腎・尿路結石、肝臓病、中毒などの可能性を示すが、 正常でもみられる結晶もあり
・円柱:円柱の種類により、何らかの腎障害の可能性
・微生物:尿路感染の可能性(細菌、真菌、寄生虫)
採尿の仕方
尿検査を受けるには、
「液体の状態」の尿を「なるべく速やかに」動物病院に提出する必要
があります。
採尿には自宅で採取する方法と、動物病院で採取する方法がありますが、自宅で採った尿を持参する場合には、採取方法や保管状態によって検査結果に影響することがあります。
① 自宅で採取
●ウロキャッチャー
ペット専用の採尿グッズで、棒の先端にスポンジがついています。
犬の排尿時に後ろの方から忍ばせ、スポンジ部分に尿をかけることで採尿する
ことができます。
外でしか排尿をしない犬の場合に、特に便利です。
● スポイト
清潔なカップやトレーなどに尿を採り、それをスポイトに移して採取します。
ペットシートを裏面(吸水しない面ツルツルの面を上)にすることで、その上に溜まった尿を採取しやすくなります。
※自宅で採尿した尿を持ち込んで検査する場合には、あらかじめ採尿方法や保管方法、提出するまでの時間について動物病院に確認しましょう。
※尿は時間が経つと変化してしまい、検査結果に影響を与えます。動物病院に持参するまでに時間がかかってしまう場合には、冷蔵庫で保管し、採尿日時と保管方法を病院で伝えましょう。
② 動物病院で採取
自宅から持参した尿で異常が見られた場合や、より正確な結果を調べる必要がある場合には、動物病院で採尿をして検査を行います。
動物病院での採尿法には、
カテーテルを使って尿を採る「カテーテル採尿」
と、
エコーで膀胱を確認しながら注射器を使って直接膀胱から採取する「膀胱穿刺」(ぼうこうせんし)
があります。
動物病院内で衛生的に採尿した尿を速やかに検査することで、より正確な検査を行うことができます。
尿検査は、犬の食事や採尿の方法によって結果に影響する可能性があり、基準値から外れた項目があるからといって、必ずしも病気によるものとは限りません。しかし、尿に現れる異常をはやめに発見し、必要に応じて追加検査を行い評価することで、病気の早期発見につながります。
(参考)
犬と猫の検査・手技ガイド2019 私はこう読む/interzoo
SA Medicine NO.46/interzoo
伴侶動物の臨床病理学/チクサン出版社
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