トイプードルチワワなどの小型犬に多い病気の一つに、膝蓋骨脱臼(通称パテラ)というものがあります。軽度なものまで含めると、非常に多くの小型犬が持っていると言われています。悪化すると歩けなくなってしまうこともあるので、正しい知識を身につけて適切に対処するようにしましょう。ここでは獣医師監修のもと、パテラの概要、治療法と予防方法について解説します。 

 

膝蓋骨脱臼(パテラ)とは 

膝蓋骨脱臼は英語表記ではpatellar dislocationもしくはpatellar luxationと訳されることが多く、通称パテラの名前で知られています。

膝蓋骨ってなに? 

膝蓋骨はひざにある丸い骨のことです。別名「ひざのお皿」とも言われ、この骨は太ももの骨と隣接しています。太ももの骨には、端に「滑車溝」という溝があるのですが、膝蓋骨はこの溝にはまって、膝の曲げ伸ばしにあわせて上下に動きます。こうして、膝のスムーズな動きをサポートしているのです。 

脱臼①

膝蓋骨が外れると・・・ 

生まれつき太ももの骨の溝が浅かったり、膝蓋骨を支える靭帯が弱かったりすると、ちょっとした衝撃ですぐ膝蓋骨が溝から外れてしまいます。膝蓋骨脱臼とは、この膝蓋骨が溝から外れてしまうことで、ひざを曲げ伸ばしするときに痛みが出たり、炎症を起こしたりする病気です。 

特にトイプードルチワワなどの小型犬は、生まれつき溝が浅い子や靭帯が弱い子が多く、膝蓋骨脱臼を発症しやすいので、飼い主さんは注意しなければなりません。ちなみに、小型犬と比較すると少ないですが、大型犬でも膝蓋骨脱臼を発症することは稀にあります。 

膝蓋骨脱臼になるとどうなるの? 

膝蓋骨脱臼には、軽度なものから重度なものまでありますが、進行具合によって症状も治療法も異なります。愛犬の状態がどの程度なのかを把握した上で、かかりつけの獣医さんと相談しながら治療法を決めていきましょう。 

予防が肝心!軽度な膝蓋骨脱臼 

高いところから飛び降りたりして、なにか大きな力が加わった時に稀に脱臼することがあります。脱臼すると足を上げてぴょこぴょこ歩くことはありますが、自然に治ることも多いので、飼い主さんが気付かない場合も多いでしょう。 

症状がほとんどないので、健康診断のような病院の身体検査などで偶然発見されることが多いです。軽度の膝蓋骨脱臼を持っていると診断されたら、今よりも悪化させないようにしっかり対策を取ってください。 

痛みが出ているかも!中等度の膝蓋骨脱臼 

足をあげてぴょこぴょこと歩いてる場合は、痛みが出ているかもしれません。犬が脱臼に慣れ、脱臼したときに自分で足を後ろに伸ばして自力で治すこともありますが、これはしばしば脱臼を繰り返しているということですので、決していい状態ではありません。早めに病院へ連れていってあげましょう。 

すぐに病院へ!重度な膝蓋骨脱臼 

脱臼を繰り返すことで関節炎などを発症し、痛みがある足をかばって歩くようになります。歩き方がおかしいと感じたらすぐに病院に連れて行ってあげましょう。放置してしまうと、手術をしても元気に歩けなくなってしまう場合もあるので、できるだけ早めに連れて行ってあげてください。 

膝蓋骨脱臼の治療法 

獣医さんはこうやって診断をしている 

膝蓋骨が脱臼しているかどうかは、症状と身体検査でほぼわかります。膝蓋骨を押したり、触りながら膝の曲げ伸ばしをしたりすることで脱臼の程度を調べます。しかし、膝蓋骨の脱臼が原因で足を痛がっているのかどうかは、触診だけではわかりません。 その子が足を痛がるタイミングやそのときの様子を飼い主さんに聞いた上で、レントゲンを撮って、他の部分の異常がないか、靭帯が傷ついていないか、手術が必要かどうかを判断する場合が多いです。 

治療法 

症状が出ない軽度な膝蓋骨脱臼であれば、治療をしなくても普段通りの生活を送れることがほとんどです。滑りやすいフローリングにマットを敷いたり、膝に負担をかける運動をさせないようにして悪化を防ぐことにより、上手に病気と付き合っていきましょう。 もちろん、痛みが出てくるようなら治療は必要です。 

軽度な場合は炎症を鎮めるための薬や、関節炎を予防するための薬を飲ませることが一般的です。もし関節炎がひどいときは定期的に注射をして、炎症を鎮めることもあります。ただし、投薬だけでは根本的な治療にはなりませんので、痛みがひどい場合や日常生活に支障が出る場合などでは手術をすることもあります。全身麻酔をかけて、膝蓋骨がはまる太ももの骨の溝を深くしたり、靭帯の張り具合を調整したりして、脱臼がおこりにくいような膝関節に治してあげるのです。 

手術をするとほぼ完治させることはできますが、しばらく痛みが残ってしまうために筋肉が落ちてしまい、術後にしっかりとしたリハビリをする必要があります。手術は麻酔や痛みなど、愛犬に大きな負担をかけてしまうため、投薬にするのか手術にするのかは、かかりつけの獣医さんとよくよく相談して決めるといいでしょう。 

膝蓋骨脱臼(パテラ)予防法 

とにかく関節に負担をかけないことがポイントです。 

適正体重を保つ 

肥満になって体重が増えると、当然膝の関節に負担がかかります。また痩せすぎの場合も、筋肉量の低下から関節への負担を増やしてしまうことになるので、適正体重を維持してあげることが大切です。 犬種ごとに目安となる体重はありますが、その体重がその子にとって適正体重とは限りません。個体差がかなりあるので、適正体重がわからない場合はかかりつけの獣医さんに相談してみるといいでしょう。 

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フローリングは絶対NG 

タイルやフローリングなど、ツルツルした床の上は小型犬にとっては非常に危険です。滑って踏ん張った際に膝に大きな負担がかかり、膝蓋骨脱臼を悪化させるのです。また、滑って転んだ衝撃で脱臼してしまったり、骨折する危険性もあるので、必ず滑らないようにカーペットやマットを敷いておきましょう。 

関節に負担のかかる運動制限 

筋力が落ちてしまうと膝に負担がかかりやすくなるので、適度な運動は必要です。しかし、急な方向転換や、後ろ足でぴょんぴょん飛び跳ねさせたりするのはやめましょう。 

また、ベッドやソファーなどのようなちょっとした段差へ飛び乗らせたり、逆に飛び降りさせたりすることも膝に負担をかけます。できるだけお部屋の中から段差を取り除いてあげるか、それが難しいようなら、飛び乗り・飛び降りをしないようにスロープを設置してあげましょう。 

多くの小型犬が発症している膝蓋骨脱臼。発症していることに気付かないくらい軽度な時には、飼い主さんの心がけ次第でそのままの状態を維持できます。適正体重を維持し、運動や環境を見直し、できるだけ足に負担がかからない状況を作ってあげてください。

 

 

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