便は愛犬の健康状態を知るバロメーターでもあります。ウンチが出ないだけでなく、いつもより便の回数や量が減るのも便秘の一種です。飼い主さんが気にすべき症状と原因について知っておきましょう。

 

愛犬の便の回数、量を知っておくことが重要

 

犬は1日何回排便するものなのか、じつは明確な基準はありません。だいたい1日の食事の回数と同じ、または±1回程度と考えられています。大事なのは、愛犬の通常の排便回数と排便リズムを知っておくことです。「いつもより回数が少ない」「回数は同じだけど、量が少ない」「毎日排便していたのが1日おきになった」など、通常との違いを見つけたら、その原因を探ってみましょう。

 

また「便を出すときに痛そう」「何度もグルグル回るのになかなかしようとしない」そんな様子が見られたときも、見逃さないでください。何らかの原因で便が固くなって出にくいのかもしれませんが、腸や肛門などにトラブルが発生しているのかもしれません。

 

 

便秘かも?と思われる状態になる原因とは

 

水分不足、食べ物の影響

1日に摂取する水分量が少なかったり、不溶性の食物繊維を過剰に摂取したりすると、便が固くなりすぎて出にくくなることがあります。また骨付きの肉を与えすぎると、便が石灰化するので要注意です。実際に愛犬が好きだからとスペアリブばかりを食べさせた結果、便がカチカチに石灰化して排便できなくなり、手術で腸に詰まった便を取り出したというケースもあります。

 

運動不足

運動不足によって腸の活動が鈍ってくると、便秘になりやすくなります。また、散歩の際に排便する習慣のある犬は、散歩の時間やコース、リズムが変わることで便が出なくなることもあります。

 

加齢による筋力低下

年をとって筋力が低下すると、排便時にいきむ力が弱くなり、便をうまく出せなくなることがあります。そのため数回に分けて排便することもありますが、従来と便の総量が変わらなければあまり心配はないでしょう。

 

トイレ環境の変化、家庭環境の変化

いつも排便するトイレが汚れていたり、場所が変わったりした場合に、トイレを我慢することがあります。また、引越しや新しいペットを迎えた場合など、生活環境の変化も便秘の原因になることがあります。

 

服用している薬の影響

薬の影響で便が出にくくなることもあります。そうした兆候が見られたら、薬を処方してもらった動物病院に相談しましょう。

 

 

便秘が症状として現れる病気とは?

 

犬の便秘には、深刻な病気が潜んでいる場合があります。考えられる代表的な病気を紹介しておきます。

 

会陰ヘルニア

会陰ヘルニアは、肛門の周囲(会陰部)の筋肉が萎縮してできた隙間から、腸管などの臓器や脂肪が飛び出してヘルニアができ、肛門付近が腫れてくる病気です。きばっても丸い便が1〜2個しか出ず、排便時に痛がる様子が見られます。発症するのはおもに去勢していない8〜9歳のオス犬です。

 

直腸憩室

直腸憩室とは、直腸の筋肉の一部が膨らんで袋状のポケットができてしまう病気です。会陰ヘルニアと一緒に発症することが多く、便秘の原因になります。

 

変形性脊椎症

変形性脊椎症とは、体を支える大事な脊椎の一つひとつの骨が繋がってしまい、脊椎の可動域が狭まることで痛みを生じる病気です。排便する姿勢に痛みを伴うため、排便を嫌がります。

 

 

犬の便秘を予防するには?

 

水分を多めにあげ、適度な運動を

愛犬が水を多く飲むような工夫をしましょう。飲み水をあちこちに置いておく、ドライフードにお湯をかけて水分を増やす、またウエットフードに変えるのも一つの方法です。また、散歩やドッグランの運動で腸活を心がけてあげましょう。

 

オス犬ならば去勢する

オス犬に多い会陰ヘルニアを予防するには、去勢することが有効です。

 

健康な犬であれば、人間のように何日も便秘することはありません。水分や運動、環境を整えても3日以上便秘が続いたり、排便時に痛そうな様子が見られたら、そのまま放置せず、かかりつけの動物病院を受診してください。

 

☞【関連コンテンツ】アイペット獣医師監修『ペットと私の暮らしメモ』も、ご覧ください。

 

 

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竹原獣医科医院 院長

竹原秀行

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